学生時代にいじめに遭って人が怖くなったというケースは多いです。

暴力、陰口、無視、咳払い、舌打ち、仲間外れ、裏切り…

私自身もいじめに遭った経験がありますが、小学生の頃のあからさまな暴力や面と向かっての暴言より、高校時代の陰口など陰湿ないじめの方が精神的に辛かったのを覚えています。

周りの人から何かしら攻撃されることが嫌で嫌で仕方ないのに逆らえない。

辛い気持ちを耐え続けながら他人への恐怖心を強めていく。

さらに親や先生が助けてくれなかったとなれば、大人への不信感を抱き人を信じることも困難になります。

いじめ後遺症とは?

過去にいじめに遭ってトラウマとなり、卒業してからもずっと悩まされ続けるのがいじめ後遺症です。

いじめが起きた時、親も学校も適切な対策をとらず、卒業すればそれで終わりと考えがちですが、当事者はいつまでたっても癒えない生傷を心に抱え続けているんです。

引用元:「いじめによるトラウマ、後遺症は残る」 精神科医 斎藤環さんに聞く、2018、ソーシャルアクションラボ 毎日新聞

いじめられた経験がトラウマとして残り、思い出したくないのに何度もフラッシュバックで苦しむ。

とくに同世代の集団への恐怖心が強いので、見ず知らずの学生の集団に恐怖を感じたり、輪に入っていけず同世代との関係が築きづらくなってしまう。

結果として、ひきこもり、対人恐怖症になる人が多く、うつ病、パニック障害などの症状が大人になってから出てくることもあります。

いじめ後遺症は10年経っても20年経っても克服しない限り続くのです。

いじめ後遺症のメカニズム

いじめを受けたことによって恐怖の感覚が記憶される。

命を守るために人間の脳は身の危険を感じたことをしっかり記憶します。

いじめが繰り返される中で恐怖心がどんどん増していく。

学校に関する話を聞くだけでいじめられた記憶がよみがえってくるようになり、実際にいじめられていたときと同じかそれ以上のつらさを再体験する。

実際のいじめと記憶の中でのいじめ、両方を何度も経験していくうちにトラウマ化。

「他人はみんな敵だ。自分を攻撃してくるから警戒しないといけない」という固定観念が形成される。

結果として、フラッシュバックが起こったり、近くに人がいるだけでも恐怖を感じたりする状態になってしまう。

いじめの後遺症がトラウマとして残るわけです。

いじめが引き起こす問題

いじめに耐えるための正当化

誰にも相談できない、相談してもいじめをやめさせることができないとなれば耐えるしかありません。

しかし、毎日のように殴られたり、聞こえるように陰口を言われたりするのをそのまま耐えるのは非常に難しい。

そこで人は正当化を始めます。

「自分は嫌われる人間だから仕方ないんだ」

「言い返せない自分が悪いんだから仕方ない」

本来なら相手を責めるはずなのに相手を責められないから自分を責めて正当化させる。

自分で自分を納得させてなんとか自分を保たせるようになるのです。

自分を責める習慣が感覚を狂わせる

正当化するために自分を責めて過ごしていると、他人からも自分が責められている感覚に陥ります。

頭ではやさしい人だとわかっているのに「何かされるのではないか」という不安が消えず、どんな人とかかわっているときでも安心できない。

たまたま電車で隣に座った人も、道ですれ違った人も、自分に何かしら危害を加えてくるかもしれないと感じるようになるのです。

自分の視線が自分のにおいが自分の存在が…

人によって何が問題だと思うかは違いますが、自分に問題があるから攻撃されるんだと思い込んでしまいます。

莫大なストレスによる脳のダメージ

いじめに遭っているときだけでなく、家にいるときでも思い出して恐怖を感じる。

そして、いじめられる環境から脱してもいじめられていたときのことを思い出しては苦しむ。

トラウマになるほどのいじめは、幼少期の親からの虐待、戦争や大規模災害と同等のもの。

「ひきこもっている人の中に、中高のいじめが起点でずっと苦しんでいる人がいました。彼らには、自分の意思に関係なくつらい体験を思い出したり、不眠やイライラするなどの興奮状態になるといった、明らかにトラウマの影響と思われる症状が出ていました。対人恐怖症もある。トラウマは生命の危機を感じる場面で形成されると言われています。いじめは被害者にとっては死活問題、危機的な場面です」

引用元:いじめ後遺症で「学生服の子を見ただけでもダメ」大人になっても苦しむ被害者の告白、週刊女性2019年11月5日号

どれだけ莫大なストレスか、想像を絶するものだと思います。

ストレスホルモンとして有名なコルチゾールが長期にわたり分泌されることで短期間の記憶を司る海馬が委縮。

さらに運動と学習に関連するところにまで問題が起こることがわかっています。

長期にわたっていじめを経験した被験者は運動と学習に関連する被殻と尾状核の左脳側の容積が大幅に減少していたことを発見しました。

引用元:長期間にわたる「いじめ」は脳の一部を萎縮させる、2019、GIGAZINE

実際に長期にわたるいじめを受けなかったとしても、いじめられた経験を何度も繰り返し思い出すのは長期間いじめに遭っているのと変わりません。

いじめ後遺症を克服するにはどうすればいいのか

「自分は悪くなかった」という事実を心に響くまで落とし込む

いじめに耐えるために自分が悪かったという思い込みが定着しています。

普段の何気ないことに対しても相手を責めず自分を責めてしまう。

過去のいじめを思い出したときのつらさを強化する要素でもあるので変えていくことが必要です。

ただ、「あなたは悪くないんだよ」「いじめるやつが悪いに決まってる」といった言葉だけではなかなか変わりません。

当時の自分を守っていた思い込みだから非常に強力なのです。

まずは日常の人間関係から自分を責めてしまうクセに気付いていくこと。

そして、「自分が悪いとばかり思うところがあるな」と受け止めていきます。

少しずつ受け止める力がついてきたら自分の感情にも目を向けていくのですが、一定の安心感がある状況下でないとなかなかできません。

信頼できるカウンセラーとの間でおこなうことが必要となります。

自分の感情が受け止められるようになると「自分は悪くなかった」という事実が腑に落ちて楽になっていくのです。

今の生活で少しでも満たされることを増やす

カウンセリングではいじめられた当時の気持ちを話すところが多いと思います。

本人が聞いてほしくて話すならまだしも、いじめ後遺症を克服するために話さないといけないとなればものすごくつらいことになります。

毎日思い出したくないのに何度も思い出してつらい気持ちになる。

それをまたカウンセリングで話すというのは傷口に塩を塗るようなことになるからです。

話していく中でいじめによって否定された自分を肯定したり、捉え方を変えたり、相手が悪かったんだと思えるようになったりするので、効果がないとは言いません。

ただ、現状が変わらないままだと過去に意識が向く状態が変わらないのです。

いくら過去の整理ができてもいじめられた記憶が消えるわけではない。

ひきこもっていて何も楽しみがない、日々やりたいことがあるわけでもなく漠然と過ごしていては過去のトラウマがよみがえりやすいのは当然です。

ほんの少しだけでもいいから、何かしら自分のやりたいこと、今後の未来につながるようなことをしていく。

過去ではなく現在、未来を考える比率が高まっていく中でいじめ後遺症は克服へと向かうのです。

カウンセリングではいじめ後遺症によって失われた本当の自分(自信)を取り戻し、自分らしく人付き合いが楽しめる状態になれるようサポートします。