対人恐怖症の人は自分に嘘をついて本音を誤魔化しています。

  • 本当は人とかかわりたいのに「かかわりたくない」と言う
  • 本当は親の干渉にイライラするのに「別に嫌じゃない」と言う
  • 本当は不満ばかりなのに「別に不満はない」と言う

強がっているわけではなく、自分では本音だと思って言っているのです。

本人に嘘をついている自覚はありません。

しかし、無意識レベルで自分の本音を誤魔化し、自分に嘘をつく状態になっている。

なぜ、自覚できないほど自分に嘘をつくようになったのでしょうか?

人は自分を守るため自分に嘘をつく

イソップ寓話「すっぱい葡萄」から見た自分に嘘をつく原理

有名なイソップ寓話の中に「すっぱい葡萄(ブドウ)」という話があるのをご存知でしょうか?

お腹が減ってブドウが食べたくて仕方ないキツネが、木になっているブドウが届かないから「どうせあのブドウはすっぱくてまずいんだ」と思って諦めるという話です。

「ブドウが好きなのに食べられない」という矛盾が不快感を生み出すため、「あのブドウはすっぱい」と思い込んで、「食べてもまずいだけだからあんなブドウ食べたくない」と自分に嘘をつく。

元々、キツネはブドウを食べたくて仕方なかったわけですから、届かないとわかったとき悲しい気持ちになったのではないでしょうか。

取ろうとしても取れずイライラすることもあったでしょう。

すごく悔しい思いをしていたのかもしれません。

ブドウが食べたかったという本音だけでなく、付随する感情の動きも誤魔化しています。

自分に嘘をつくことで自分を守っているんですよね。

自分に嘘をつき続けると本音を見失う

「ブドウを食べたくない」というのが誤魔化した結果なのか、それとも本当に元から食べたくなかったのか。

自分に嘘をつき続けていると本音がわからなくなってしまいます。

そして、以下のような状態になっていくのです。

  • 「何考えているかわからない」と言われた経験がある
  • 「もっと本音で話して欲しい」と言われたことがある
  • 幼少期や学生時代を振り返っても記憶がほとんどない
  • 素直に相談すること、人に甘えることができない
  • まったくと言っていいほどイライラすることがない
  • 自分の感情を無視してでも効率化を求める
  • 理屈っぽくてどこか冷めている
  • 「好き」という感情がわからない

該当するところはありましたか?

自分に嘘をつくのは自分を守ることであって悪いことではありません。

しかし、習慣化させると自分の本音がわからなくなるから問題が起こります。

自分に嘘をつく習慣が引き起こす問題

まるで嘘がいいことのように錯覚してしまう

他人を責めない、愚痴を言わない、嫌悪や怒りの感情がほとんどないという人は、たいてい自分に嘘をつくことが習慣化しています。

本音を悪魔、嘘を天使として例を作ってみましたので、以下の悪魔と天使のやり取りをご覧ください。

悪魔:「馬鹿のくせに調子乗りやがって」

天使:「いやいや、そんなこと僕が思うはずないんだ」

悪魔:「あんなやつ生きてる価値すらないぞ」

天使:「いや、どんな人にでも価値はあるはず。あの人にもきっといいところはあるんだから」

悪魔:「ほんまにウザい、死ねばいいのに」

天使:「なんてことを言うんだ。そんなひどいこと思っちゃいけないよ」

悪魔:「もう何かもがイヤだ、しんどい」

天使:「他の人はもっとしんどい思いしてるはず。自分だけがしんどいわけじゃないんだから」

悪魔:「親の存在自体に無性にイライラする」

天使:「親に面倒見てもらって生活させてもらっているんだから感謝しなきゃ」

悪魔:「かわいい女の子と付き合いたい、SEXしたい」

天使:「身体の関係じゃなくて大事なのは心のつながり、愛なんだ」

このように悪魔と天使の葛藤を繰り返しています。

本人にとって悪魔は出てきて欲しくないと思っていますので、悪魔を抑え込んで天使の自分で誤魔化すことを繰り返します。

そして、気付かないうちに自分の中に悪魔はいないんだと思い込むようになるのです。

本音がわからず莫大なストレスを抱える

悪魔は存在してはいけないのか?

いえ、逆に存在しなければなりません。

自分に嘘をついている人の感覚から悪魔という表現を使いましたが、これは自分の本音です。

自分に嘘をついて本音を抑え込むというのは、自然に反することでありどこかに異常が出るようになります。

例えば、人と話すときに何を話していいかわからなくなったり、意見を求められても意見が出てこなかったり、なぜか些細なことで無性にイライラするようになったり、他人の目が異常に気になったり、気持ちが落ち込んでうつ状態になってしまったり、好きという感情がわかなくなったり…

さまざまな面で支障をきたすだけでなく、自覚のない莫大なストレスを抱えることから、うつや依存症、心身症などにつながりやすく危険です。

しかし、異常が出たとしても自分に嘘をついている自覚がないため、さらに自分をだまして誤魔化します。

「自分はこういう性格なんだ」と自分を納得させる人も多いですね。

自分を誤魔化す嘘に気付くカギとなるのは矛盾

自分の本音を嘘で誤魔化していると何かしらの矛盾が出てきます。

以下のやりとりをご覧ください。

カウンセラー:「人とどういうかかわりができれば理想的ですか?」

クライエント:「職場の人に気を遣わず仲良く楽しく話せるようになりたいです。」

カウンセラー:「職場の人に自分の話ってされてますか?」

クライエント:「一切してません。職場の人に本当の自分は絶対に見せたくないんです。」

このAさんの2つの発言を合体させてみると「職場の人に本当の自分を絶対に見せずに仲良く楽しく話せるようになりたいんです。」になりますよね?

これって完全に矛盾してるんです。

本当の自分を絶対に見せようとしないほどに壁を作っている人と気を遣わない仲になんてなれるわけないじゃないですか(笑)

対人恐怖症で悩んでいる人の話を聴いていると、このような矛盾がいくつも出てきます。

「一人の方が楽だし人と関わりたくないんですけど、人からどう見られてるか異常に気になるんです。」というのは、人と上手くかかわれないから本当はかかわりたいのに一人の方がいいと自分に嘘をついている。

「もう母は私のことを理解してくれないって諦めてるんですけど、母のことを考えると無性にイライラするんです。」というのは、本当は母親に理解して欲しいのに諦めるしかないと無理やり自分を納得させている。

自分に嘘をつき続けてきた人ほどこういった本音を見つけるのは難しいですが、カウンセリングで本音や感情に焦点を当てて矛盾とぶつかりながら少しずつ気付けるようになっていきます。

⇒対人恐怖症を克服するカウンセリングの詳細はこちら