「変わりたいのに変われない」と言っている人は「○○だからできない」が多いです。

  • 上手く話せないから友達に誘われても断る
  • クラスに馴染めないから学校に行けない
  • 知り合いに会うのが嫌だから近所のスーパーに買い物にいけない
  • 相手が興味を持つ話ができないから会話が続けられない
  • コミュニケーションが取れないから習い事を始められない

あれもできない、これもできないとなっていくわけです。

こうやってできないことが増えれば増えるほど自分はできない人間だと思いやすくなり、何もできないんじゃないかと思うようになっていきます。

そして、できるようになるためにはコミュニケーション能力を高めるしかないという発想にいたり、執着を強めて悪化していくのです。

できない理由ばかり探して何もしないから変われない

コミュニケーション能力が低いからできないと確信している相談者とカウンセラーの対話をご覧ください。わかりやすくするために、本音で話した場合をイメージして書いてみました。

相談者:「コミュ障はどうすれば直りますか?これさえ直ればやりたいことができて問題なくなるんですけど。」

カウンセラー:「コミュ障を直したいなら、話しやすい人と少しずつ話していきましょう。」

相談者:「いえ、私が聞きたいのはコミュ障の直し方です。コミュ障が直れば行動なんていくらでもできるのでそんなのはやる必要ないんです。それにコミュ障が治ってないのに会話なんてできるわけないでしょ?」

カウンセラー:「えっ?コミュ障を直すための方法がコミュ障のままで行動していくことなんですけど…まずは自分がどういう人とかかわりたいか、自分が何を話したいかに気付くところからですね。」

相談者:「いや、自分がどうしたいかなんてわかってますよ。行動もコミュ障が直ればできるんだから今はやる必要ないんです。何回言わせるんですか。コミュ障を直す方法知らないならもういいです。ありがとうございました。」

(注)実際のカウンセリングでこんなやり取りはありえません。

ちょっとキツイ表現で書きましたが、本音はこんな感じだと思うのです。

そもそもやろうと思えばできるという確固たる自信があるならコミュ障にはなっていません。

心の奥底でやっても上手くできないんじゃないか、受け入れてもらえないんじゃないかといった莫大な不安等、何かしらの問題を抱えているからコミュ障になるのです。

「コミュ障が直る→問題なく人とかかわれるようになる」ではなく、「問題なく人とかかわれるようになる→コミュ障が直る」の順番です。

コミュ障が直りさえすれば問題なく人とかかわれるようになると思い込んでいると、コミュ障が直るまで行動しない。

行動しないから何も変わらないという悪循環に陥ってしまうんですよね。

「今の自分でもできること」を探して変えていく

できないことばかりの日々で失う自己効力感

自己効力感(self efficacy)とは能動的に自分をコントロールできる感覚、「自分ならできる」と思える感覚です。

self・efficacyとは,自分がその行動をどの程度遂行できるかについての予期のことであり,
①自分が実際にその行動を遂行できたことを体験すること
②モデリングによって,遂行の代理経験をすること
③自分には遂行することができるのだという言語的な説得を受けること
④その行動を遂行していけるかどうか,判断のよりどころとなるような生理的状態を自覚すること
などの情報によって認知されるものである。

引用元:系統的脱感作法による視線恐怖反応の消去に及ぼすSELF-EFFICACYの役割、一般社団法人日本認知・行動療法学会機関誌、第12巻第2号(通巻22号)1987年3月

モデリングや説得によっても得られるようですが、実際に自分が行動を遂行できたという実感がわかりやすいのではないでしょうか。

自分で考えてできたことがあれば「やっぱり自分ならできるな」と自己効力感を強めますが、逆に何をやってもできないとなれば「自分はできないんだ」と自己効力感を失ってしまう。

自己効力感を失うと受動的になり、「あの人がこうだから自分はこうなってしまう」「周りの人の反応がこうだから自分はこうなってしまう」といった被害者意識が強まります。

本来自分の人生は自分でコントロールできるはずなのに、他人にコントロールされているような感覚に陥ってしまうわけです。

「コミュ障だからできない」というのは悩みにコントロールされている状態ですよね。

自己効力感を高めていくためには自分で考え自分で行動して「自分はできる」という実感を得ていくことが必要となります。

今の自分にもできることはあるはず

どれだけ悩み苦しんでいたとしても少なからず今の自分にできることはあるはずです。

盛り上がるような会話はできずとも、話しかけてもらったら「そうですね」と一言返すだけならできるかもしれません。声が出せないとしてもうなずくだけならできるかもしれません。

「できない、できない」とできないことにばかり目を向けていてはできることもできなくなっていきます。

人間は思い込みの生き物です。

できると思えばできるし、逆にできないと思えばできなくなります。

今の状態の自分にでもできることはないか、あるとしたら何なのかを考えてみましょう。

ずっとできないことばかり考えていたから簡単ではないと思いますが、「自分にできることなんてない」と考えるのを諦めないでください。

答えが出なくとも考えてみるだけで意味があります。

考えるのが苦痛なら状態がマシな時にほんの少し考えてみるだけでも大丈夫です。

気持ちに沿って行動していくことが大事

だからといって、無理やり行動するのは違います。

人間は感情の生き物であり、感情を無視して行動することほどしんどいことはありませんから。

自分の感情と行動のバランスをとりながら、しっかりと事前準備をした上で、自分の本音に従った行動を繰り返す。

繰り返す中で他人からどう思われるかの考えから抜け出し、自分がやりたいことをできる範囲が広がっていきます。

その結果、自分に自信が持てるようになり、コミュニケーションが上手く取れるようになるのです。

脳にプログラミングされた不安や緊張を生み出す考え方のクセは、行動しながら新しい価値観を取り入れていくことで変えていくことができます。

ここが変われば根本的に改善したことになりますので、再発することもありません。

「もし、できるようになったら」を考えれば行動しやすくなる

できない理由ばかり考えている人は「もし、できるようになったらどうなるか」を考えません。

漠然と考えることはあっても「自分にはできない」という前提がある以上、具体的に考えることはないわけです。

そんなことはできるようになってから考えればいいと思っていたりもします。

しかし、「できるようになってから考えればいい」というのは「ゴールしてからゴールを決めればいい」と同じ。

意味わからないですよね。

ゴールがないのにどうやってゴールするんですかって話です。

どこに向かえばいいかわからない、どうすればいいかわからない。

だから、できない現状にとどまり続ける。

当然のことと言えます。

できるようになるためにまずは「もし、できるようになったらどうなるか」を考えてみる。

その上で、今の自分にできることを少しずつでもやる。

継続する中でゴールが見えるからできるようになっていくわけです。

これは自転車に乗れるようになるのと同じ原理なので、当てはめて考えてもらうとわかりやすいかと思います。

できなかった過去ではなくできる可能性がある未来へ

過去の記憶にとらわれ、過去のせいで自分はこうなった。

昨日の自分はこうだったから今日もこうなった。

今日の自分はこうだったから明日もこうなる。

この思考の流れでは上手くいくはずがありません。

上手くいっていない過去をもとに明日を考えたところで上手くいかない現状が繰り返されるだけになりますからね。

今と違う流れの未来を考え、膨らませていくこと。

過去ではなく自分が望む未来との因果関係をいかに強めていけるか。

グーグルマップで目的地を入力することによってルートが表示される、だから目的地に到達できるのと同じ原理です。

「でも、みんなそんなこと考えていないじゃん。」と言う人もいます。

だから、うつ病、依存症が増えているのです。

みんな本当に自分がどうしたいかを見失い、日々の義務感に駆られながらストレスを抱えてゲームやアルコール、ギャンブルに依存。

会社に行かないとと思うのに体が動かない。エネルギーが湧かない。

高度経済成長期のようにとりあえず目先のことをこなせば、年功序列で終身雇用、お見合い結婚、老後には安定した年金という時代は終わりました。

代わりにユーチューバーやコスプレイヤー、いろんなものが出てきて選択肢がものすごく増えている。

その中から選択をして生きていかないといけないわけですから自分の意志が必要な時代になったと言えます。

現状から抜け出したいのであれば、自分がやりたいことやありたい姿についてしっかり考えてみてください。

未来を考えるためにまず悩みがない「今」をイメージする

「もし、コミュ障じゃなかったらどういう生活をしていますか?」具体的に教えてください。

と言われても答えられないですよね。

いきなりでびっくりされたかもしれませんが、この質問にパッと答えられる人はもう悩んでいないでしょう。

人間の脳は具体的にイメージできる臨場感が高いことを現実化します。

悩みがなくなった状態が漠然としていて、悩んでいる状態が具体的で臨場感が高いとなれば悩んでいる状態が現実化されてしまう。

悩みがある状態が続いてしまうわけです。

具体的で臨場感の高いことが現実になるという話はイチロー選手の卒業文集が有名ですよね。

「プロ野球選手になる」という漠然としたものではなく、プロ野球選手になるまでの過程、今何をすべきかまで具体的に描かれています。

今の悩みがなかった場合の生活を具体化させることの必要性をわかっていただけたでしょうか。

コミュニケーションで悩んでいない生活ってどんな感じ?

今の自分をベースにすると難しいので、コミュニケーションで悩んでいない人の生活を考えてみるとわかりやすいです。

当然ながらコミュニケーションについて考えることはありません。

多少なり人とのかかわりで気にすることはあっても、とらわれて一日中考えたりすることはないですよね。

だから、たいていは自分の好きなことや興味関心があること、自分にとって大切なことを中心に考えて日々を過ごしています。

美味しいものを食べに行くのが好きな人であれば「今度の週末はどこに食べにいこうかな」「どのお店がいいかな」なんて考えていたり。

スマホのゲームにハマっている人であれば「次のイベントはいつ始まるのかな」「あのキャラ欲しいな」とか考えたりするわけです。

試験に向けて勉強のことで頭がいっぱいの人もいるでしょうし、転職を考えている人もいると思います。

パソコンをどうすれば安く買えるか考えて必死に調べているかもしれません。

友達関係や恋愛のこと、子育てで悩んでいる人もいるでしょう。

今、悩んでコミュニケーションのことばかり考えている人も、本来ならこういうことをメインに考えるはずなのです。

問題なくコミュニケーションが取れている生活を具体化して臨場感を持たせる方法

しかし、現状はコミュニケーションのことばかり考えていて、どうすればコミュニケーションが上手く取れるかをネットで調べまくったり、関連する本を読んだり、さっき会った人に嫌われたんじゃないかと考えたり、来週の飲み会をどうやって断ろうと考えたり…

この状態のままでコミュニケーションが上手く取れるようになった場合の生活を考えてもなかなか臨場感が生まれません。

他人事のようになってしまうだけです。

どうすれば臨場感が生まれるのか?

ほんの少しだけでもいいからコミュニケーションで悩んでいない場合の生活を今の生活に取り入れていくのです。

実際に行動を起こすのが難しいのであれば本来考えたいはずのことに意識を向けることからでもかまいません。

比率が高まれば高まるほど臨場感が高まっていきます。

コミュニケーションで悩んでいない場合の生活に近づくから当然ですよね。

自分が本来考えたいはずの「自分の好きなことや興味関心があること、自分にとって大切なこと」を見失っている場合は、カウンセリングで少しずつ見つけていくところから。

対人恐怖の症状は症状として置いといて、好きなことをやろうとしたり、話したりするようになっていくのである。好きなことを熱心に聴くことは大切である。自分はこれでいいんだ、という意味での自信を育てるように思う。好きなことは、自然なこころの発露であり、人間の本質とつながっているからである。

引用元:大学生の対人恐怖症者の臨床的特徴と治癒過程 : 治癒の過程における内閉の意味について、2000、神奈川県立外語短期大学紀要総合編

好きなことや興味関心があることを見つけるだけでなく、カウンセリングで話すこと自体にも意味があります。

コミュニケーションで悩んでいない生活のイメージから本当は自分がどうしたいかを見つけ出し、その延長線上にある自分が望む未来に目を向けられるようにしていきましょう。