カウンセリングでは以下のような心理療法を用いて改善を目指します。

精神分析的心理療法

精神分析的心理療法は心に浮かんだことを自由に話すこと(自由連想法)によって、無意識に潜む葛藤をカウンセラーと一緒に見つめ、理解していくことで心の深いところにある感情にアプローチしていく心理療法です。

「精神分析」という言葉から一方的に分析されるイメージですが、実際はクライエントに寄り添ってお話をお聴きする形になります。

カウンセラーとの対話で生まれる気付きが無意識にある問題を意識化。じっくり時間をかけて向き合っていくことで心理的な成長が促されて問題が解決に向かいます。

表面的な問題解決ではなく内面世界を探求していく形になるため、頭ではわかっているのに変えられない状態の方や漠然とした不安を抱えている方には効果的です。

ただ、どうしても時間がかかってしまうため、精神分析的心理療法だけでなく他の心理療法も織り交ぜる折衷的心理療法の一つとして用いられることが多くなっています。

来談者中心療法

来談者中心療法は来談者(クライエント)が自力で解決する力を持っていると信じて話を聴き続ける心理療法です。

否定も肯定もせずただひたすらに話を聴くことで、クライエント自ら解決策に気付き動き出すのを待ちます。

カウンセラーとの関係性によって安心感が得られるため、人とのかかわりで不安や恐怖を抱える対人恐怖症、アダルトチルドレン、愛着障害等に有効です。

傍から見れば単に話を聴いているだけのように見えますが、相手の話を否定も肯定もせずに聴き続けること、クライエント自らが解決する力を持っていると信じることは意外と難しく、来談者中心療法とうたっているところでも実はできていないことが多いです。

とくに大阪を中心とする関西圏では、おせっかいな性質を持つカウンセラーが多いため、本来クライエントを信じて待つべきところなのに、必要以上にアドバイスをして改善を妨げるケースが多いように感じます。

カウンセラーが自分の感情や価値観に左右されるとクライエントの話を否定したり、誘導したりしてしまうことも出てくるため、しっかりと教育分析を受けたカウンセラーでないと実践が難しいと言われています。

認知行動療法

認知行動療法は認知の歪みが原因で精神疾患が起きているという前提で認知の歪みを修正していく心理療法です。

うつ病と対人恐怖などの不安障害に対して確実な効果があることが科学的に証明されており、他の治療技法に比べて短時間で大きな効果があらわれると言われています。

研究グループは今回、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者が、認知行動療法を受けることで顕著に症状が改善するだけでなく、その効果が治療終了 1 年後まで維持されることを明らかにしました。なお治療終了 1 年後の時点で、認知行動療法を受けた 21 名の患者のうち 85.7%(18 名)が顕著な改善反応を示し、57.1%(12 名)は社交不安症の診断がつかない程度(健常者と同程度)まで改善しました。

引用元:社交不安に薬の治療が効かないとき、2019、千葉大学

ただし、ある程度改善して自分を客観視できる状態になってからでないと効果が出づらい面はあります。

視線恐怖症で何年も悩んでいる人が認知行動療法を受けたケースで、「見られていない可能性もあるのでは?」という話をされて「いや、絶対に見られています」と答えて何の効果も感じなかったという事例は多いです。

はじめはうつ病に対する治療法として確立され、その後、パニック障害・強迫性障害・対人恐怖などの不安障害や、発達障害、摂食障害、統合失調症の症状(幻覚や妄想)、パーソナリティ障害にも適用されるようになりました。

アメリカの保険会社やイギリス政府は、認知療法の治療効果を正式に認めており、欧米の精神療法のガイドラインには認知行動療法が推奨されていますが、日本ではまだまだ導入が遅れています。(2010年4月からうつ病に対する治療を中心に保険適応化されてきています)

森田療法

森田療法は人間が本来持っている自然治癒力を活かし、不安をあるがままに受け入れて捉われから脱出する心理療法です。

神経症の治療法であり、対人恐怖症やパニック障害などに有効とされています。

森田療法では、症状それ自体をあってはならない病的異常として異物視してなんとかそれをなくそうとしたりはせずに、赤面するならするがまま、視線が気になるならなるがままといったふうに、症状それ自体はそのまま受忍しながら、本来すべきことに取り組ませるという、ある種の作業療法的な体験を積ませる。すると患者は、さまざまな症状が出たとしても、実際にはそれなりにすべきことはできることが分かっていく。そしてこうした経験を積み重ねていくことで、患者たちは、依然として症状それ自体はあったとしてもそれにとらわれなくなり、とらわれなくなることで症状それ自体が消えたも同然、あるいは症状それ自体はあっても問題にならない、という境地に達する。こうして患者は「回復」するのである。森田療法のキーワードとしてしばしばとりあげられる「あるがまま」と「目的本位」とは、以上のような事態を指す。

引用元:社交不安障害の臨床社会学に向けて、2013、浜松学院大学研究論集

不安をあるがままにしておいた状態で、本来の現実的な欲求や目的にそって行動して、少しずつ不安を受け入れて改善していくという流れですが、そもそも不安に対処しないまま我慢して行動できないので取り組むのが非常に難しいです。

行動をする前にしっかりとカウンセリングで対話を重ねることが必要となります。

日記や語らいの機会が重視されてきたのは、社交不安傾向と折り合いをつけるためには、素朴な経験的実感を積み重ねるだけでは不十分であり、そうした実感を資源としながら、自らのありようについての説明や了解を言語的に構築していく必要があると森田は考えていたからにほかならないだろう。

引用元:社交不安障害の臨床社会学に向けて、2013、浜松学院大学研究論集

日記指導や自助グループでの交流といった前提を抜きにあるがままだけを意識してやろうとするから、結局、あるがままにしようと思いつつもできないまま、できない自分を責めて悪化していくケースが増えているのではないかと思っています。

昔は入院させて何もできない状態にすることで人間の持つ本質的な欲求を呼び覚まして改善する入院治療が中心でしたが、近年は通院治療に変わってきており、日記をつけて指導する方法が一般的です。

催眠療法(ヒプノセラピー)

催眠療法は症状の原因が潜在意識にあるとして、催眠状態にして潜在意識を書き換えていく心理療法です。

ヒーリング系の音楽を流しながら催眠状態に誘導していくところもあれば、音楽を流さずにおこなうところもあります。

他の療法と比較すると料金が高いのも特徴の一つです。

催眠で過去のトラウマを消してもらえたら治ると期待して受けに行った人の話をよく聞きます。

人によって催眠状態にならない人もいるため効果を感じないケースもしばしば。

お笑い芸人のツッコミ担当が催眠にかかりづらいと言われる通り、いろんな角度から物事を考え続けるような習慣がある人には向かないでしょう。

一定以上の度合いの対人恐怖症は症状へのこだわりが強くなっているため、催眠療法ではなかなか効果が出ずにやめてしまうこともよくあるようです。

症状のことばかり考える状態になっているから催眠に入りづらいのだと思います。

ちなみに、私自身も催眠療法を一度受けたことがありますが、効果はあまり感じませんでした。

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