対人恐怖症は薬を飲めば治ると思って、精神科や心療内科といった病院へ行く人は多いです。

風邪とかの病気と同じような感覚でしょうか。

カウンセリングを受けたり、自分から頑張って話しかけたりせず、薬を飲むだけで治るなら一番楽ですからね。

逆に依存するのが怖くて薬を飲みたくないという人もいます。

薬を飲んでみても効かなかった、副作用がしんどくてやめた人もいたり…

妊娠中や他の病気との兼ね合いで薬が飲みたくても飲めないケースもありました。

実際のところ対人恐怖症は薬で治せるものなのか?

カウンセリングの臨床経験や調べた情報などに基づいてお伝えしていきます。

対人恐怖症で処方される薬

対人恐怖症は社交不安障害と診断されることが増えてきているようで、最近では対人恐怖症と診断されたケースはあまり聞きません。

約2年前に「社会不安障害(SAD)」と医師に診断されました。初めて聞いた病名でしたが、医師から「昔は対人恐怖症といったんだよ」と説明を受け、納得しました。

引用元:社会不安障害(SAD)体験記:こころの病 克服体験記|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

対人恐怖症の呼び方が変わっただけのような認識でいいと思います。

処方される薬は、名前の通り「抗不安薬」が第一選択薬だったのが、副作用の問題などによって近年「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」に変わってきました。

数十年来臨床で広く用いられきたベンゾジアゼピン系抗不安薬は不安神経症の治療に非常に有効であった.しかし,ベンゾジアゼピン系抗不安薬では,常用量依存・眠気・認知障害・運転等への影響と(4),一部の不安障害(特に強迫性障害)には有効とはいえないこと(表1)が問題点として指摘されてきた.1980年代より,抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI)の不安障害に対する二重盲検比較試験が欧米で多数行われ,SSRI は様々な不安障害に有効であり,その適応範囲はベンゾジアゼピン系抗不安薬よりも広いことが明らかになった(図1)(5,6).依存性の問題を考え合わせると SSRI は不安障害の第一選択薬となりつつある.

引用元:日本薬理学雑誌「不安障害の薬物治療の最前線」

SSRIの不安障害に対する有効性は欧米で多数おこなわれた二重盲検比較試験で証明済みであることも記載されています。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の依存性は実際に飲み続けていた人の体験談でよく聞きました。

自分で勝手にやめて離脱症状で大変な目に遭うケースもあったみたいですね。

最近はSSRI、頓服として抗不安薬も処方される形が多いように思います。

薬だけで対人恐怖症が治らないケースも…

しかし、実際に通って薬を飲み続けても一向に治らないままの人もいます。

  • 「何年も薬を飲んでいるが一向に治らない。」(神奈川県、30代、男性、会社員)
  • 「ルボックスという薬を3年くらい飲んでいたのですが全く効果がありませんでした。」(A.K様、東京都、20代、女性、会社員)
  • 「去年、精神科で社会不安障害と診断されて薬をもらい、飲むと不安は和らいだのですが体がだるく無気力になりました。結局、薬を飲むことの方が不安になったので通院をやめました。」(福岡県、20代、男性、会社員)
  • 「薬処方してますが、長年直ることがなく私生活が困難なので普通の生活が送りたいです。」(愛知県、30代、女性、会社員)
  • 「SSRIと抗不安薬を飲むことで眠れるようになって、不安も軽減されたので病院には通い続けていました。しかし、薬を飲み続けても性格が改善されるわけではなく、ろくに話もせずに薬をもらいに行くだけの通院を続けても意味がないと思うようになり、自己判断で少しづつ薬の量を減らして大丈夫だったので最終的に通院をやめました。」(埼玉県、30代、男性、会社員)

これらは当カウンセリングルームにご相談いただいた方の実際のお声です。

薬物療法が万能ではないことは宮崎大学と千葉大学の研究グループによる臨床試験のプレスリリースにも記載されていました。(文中の「社交不安症」が対人恐怖症を意味します)

抗うつ薬を用いた薬物療法は、社交不安症に対する効果的な治療法として最も普及しています。しかし、一部の患者では十分な改善が得られないため、次の有効な治療法を確立することが課題でした。

引用元:社交不安に薬の治療が効かないとき – 千葉大学

なぜ、対人恐怖症が薬で治らないのか?

薬が効きにくい体質だったり、場合によっては処方される薬が合っていなかったりという可能性も考えられるでしょう。

また、根本的なところにある問題が解消しないままになっているからと考えることもできます。

薬を飲むことで不安や恐怖を和らげることができても、不安との付き合い方や物事に対する捉え方は変わらない。

薬を飲んだら急に細かいことを気にしない性格に変わったり、ネガティブ思考がポジティブになったりすることはありませんからね。

だから、いつまでたっても人と会う場面では不安や恐怖を感じて、そのたびに薬を飲むことを繰り返す…

薬で不安や恐怖をごまかす状態が続くだけになる可能性があるわけです。(まさにモグラ叩き状態ですね)

薬を飲んでいたからなんとかなった。もし、薬を飲んでいなかったら大変なことになっていたかも…という不安が生み出される。

不安だから薬を飲み続けないといけないとなれば、依存性が高い薬でなくても依存してしまうことになりかねません。

対人恐怖症という不安に飲まれやすい症状だからこそ起こり得る問題だと思っています。

カウンセリングの併用で根本にある問題を改善していく

最近は薬物療法と精神療法(カウンセリング)の併用が一般化されてきた印象です。

この流れは「公認心理師」という国家資格誕生にも影響したのかもしれません。

医師による薬物療法だけでは治せない範囲を公認心理師の精神療法に担わせていくという流れ。

公認心理師法で「主治医の指示に従うこと」が義務付けられてますからね。

薬物療法と精神療法の併用が有効であることは、厚生労働省のサイトにある克服体験記にも記載されています。

心療内科の治療は、薬物療法と精神療法でした。医師によると、SADの患者は、脳内物質のバランスが悪くなっているので、そのバランスを良くするために、薬を飲まなくてはいけないそうです。そして、薬を飲みながら、対人恐怖になりがちな考え方のクセを治していくのが、治療の方針のようでした。

引用元:社会不安障害(SAD)体験記:こころの病 克服体験記|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

実際に病院で処方された薬を飲みながらカウンセリングを受けている人もいます。

対人恐怖症は薬で治せるケースもあれば治せないケースもある。

治せない範囲であればカウンセリングを受けて根本にある不安との付き合い方や物事に対する捉え方を変えていくようにしましょう。