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2016年3月に初めて来談されたクライエント様(当時44歳、男性)の話です。
PCの制作販売の事業をしておられ、お客様から非常に高い評価を受けておられます。
制作までの相談対応を親身になり、販売後もしっかりとフォロー。相手のためを思い、できる限りのことをしておられるからです。
来談の主訴は脇見恐怖症の改善。
来談前にいただいたメールの内容、実際にお話を聞いた症状が脇見恐怖症と一致していたので脇見恐怖症だと判断しました。
症状に対する固定観念
しかし、カウンセリングを重ねていくうちに脇見恐怖症の人とは異なる特徴が明らかになります。
- 基本的に自信を持っている
- 他人を責めることができる
- 不満があれば直接相手にハッキリ言える
- 小学生の頃にからかってきた相手を冷静に見下し動揺しなかった
- カウンセリングルームのゴミ箱を視界から外さないと話ができない
今まで脇見恐怖症の方の対応をしてきましたが、一度も同じようなタイプの方に出会ったことがありません。
真逆と言っていいほど違うところがいくつもあります。
にもかかわらず、当時の私は脇見恐怖症だと思い込んでいため気付くことができなかったのです。
家庭環境や親子関係に対する固定観念
さらに親子関係のことについても固定観念に縛られてしまうところがありました。
家庭環境はお父様が勤務医、医者が多い家系で男性が少なく、兄弟姉妹の中でクライエント様だけが男性。
ご両親はもちろん、親族からも医者になることを期待されておられたのではないかと思いました。
しかし、実際はご両親からの期待はとくになかったということ。
医者の家系だから「医者になることを期待されていただろう」という固定観念で見ていたわけです。
お母様との関係は過保護の傾向は見られるものの大きな問題はなし。
お父様とはあまりかかわりがなく、以下のようなエピソードがあったため、お父様に求めるものがあったのではと考えるようになりました。
- 良い点を取ったテストを見てもらいたくて机においていたのにほとんど反応がなかった
- キャッチボールをしてもらったのが壁当てをして隣の家から文句を言われたときくらい
- 高校に行かなくなって言うことを聞かなかったときお父様に首を絞められている
そして、お父様の話をされたときに泣いている姿を見て特別な思いがあったのだと強化。
後々になってご本人に確認したところ、自分自身に対する悔しさや惨めさで涙したと言われていました…
脇見恐怖症であれば親子関係に問題があったはず。
無関心な父親との関係で何かしらの感情があったはず。
固定観念で決めつけてしまい、ご本人が問題意識を持っていないのに何度も話をしていました。
クライエント様の時間とお金を無駄にしてしまっただけでなく、ものすごい不満、怒りを生み出してしまい申し訳ない気持ちです。
それでも通い続けていろいろと気づかせていただくことに感謝もしており、正直複雑な気持ちがあります。
固定観念とは?
固定観念は経験則から生まれる思い込みを意味します。
そのような固定観念のことを行動経済学では「アンカーリング」という。アンカーは船の「錨」を意味し、潜在的に意識のなかに刷り込まれていた情報が錨のように重石となって思考や判断を束縛してしまうものと考える。高速道路の「渋滞20キロメートル」という表示を見たとたん、深く考えずに一般道路に下りてしまうのも、「一般道路は混雑していない」という経験則に基づく固定観念がアンカーとして働いているのだ。
私自身も対人恐怖症のカウンセリングを何度も経験していくうちに固定観念が形成されていたのです。
固定観念が強すぎると明らかに違うことがあっても見過ごします。
視野が狭くなって見えなくなってしまう。
これは対人恐怖症で悩む人、アダルトチルドレンや発達障害、HSPの人にも共通することです。
何度も繰り返されてきたことは固定観念として定着します。
私のように問題を起こしてしまわないように気を付けてください。