他人の視線が気になるのは誰しも少なからずあります。

「自分がどう見られているか」「自分がどう評価されているか」は社会生活をしていく上で意識せざるをえないものですからね。

しかし、それが異常に気になって他人の視線が怖いと感じようになる。怖いから外に出られなくなってしまったりするのが他者視線恐怖症と呼ばれる症状です。

一般的に視線恐怖症と呼ばれるものはこの他者視線恐怖症を指しています。

道を歩くとき、自転車に乗っているとき、電車に乗ったとき、周りに人がいる場面で人と話すとき、ホームで電車待ちしているとき、車のバックミラーから後ろの車の運転手が見えるとき…

私の経験上では自動販売機でジュースを買おうとするときというのもありました。

どこに行っても常に誰かに見られているように感じるだけでもしんどいですが、視線が気になってやりたいことが自由にできないのは本当に辛い状態だと思います。

他者視線恐怖症の自意識過剰な感覚

私の実体験である自動販売機でジュースを買ったときを例に挙げます。買えないときがほとんどでしたけどね。

山道を歩くこと15分、真夏の暑さで喉が渇いて仕方がない。

自動販売機が目に入って「ジュースが飲みたい」と思う。

車を確認するかのように見せかけて周りに人がいるかどうかを確認。

人がいた場合は何もなかったかのように素通り、自動販売機に近づく自分が変に思われるのが怖いから。

人通りがなかったとしてもいつ人が来るかと思うと落ち着かない。

やっとの思いで自動販売機の前にたどり着いたのに財布が変じゃないかと気になる。常に左右背後への意識は強い。

お釣りを取る時間はかけたくないからちょうどの小銭を必死に探す。1,000円札は手が震えて上手く入らない可能性があるから避けたい。

とくに飲みたいわけでもないのにみんなが選びそうなコカコーラを買う。本当はリアルゴールドが飲みたいのに。

スムーズに取り出さないとと焦りながら急いでジュースを取り出そうとする。しかし、焦っているから上手く取り出せず必死になる。

手に持ったままだと買ったことがバレるからすぐカバンにしまい込む。

たぶん誰か見ていたに違いないと思って赤面しながら、赤面がばれないように早歩きで立ち去る。

本当は走り去りたいけど変に見られるのが怖くて走れない。

まるで一挙手一投足を監視されているような感覚でした。

同行カウンセリングで見た他者視線恐怖症の実態

もう何年も前の話になりますが、何名かの方に同行してカウンセリングをおこなっていた時期がありました。

その中で印象的だったことで、とくに他者視線恐怖症の方に知っていただきたい事実をふと思い出したので書きます。(同行カウンセリングを受けていた方をAさんとします)

私と他者視線恐怖症で悩んでいたAさんが、カウンセリングのためにとあるショッピングモールに行ったときの話です。

Aさんに店員さんと会話するという行動をとっていただいたのですが、その店員さんはなぜか話しかけたAさんではなく、隣にいた私と目を合わせて話をし出したのです。

Aさんは店員さんが目を合わせてくれないのは「自分が変だと思われたからだ」と思っておられましたが、私が見た実態は違いました。

店員さんが目を合わせなかった理由は、Aさんが変だったからではなく、必死さから圧迫感がにじみ出ていたからだったのです。

店員さんに話そうと意気込んでいたAさんは、目を合わせ続けながら店員さんの話をしっかりと聞いていました。

これは相手が深刻な話をしているとき、もしくは、言いづらいことをカミングアウトしてきたときの対応としてはオッケーです。

しかし、今回は何の関係性もない店員さんで、ただ商品の説明をしていただけですから、そんなに真剣に聞かれたら変なプレッシャーを感じて喋りづらくなったのだと思います。

そして、助けを求めるように私と目を合わせて話すという結果に至ったのです。

実際に店員さんがAさんから目をそらしたのは事実ですが、その理由は「Aさんを変だと思ったから」ではなく、「Aさんの真剣に聞き過ぎる態度に圧迫感を感じたから」だったと言えます。

他者視線恐怖症の原因を知る

他者視線恐怖症だけでなく対人恐怖症全般に言えることですが、相手の反応を自分が気にしていることと結びつけて苦しむという思考を繰り返しています。

事実はどうなのかを知る由もないままに「また変に見られた」と思えば思うほど自分は変なんだと思い込んで悩む。

そして、変に見られないようにどうすればいいかと服装や髪型など見た目を気にしたり、会話する時間を短くしたり、できるだけ人のいない場所を選んで行動したりするようになります。

でも、そんなことをいくら繰り返しても今の状況が改善するはずはないのです。

なぜなら、そもそも見た目が変だと思われていないから。

相手が目をそらした原因が何なのか、なぜ自分だけ挨拶されないのか、なぜ相手の様子が変わるのか…

自分が思っている一つの原因だけに結びつけずに本当の原因に気付いていくことが大切なのです。

現地同行していた頃は様子を見た上でしか事実をお伝えできませんでしたが、今は見なくても状況をお聴きすれば何が原因なのかだいたいわかります。

今回登場したAさんのケースだと、目を合わせ続けて真剣に話を聞きすぎることが原因だったわけですから、これをやめれば相手が目をそらすことはなくなります。

「どうすれば目を合わせ続けて真剣に話を聞きすぎるのをやめられるか」がポイントになるわけです。

目を合わせて真剣に話を聞きすぎるのは、極度の緊張状態だから。

では、なぜ極度の緊張状態になるのか。

自信がないから、人と話すときは目を合わせないと失礼だという固定観念が強いから、何を話せばいいかわからないから…

いろんな原因が考えられますよね。

本質とはズレますが、隣にカウンセラーがいたというのも原因にはなっていたと思います(笑)

他者視線恐怖症は人によって範囲が異なる

人によって誰の視線が気になるかには違いがあります。

学校のクラスメイト、職場で一緒に働いている人、近所の人といった何かしら関係性がある人の視線だけが気になる人。

道を歩いている人、電車に乗っている人、お店の中にいる人といった全く関係性がない赤の他人の視線も気になる人。

前者は一人で出歩くことは苦にせず、学校や職場に行くことがしんどい。

後者は家から一歩外に出ることすら苦痛なので、日中出かけづらく買い物に行くとしても人が少ない時間帯に出かけたりしています。

ただ、主婦の場合は前者であっても一歩外に出れば近所の人、ママ友と遭遇する可能性があるためしんどさは後者と大差ないでしょう。

支障の出ている範囲が広いのは後者であり、他者視線恐怖症の度合いも強いと言えます。

認知療法は効果が出づらい

他者視線恐怖症を改善するために、カウンセラーから「実際には見られていないのを確認することを繰り返せばいい」という認知療法的なアドバイスを受けることがあるそうです。(インターネット上でも克服法として登場しています)

しかし、普通に相手がたまたま見てくることもありますし、さらに、他者視線恐怖症で悩んでいる人は行動が不自然になりがちなので人から見られやすい傾向があります。

電車で向かいの人の視線が気になるからと頭を不自然なほどに下げていたり、ショッピングモールですれ違う人の視線が怖いからと小走りしたり、視線が気になるからと夜なのにサングラスを掛けたり、見られる意識を楽にするために明らかに必要がないのにマスクを付けたり、手足が震えたり、赤面したり、汗をかいたりと身体症状が出るケースもありますので、自然体でいる人に比べて見られる確率は高くなっているのです。

本当に見られていないことを何度も繰り返し確認できるのなら効果が出やすいですが、なかなかそうはいかないので基本的にオススメしておりません。

どうしても試したい方は自己責任でお願いします。

他者視線恐怖症の克服方法

他者視線恐怖症は他人の視線が怖いと感じて苦しむものですから、他人の視線をコントロールできればいいのですがそれは無理ですよね。

人は見たいと思ったものを見て生活しているわけですから、たまたま自分がその対象になれば見られることから逃れられません。

他人の視線はコントロールできないので、自分の視線への意識をコントロールしていくことになります。

自分が他人の反応を細かく観察しているからこそ、他人も同じように自分を観察してきているような感覚になってしまう。

「自分は自分、他人は他人」という境界線を引いて感覚的に切り離せるようになり、他人の反応を観察しなくても大丈夫なくらい不安を抱えられる状態になるのがゴールです。

カウンセリングを受けながら、人からどう見られるかが気になる過剰な自意識と少しずつ距離を置けるようにしていくことによって、「自分の見た目がおかしいから見られたんじゃないか」「自分の仕草が変だから見られたんじゃないか」といった思考から抜け出しやすくなる。

さらに、人とのかかわりの中で自分がどう見られるかよりも大事なことがあることを実感して、自信が付いてくるようになれば気付いた頃にはほとんど視線が気にならない状態になっています。

自分の容姿が異常に気になる場合は醜形恐怖症の可能性もありますので、悪化させて整形手術を繰り返したりする前に一度ご相談ください。

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