妻から「あなたはモラハラ夫だ」と言われ、現在別居中、離婚に向けての協議中といった状態でご相談にこられるケースがあります。
「そんなつもりはなかったのになぜ傷つけてしまっていたのだろう」「自分を変えないといけないけど何を直せばいいのかわからない」と悩んでおられるのではないでしょうか?
モラハラ(モラルハラスメント)を指摘されると多くの人はショックを受け、「自分はモラハラをするようなひどい人間ではない」「相手のためを思って言っただけなのに」「間違っていることを正しただけだ」といったことを思いやすい傾向が見られます。
実際、モラハラをしてしまう人の多くは、相手を傷つけようとして発言しているわけではありませんからね。
むしろ「相手に良くなってほしい」「失敗してほしくない」といった思いから助言や指摘をしているケースばかり。
しかし、よかれと思ってなら何を言ってもいいということではありません。
大切なのは自分に悪気があったかどうかではなく相手がどう感じたかです。
モラハラは一度の暴言だけで成立するものではなく、小さな否定や支配的なコミュニケーションが積み重なることで、相手の心を少しずつ追い詰めています。
この記事では、モラハラを指摘された方に向けて、自覚しづらい理由、相手が離れていってしまう理由、モラハラを引き起こす心理的な原因について心理学的な視点から詳しく解説します。
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モラハラとは「相手を支配するコミュニケーション」である
モラハラというと、怒鳴る、暴言を吐く、人格否定するといった明らかに問題のある言動をイメージすると思います。
たしかにこういったこともモラハラに該当するのですが、実際はもっと多岐にわたっていて複雑なものです。
「普通はこうするでしょ」
「何でそんなこともわからないの?」
「お前のためを思って言っているんだ」
こういった相手を自分の価値観に従わせようとする発言も、相手に不快な思いをさせ苦痛を与えることになりやすいのでモラハラに該当します。
つまり、問題なのは「厳しい言葉を使ったかどうか」ではなく、相手の尊厳や主体性を奪ってしまうコミュニケーションになっているかどうかなのです。
モラハラは「無自覚」で起こっている
モラハラを指摘された人の多くは「そんなつもりじゃなかった」と言います。
これは言い訳ではなく、本当にそう感じている場合が少なくありません。
なぜなら、自分の中では以下のような認識になっているからです。
- 正しいことを教えている
- 家族だから言わなければならない
- 相手のためになる
しかし、言われた側は否定された、尊重されていない等と感じ、嫌な思いをしています。
同じ会話でもお互いの受け止め方が全く違うんですよね。
そして、このズレに気づけないことこそが無自覚なモラハラの特徴だと言えます。
モラハラの背景には育ってきた環境が影響していることもある
ここまで読むと「自分は性格が悪いのではないか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、モラハラの背景には、幼少期の親子関係や家庭環境が影響している場合があります。
- 厳しく育てられ「正しくあること」が何よりも大切だと教えられてきた
- 親から否定や支配を受け、それが当たり前のコミュニケーションだと学んできた
- 自分の気持ちを受け止めてもらえず「間違いを指摘されること」が愛情だと思って育った
こうした経験は大人になってからの人間関係にも影響を与えます。
もちろん、育った環境があったからといって、モラハラを正当化できるわけではありませんが、原因を理解しなければ本当の意味で自分を変えることは難しいのです。
モラハラを生み出す3つの心理的特徴
「正しさ」を優先しすぎる
モラハラをしてしまう人は「相手がどう感じるか」よりも「何が正しいか」を重視する傾向があります。
もちろん、正しいことを伝えること自体は悪いことではありません。
問題はその正しさを相手へ押し付けてしまうことです。
例えば、妻が仕事で嫌なことがあって愚痴を言っているときはたいてい共感を求めています。
しかし、「次からはこうすればいい」「そんなに嫌ならやめればいい」等と正論で返してしまう。
本人は解決策を伝えているつもりでも、相手には「気持ちを理解してもらえなかった」という印象だけが残ります。
夫婦関係において大切なのは正論ではなく感情の共有や安心感ですが、今まで勉強や仕事で成功してきた人ほど正論を押し付けて解決しようとしてしまうんですよね。
相手を心配する気持ちがコントロールに変わっている
自分の妻や子どもに失敗してほしくない、大変な思いをしてほしくないと思うのは自然なこと。
しかし、その不安が強くなると「こうした方がいい」「それはやめた方がいい」等と相手の行動をコントロールしようとするようになります。
本人は愛情や心配のつもりでも、相手にしてみれば自分で決める自由を奪われていると感じます。
モラハラの背景には「支配したい」という欲求だけでなく、自分の不安を解消したいという心理が働いていることがほとんどです。
自分が心配や不安の感情を抱えられないから相手をコントロールすることで解消しようとする。
その結果として、相手の気持ちを考えない支配的なかかわりをしてしまうことになっているんですよね。
自分の解釈によって相手の気持ちを蔑ろにする
モラハラを指摘される人は話を聞いていないわけではありません。
しかし、相手の言葉をそのまま受け止めるのではなく、自分なりに捻じ曲げて解釈してしまう傾向があります。
妻が「今日は忙しかった」と伝えているだけなのに「俺が家のことをやっていないと言いたいんだろ」と受け止める。
もしくは、「そういうつもりで言ったんじゃない」「それは誤解だ」と自分の意図を説明することを優先してしまいます。
その結果、相手は「気持ちを理解してもらえなかった」と感じ、次第に本音を話さなくなっていく。
モラハラの改善において「どんな言葉を返すか」よりも、相手が何を感じたのかをそのまま受け止める姿勢が欠かせません。
モラハラを受けていた相手の気持ちへの理解と関係修復に向けた対応
なぜ相手は何も言わずに離れていくのか
モラハラをしていた人は「嫌だったならその場で言ってくれればよかったのに」と言いますが、モラハラを受けている人は言えない状態になっています。
何度話しても伝わらない、正しいと思うことを押し付けられるといった経験が積み重なっているからです。
「そんなつもりじゃない」「お前も悪いだろ」「考えすぎだよ」
こういった返答が続くと相手は次第に話しても無駄だと思うようになります。
そして、会話が減り、笑顔がなくなり、一人の時間を作ろうとする。
挙句の果てには敬語でしか話してくれなくなってしまうわけです。
本人は「最近元気がないな」程度にしか感じませんが、相手の心の中ではすでに関係を諦め始めていることも少なくありません。
離婚や別れを切り出してきたのは急な思い付きではなく、こういった諦めが長い時間をかけて積み重なった結果だと言えます。
指摘されたときにやってはいけないこと
モラハラを指摘されると多くの人は自分を守ろうとしてしまいます。
例えば、「そういうつもりで言ったわけじゃない」「お前だってモラハラじゃないか」「別に俺だけじゃなくてみんなやってる」といった反応です。
たしかに悪気はなかったのかもしれませんが、相手には「私は傷ついていた、つらかった」という事実をわかってほしい気持ちがあります。
ここで自分を弁護してしまうと相手は「やっぱりわかってもらえない」と感じてしまうんですよね。
まずは、「傷つけてしまっていたんだね」「つらい思いをさせてしまっていたんだね」と受け止めることが関係修復の第一歩になります。
モラハラを改善する3つの方法
「話し方」ではなく「考え方」を変える
「これからは優しく話そう」
「怒らないように気をつけよう」
モラハラを指摘された人の多くは、このように話し方を変えようと努力します。
もちろん、それも大切です。
しかし、話し方だけを変えても、根本的な改善にはつながりません。
モラハラは話し方の問題ではなく、相手との関わり方や物事の捉え方から生じているからです。
例えば、「相手のためを思って言わなければ」という考え方が変わっていない場合、口調が穏やかになっても相手をコントロールしようとする姿勢は変わりません。
本当に改善するためには「何を言うか」ではなく「なぜ言いたくなるのか」という自分の心理に目を向けることが大切です。
「正しいか」ではなく「相手はどう感じるか」を考える
モラハラをしてしまう人は「自分が正しいことを言っているか」を基準に会話をする傾向があります。
しかし、人間関係は正しさだけで上手くいくものではありません。
正論が人を追い詰めることがあるくらい、逆に関係を壊してしまう可能性すらありますからね。
例えば、相手が失敗して落ち込んでいるときは、改善策よりも「大変だったね」「つらかったね」と気持ちを受け止めてもらいたいと思います。
こういったときに大切なのは「何を言うか」ではなく「相手は今、何を求めているのか」を考えること、相手の気持ちを想像することです。
自分の正しさを証明することではなく、相手の気持ちを優先できるようになるとモラハラをしてしまう状態ではなくなっていきます。
言いたくなっても一旦自分の中にとどめる
モラハラは反射的な一言から始まることが少なくありません。
「何言ってるんだ」「そんなこともわからないの?」「普通に考えたらわかると思うけど」
こういった言葉が深く考えずに口から出てしまうことがあるため、3秒、もしくは5秒、一旦自分の中でとどめておくようにしてください。
そして、
「これは今本当に言った方が良いのか?」
「相手はこの言葉を求めているだろうか?」
「自分が言いたいだけではないだろうか?」
と自分に問いかけ、その上で発言することを心がけてみましょう。
この数秒の間を作るだけでも感情的な発言はなくなりやすいです。
相手がわかっていることをわざわざ言ってうんざりさせているケースも多いため、「言わない」という選択をどれだけしていけるかは大切だと思っています。
相手の話を「理解するため」に聴く
モラハラを改善する上で最も大切なのは聴き方を変えることです。
多くの場合、モラハラ傾向のある人は相手が話している最中から自分が何を話すかばかり考えています。
相手を理解するためではなく、正しいことを教えるため、もしくは、相手を説得するために話を聞く状態になっているのです。
まず相手が話し終わるまで口を挟まないことを意識してみてください。
そして、アドバイスをする前に「そう感じたんだね」「そう思ったんだね」と相手の気持ちを受け止める言葉を返してみましょう。
共感とは相手の意見が正しいと無理やり自分を納得させるものではありません。
「あなたはそう感じたんだね」とただ受け入れることです。
この姿勢を持つことができるだけでも相手が受ける印象は大きく変わります。
モラハラをしてしまう状態は一人で改善できない
モラハラは単なる話し方の癖ではありません。
長年かけて身についた考え方や人との関わり方が深く関係しています。
だからこそ、「絶対にやらないようにしよう」という意思の力だけでは時間の経過と共にまた同じことを繰り返してしまうことになる。
特に、以下のような状態である場合は一人で改善するのが難しいと言えるでしょう。
- すぐに相手を否定してしまう
- 正論を言わずにいられない
- 相手が思い通りに動かないとイライラする
- 妻や恋人から何度も同じことを指摘されている
それは意志が弱いからではなく、長年身についた思考の癖が無意識に働いているためです。
カウンセリングで改善できること
モラハラを改善するためには「言い方を変える」のではなく「なぜその言動をしてしまうのか」を理解することが重要。
カウンセリングでは、以下のような観点で自分自身としっかり向き合い、根本的な原因を整理しながら少しずつ新しいコミュニケーションの取り方を身につけていきます。
- なぜ相手をコントロールしたくなるのか
- なぜ正しさにこだわるのか
- なぜ相手の気持ちより自分の考えを優先してしまうのか
- 幼少期の経験が現在の人間関係にどう影響しているのか
また、自分では当たり前だと思っていた言動に気づけることも第三者と対話する大きなメリットです。
「変わりたい」という気持ちでカウンセリングを受けるのであれば改善への大きな一歩となります。
まとめ:モラハラを指摘された今が変わるチャンス
モラハラを指摘されるとショックや戸惑い、反発する気持ちが湧くかもしれません。
しかし、その言葉を伝えた相手も、長い間悩み、我慢を重ねた末に勇気を出して伝えた可能性があります。
だからこそ、まず「そんなつもりではなかった」と自分を正当化するのではなく、「相手はそう感じたんだ」という事実を受け止めることが大切です。
モラハラは生まれつきの性格ではありません。
これまでの家庭環境や人間関係の中で身についた考え方やコミュニケーションの癖であるため、原因を理解して向き合うことで改善していくことは可能です。
当カウンセリングオフィスでは、モラハラという行動だけを変えるのではなく、その背景にある思考の癖や感情コントロール、コミュニケーションの取り方までサポートし、根本的な改善を目指していきます。
大切な人との関係を失ってから後悔するのではなく、「変わりたい」と思えた今こそ、新しい一歩を踏み出すタイミングです。
妻との関係を修復したい、もう一度家族との関係をやり直したい、モラハラをしてしまう自分を変えたいと思っておられるのであれば、一人で抱え込まずにご相談ください。
