人目が気になる女性

人の目が気になることは誰しも少なからずあります。

「自分がどう見られているか」「自分がどう評価されているか」は社会生活をしていく上で意識せざるをえないですからね。

ただ、人の目を気にしすぎる状態になると、好きな服を着ることができない、お店で欲しい物が買えない、気になったお店に入れない、聞きたいことが聞けない、言いたいことが言えないといった問題が出てきてしまう。

生活に支障をきたすほど人の目が気になってしまうのは、対人恐怖症の一種である他者視線恐怖症に該当する症状です。

現在までの臨床経験をもとに人の目を気にしすぎる状態の改善方法、原因や背景にある心理をお伝えしていきます。

人の目を気にしすぎてしまう状態を改善する方法

自分の基準で自分を評価する

人の目が気になるのは他人の基準で自分を見ているからです。

「普通は」「みんなは」「世間一般では」と考えることが多いのではないでしょうか?

人の目をあまり気にしない人は、他人ではなく自分の基準で自分を見ることが中心になっています。

自分の基準で自分を見るというのは以下のような感じです。

例えば、早起きが苦手でギリギリまで寝てしまっていた人が、頑張って5分早く起きるようにしたとします。

ギリギリまで寝ていた状態から5分早めたところで、他人からは「ほとんど変わってないじゃん」と言われるかもしれません。

しかし、早起きが苦手な自分が「朝5分も早く起きた」と考えれば「頑張った」と言えるわけです。

自分の基準で自分を見ることを少しずつでも増やしていきましょう。

意識の向け方を変える

人の目が気になって仕方がないときは、まるで自分にだけスポットライトが当たっているかのごとく一点集中。

「自意識過剰」という言葉が使われる通り、自分への意識が過剰に働く状態になっています。

「他人→自分」の内向きな意識が強いことで人の目が気になっているため、対になる外向きの意識を強めることで人の目が気にならなくなるのです。

人の目が気になる場面で空間の広さ(前後左右・上下)や置いてある物など、自分以外のことに意識を向けてみてください。

一つ一つ見るのではなく、意識を向けて存在を感じようとするのがポイントです。

意識が外に向く度合いが高まるにつれ、自分が全体の一部、大勢の中の一人という感覚になって自意識過剰な状態が和らいでいきます。

自分の思い込みから抜け出す

人の目を気にしすぎる人は、相手の反応を自分が気にしていることと結びつけて苦しむ傾向があります。

事実はどうなのかを確認できないまま、人の視線を感じるたび「また変に見られた」と思い込んで悩む。

これを繰り返していくうちに、頭では「自分のことなんて誰も気にしていない」とわかっていても、見られている感覚が消えない状態になっているのです。

人から見られているという思い込みは自分の感覚であるため、人とかかわって他人の感覚に触れれば触れるほど修正されやすくなります。

自分がものすごく気にしていることを他人は全く気にしていなかったということがよくありますからね。

ただ、自分から積極的に人とかかわっていくのは難しいと思いますので、まずは人とのかかわりを「なるべく避けないこと」を意識してみてください。

自分にとって大切なことに目を向ける

人の目をコントロールできればいいのですがそれは無理ですよね。

人が見たいと思ったものを見て生活している以上、たまたま自分がその対象になれば見られることから逃れられません。

他人の視線はコントロールできないので、自分の思考をコントロールしていくことが必要になります。

もし、視線を気にする悩みがなかったとすれば、何を考えているでしょうか?

今は人からどう見られているかばかり考えていると思いますが、それは自分の人生にとって重要なことではないはずです。

好きなこと、興味関心があること、やっておいた方がいいこと…

自分がどう見られるかよりも大事なことがあることに気付きましょう。

自分の軸を持つ

人の目ばかり気にしてしまう状態を改善する上で自分の軸を持つことは大切です。

自分に軸があれば相手次第ではなく自分次第の感覚になるため、「自分がどうしたいか、何をしたくないか、どうなりたいか」で物事を判断できるようになります。

まずはニュースや普段の出来事に対して自分がどういう考えを持っているか、どう思っているかに焦点を当て、ノートかスマートフォンのメモに書き残すようにしてみてください。

世間一般の常識から外れていることでも他人から変に思われそうなことでも自由に書くことが大切です。

本当の自分を知り、認めることができればできるほど自分に軸ができ、人の目が気になる感覚はなくなっていきます。

他人から見た自分ばかり意識してきた影響で自分がわからない状態の方が多いため、カウンセリングでは生まれ持った特性、価値観や感じ方、考え方等を知っていただくことから、自分の軸を持てるようサポートしております。

人の目を気にする自分を受け入れる

人の目を気にする自分は変だ、おかしい。何とかしないといけないと思うのは、自分を否定している状態です。

自分を否定すればするほど自分のことが嫌いになり、「自分は自分でいい」と思うことができなくなります。

「今の自分は人の目がすごく気になるなぁ」と気になる自分をただただ受け入れる。

気にしないのが良い、気になるのがダメと判断せず、そのまま人の目を気にする自分を受け止める言葉を自分にかけましょう。

そして、なぜ人の目を気にする状態になっているかを以下の内容をもとに考えてみてください。

「こういう理由で自分は人の目が気になっているんだ」と納得できれば、「それは人の目が気になって当然だよね」と受け入れることができます。

人の目が気になって仕方がないのはなぜ?

人の目の原点は「親の目」

人の目と言えば学校や職場、外でのことをイメージすると思います。

たしかに今は外での視線が気になっていることでしょう。

しかし、原点は親の目にあります。

世間体ばかり気にする親の基準は、人様に迷惑をかけないかどうか、他人に見られても恥ずかしくないかどうか。

親の顔色をうかがって「いい子」にしていた人ほど本当の自分を隠しているため、ばれてしまうことへの不安から人の目が気になりやすくなる傾向が見られます。

親の目を意識して過ごしてきた幼少期が、他人の目を気にする現在につながっているのです。

他者との比較で抱いた劣等感

幼少期から兄弟姉妹と比較されたり、学校生活で周りとの学力や運動能力の差を感じたり、社交的で容姿の良い友達と比較したり、テレビやSNSで見た幸せそうな人と比較したり…

比較を繰り返していく中で劣等感を抱き、劣っている自分を見せないようにしています。

休日はみんな友達と遊んだり趣味を楽しんだりしているのに、自分は遊べる友達がいないしこれといった趣味もない。

今の自分の年齢なら正社員で働いていて家庭を持っているのが普通なのに、実際は非正規雇用で家庭を持っていないどころか付き合える相手すらいない。

自分が普通のことができていないと思うと恥ずかしく、周りからもダメな人間に見られているような気がする。

他者との比較で抱いた劣等感が人の目を気にする感覚を生み出しているのです。

人とのつながりが切り離された感覚

家族から否定されたりいじられたりすることが多かった。仲良くしていたはずの友達がなぜか急に離れていった。学校でいじめに遭った。

人は自分の心を守らないといけない状況になればなるほど自分の世界に入り込むため、結果的に他者とのつながりが切り離されてしまいます。

切り離されたことによって自分だけが浮いているように感じ、違和感が出て注目されている感覚になる。

周りの人たちと同じ空間で同じことをしていたとしても、自分だけが別の世界にいるような孤独感があります。

自分だけの世界だから自分にしか意識が向かず、人の目が気になる自意識過剰の状態になってしまうのです。

他人が実際にどう思っているかではなく、自分が思っていることを他人に映し出して苦しんでいます。

人間関係が希薄な時代

日本人は昔から世間の目を強く意識する傾向がありましたが、最近になってさらに人の目を気にする人が増えています。

2016年2月3日にはNHKのハートネットTVで「山田賢治のメンタルヘルス入門 ~視線の恐怖~」が放送され、ネットニュースで取り上げられたりする機会が多くなってきました。

人の目を気にしすぎる人が増えた原因として、PC、スマートフォンの普及や映像コンテンツの進化など、視覚優位の生活があると考えられます。

視覚優位の生活をしているから「見ること」に意識が向きやすい。逆に「見られる」ことにも意識が向きやすくなり、人の目を気にする度合いが強まってきたわけです。

また、時代の流れと共に人間関係が希薄になったこと、メールやSNSの普及により微妙な距離感で接する機会が増えたことも影響しています。

人とのかかわりで安心感があまり得られていないから、人の目を気にせざるを得ない状態になっているのです。

高校生が人の目を気にしやすい理由

思春期は誰もが自意識過剰になる

思春期真っ只中の高校生が「人からどう見られるか、どう思われるか」に敏感なのはおかしいことではありません。

性欲がピークに向かう時期となる男子は女子からの目をとくに意識し、世の中の男性から性の対象として見られるようになる女子は男性からの目を意識する。

これは人間の成長過程において誰もが経験することだからです。

青年期は,生物学的および心理社会的に著しい変化を遂げる時期である.加えて,様々な対人関係上の葛藤や不安を体験し,それに対処する心理社会的な適応機能を獲得していく時期でもある.そのような中で,他者から自分がどう見られているかを気にするあまり,自意識過剰や対人過敏になりやすい

引用元:自己関係づけと対人恐怖心性·抑うつ·登校拒否傾向との関連、2003、日本パーソナリティ心理学会

そもそも日本人は周りの目を気にする文化が根付いているのでより敏感になってしまうところがあります。

生まれながらの気質と親子関係や学校生活などの環境要因が重なることで、高校生になって対人恐怖症を発症するケースも少なくありません。

「対人恐怖症かも?」と思って調べる高校生が多いのもうなずけます。

自我同一性の獲得に失敗すると人目が気になったままに

思春期が始まる小学校高学年くらいから少しずつ自分の価値観が芽生えてきます。

親の価値観がすべてだったのが、学校を中心とする他者とのかかわりによって自分なりの価値観を持つようになるのです。

そして、中学、高校に進むにつれ親の価値観と衝突が起こり、反抗期を迎えていく。

自立へと向かう気持ちと親に依存したい気持ちとの葛藤に苦しみながらも、他人との境界線を引いて自分と切り離せるようになります。

高校生頃になると、次第に「自分は自分、他者は他者」という感覚が育ち、自分と違う面を持つ他者を受け入れることが可能になります。これは自我同一性の獲得の基盤ができたことを意味します。

参考:e-ヘルスネット「思春期のこころの発達と問題行動の理解」

しかし、親の過干渉などの影響によって自分の価値観が育たず心が自立に向かわない。

他人との境界線が引けないままでいると、自分が思っていることを他人も思っているような感覚になります。

自我同一性(アイデンティティ)獲得の基盤ができていない人は、ずっと思春期のような感覚のまま人目が気になり続けるのです。

人の目を気にしすぎる心理

ネガティブな自己イメージ

人の目を気にしすぎる人は自分のことが嫌い、嫌いまでいかなくても否定的には見ています。

長所と短所をあげてもらうと短所ばかり出てくる状態の人がほとんど。

自分に対してネガティブな印象を持っているから、他人も同じように見ていると思ってしまう。

変な人だと思われている気がするのは、自分が自分のことを変だと思っているからなんですよね。

さらに、自己評価が低いことで他者評価を求める心理が強く働き、より人の目が気になりやすい状態になっているところがあります。

傷付くことへの恐怖心

自分には好かれる要素がない、良いところなんてないと思っていながらも、他人の否定的な反応にはものすごく傷付く。

「間違ったことをして怒られたらどうしよう」「おかしいやつだと思われて嫌われたらどうしよう」と思うのも、背景に傷付くことへの恐れがあります。

赤の他人に悪く思われることすら気になるレベルであれば、かなり傷つきやすい状態だと言えますよね。

自分が傷付かないように警戒しているから、どうしても人の目が気になってしまうのです。

傷付きやすさはたいてい問題のある親子関係や学校でいじめに遭った体験等によるものですが、HSP発達障害といった生まれつきの過敏さが影響しているケースもあります。

他者への依存心

相手にとって都合の「いい人」であろうと相手に合わせ続ける。

自分を見失ってよくわからなくなるから、相手に合わせるしかなくなっていく。

何か聞かれても「どっちでもいいよ」「何でもいいよ」と他人任せ。

まるで自分の人生が他人次第、自分でコントロールできると思えなくなります。

他人が自分の人生を決めるのであれば、他人の目ほど重要なものはありませんよね。

他者への依存心が強いことで人の目を気にせざるをえない状態になっていると言えます。

人の目ばかり気にしていると問題が起こる

思い込みが強くなり客観視できなくなる

人の目が気になることで悩んでいたAさんと、同行カウンセリングでショッピングモールに行ったときの話です。

Aさんが商品の説明をしてもらおうと店員さんに話しかけたのですが、その店員さんはなぜか話しかけたAさんではなく隣にいた私と目を合わせて話し出しました。

Aさんは店員さんが目を合わせてくれないのは「自分が変だと思われたからだ」と思っておられましたが、私が見た実態は違ったのです。

店員さんに話そうと意気込んでいたAさんは、目を合わせ続けて必死に店員さんの話を聞いていました。

これは相手が深刻な話をしているとき、もしくは、言いづらいことをカミングアウトしてきたときに適した対応です。

しかし、今回は商品の説明をしてもらうだけなので、そんなに真剣に聞かれたら変なプレッシャーを感じて喋りづらくなりますよね。

だから、店員さんは私と目を合わせて話したわけです。

このように他人の目ばかり意識していると、相手の反応を客観視できなくなっていきます。

「悪口を言われているんじゃないか」と思ったりするのも、客観視できない状態が生み出す症状です。

人と仲良くなれない

人の目を気にしていると「自分がどうしたいか」ではなく「相手がどうしたいか」を優先して合わせるようになります。

自分が仲良くしたいと思っても、相手が明らかに好意的な態度を見せてくれない限り近づいていけない。

相手の様子をうかがいながら距離を取ってかかわるため、仲良くなるまでに時間がかかる、もしくはどれだけ時間をかけても仲良くなれないこともあります。

相手の反応をネガティブに捉えて、他人に悪く思われているとしか考えられない。人とのかかわりを避けるようになり、余計にどう思われているかが気になってしまう。

上手くいかない原因は自分にあると考え、自分はなんてダメなんだと自信を失っていきます。

自分の殻に閉じこもり壁を作ってしまうから、仲良くしようとしてくれた人も離れていく。

思い込みではなく本当に嫌われてしまう危険性も出てくるのです。

自分の人生を生きられない

親に認めてもらうため勉強して良い点数を取り続けた。

学校では問題を起こさず先生の言うことをちゃんと聞く真面目な生徒。

自分がしんどくても友達の相談に乗り、頼まれごとは断らない。

いい大学に入っていい会社に就職して、結婚して子供ができて。

周りから見ればすべてが上手くいっているように見える理想の家庭。

でも、他人の目を気にしてやってきたことばかりならすべてが虚しいものになります。

どれだけ他人に称賛されても、自分の人生を生きられなければ心は満たされないのです。

昔は良い大学を出て、良い会社に入って、終身雇用で老後を迎えるという流れに乗ることで人生に意味を見出すことはできましたが、今は昔と違ってそんな保証された道はありません。

自分で選び、責任を負って生きていくことが必要になっているため、人の目を気にしてばかりでは生活することも困難になっていきます。

人の目を気にしすぎる自分を変えたい、何とかしたいと思っておられるのであれば一度ご相談ください。

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