対人恐怖症のカウンセリングをしている中で出くわすことが多いのがアダルトチルドレン(AC)です。

アダルトチルドレンとは、過保護や育児放棄、家庭内暴力(DV)、条件付の愛、過剰な期待、子供依存など問題のある家庭環境で育ち、成長してもなお心に問題を抱え続ける人たちを指します。

もともとはアルコール依存症の親がいるコミュニケーションが上手く機能しない家庭(機能不全家族)で育った大人を意味する言葉でした。

AC特性は,アルコール依存症の家族の中で子供時代を送った大人たちを指していた.現在では,「お金・仕事・学歴だけが重視される家族」「他人の目だけを気にする表面だけ良い家族」「親が病気がち・留守がちな家族」「両親の仲が悪いけんかの絶えない家族」「嫁姑の仲が悪い家族」等の「機能不全家族」を含めている

引用元:アダルト・チルドレン特性と対人関係でのストレスの自覚の程度との関係 : 看護学生と他学科学生との比較、2005、川崎医療福祉学会誌

「大人になれない人」という意味ではなく、正式な病名でもありません。

親がどれだけ頑張って幸せな家庭を築いたつもりでも、子供が「愛されていない」と感じていたらアダルトチルドレンになる可能性がありますので、どの家庭でも起こりうる問題だと言えるでしょう。

これからお伝えする特徴を見てわかっていただけると思いますが、少なからず誰にでも当てはまる内容ばかりであり、90%前後の人がアダルトチルドレンに該当すると言われています。

アダルトチルドレンに見られる特徴

孤独感が強く自分に価値を見出せない

アダルトチルドレンは、孤独感が強く「自分なんていなくてもいいのでは」と思いやすいところがあります。

愛された実感が薄いから自分で自分に価値を見出せません。

だから、価値を見出すために常に周りの期待に応えようと頑張り続ける。

自己肯定感が非常に低い状態になっているのです。

人とのかかわりで抱える不安はもちろん、1人で部屋にいるときでも不安が消えず何もせずいられない。

常に義務感に縛られて孤独感を紛らわせている側面もあります。

自分が悪いとしか思えず相手を責められない

親子関係で直接もしくは間接的に自分を否定され続けてきたことで「親に怒られるのは自分が悪い子だからだ」という認知の歪みが形成。

何でも自分が悪いと自分ばかり責めてしまうのもしんどいところです。

「共依存自己」とは,「共依存」で見られる恥辱感や低い自尊心などであり,自由な表現を許さない対人関係を体験するときに顕在化する.恥辱感や低い自尊心は,親,親代行者,教師,牧師などの権威者から「恥を知れ!」「本当に悪い子!」「おまえは駄目だ!」といった否定的なメッセージや確信,信念,規則などを何度も耳にして育つことで作られる

引用元:アダルト・チルドレン特性と対人関係でのストレスの自覚の程度との関係 : 看護学生と他学科学生との比較、2005、川崎医療福祉学会誌

自分がすべて悪いから相手を責めることができず怒れない。というより、怒りが湧かない人が多いですね。

自分が相手を好きか嫌いか、快不快がわからないので、他人に対する嫌悪や怒りが感じられなくなっています。

依存せずにいられない共依存

機能不全家族で育ったことにより、自分に軸がなく自己肯定感が低い。

だから、依存せずに自分を保つことができません。

家族間で依存しあって生きてきたアダルトチルドレンは、家族以外の人間関係も依存することで成り立たせてしまうのです。

アダルト・チルドレンは人間関係において「共依存」と呼ばれる歪んだ関係に陥りやすいが,これは他者を幻想的に支配しようとする一方で,他者から必要とされる自分であろうと必死に努力する心理的特徴に由来する.

引用元:大学生の精神保健に関する研究 : 機能不全家族とアダルト・チルドレン、1998、川崎医療福祉学会誌

何かを決めるときにはいつも誰かに決めてもらう。

自分で決められない、決められないから自信が持てないという悪循環も生まれます。

自分と向き合えないから自分がわからない

嫌で仕方がないDVをする父親を「自分のためを思ってのしつけなんだ」と思い込んだり、アルコールに依存しているのに「これくらいは依存じゃない」と思い込んだり。

現実が辛くて仕方なくてどうしようもないとき、人はその出来事を無理やり正当化して見ないようにします。

人間はそうすることで辛い気持ちから逃れ自分の心を守っている。

これが「否認」と呼ばれるものです。

否認というのは多かれ少なかれ誰にでもあって当然なのですが、本来認めないといけないはずのことを否認し続けて行きていくとどこかでひずみが出てきます。

「自分の感情がわからない」「相手を怒らせてしまうのに原因がわからない」「疲れが溜まって限界に達しているのに気付けない」といったことが起こるのです。

アダルトチルドレンが完璧主義や環境への過剰適応をしやすいのは、自分の気持ちを否認しているから。

依存症は「否認の病」と呼ばれるほどなので言うまでもありませんが、アダルトチルドレンにおいても否認は問題となっています。

表面的な人間関係しか築けず問題を起こす

人との関係で自分を表現できないから関係が表面的になります。

家族間、友達間、夫婦間でも表面上は上手くいっているように見せかけることができても常に気が休まらない。

表面的な関係なのに見捨てられないかが不安で相手を試したり、関係性以上のものを求めたりでギクシャク。

自分の問題と向き合えないから、自覚できないところで相手を傷つけてしまうこともあります。

相手の反応が怖くて言いたいことが言えず、期待に応えようと無理をしてしまう。

本当は我慢していることでいっぱいなのに自覚できずに抱え込む。

いずれ抱えきれなくなって急に自分から離れる、もしくは問題を起こすことによって、人間関係を破綻させてしまうケースは多いです。

アダルトチルドレンが家族の中で果たす役割

アダルトチルドレンには、問題のある家庭環境を支え、自分自身が生き延びるためにそれぞれ担ってきた役割があります。

様々な類型があると言われていますが、代表的な6つを紹介します。

ヒーロー(英雄)

家族の期待を一身に背負い、生真面目に頑張る努力家タイプ。

完璧主義で異常なほど自分に厳しく、0か100かの極端な考え方をする。

正義感が強く正しいか間違っているかにこだわる傾向があり、正義を貫くため、悪を裁くためであればものすごい行動力を発揮することも。

無価値感が強いがために休めず、頑張りすぎてオーバーヒートしやすいのも特徴です。

スケープゴート(いけにえ)

暴行や万引き、薬物など反社会的な問題行動を起こして問題から注意をそらせようとするタイプ。

注目を集めるために自傷行為をおこなうこともある。

誰も自分のことをわかってくれない、居場所がないという絶望感を抱えています。

家族に「この子さえいなければ」という一種の希望を抱かせることによって家庭崩壊を防ぐ側面もある。

ロスト・ワン(いない子)

存在すら感じさせないほど手のかからない良い子。

無口で自分を出さないようにして、問題を起こさないために細心の注意を払っている。

目立たないことによって自分が傷付かないようにしています。

学校でも存在感が薄く、なるべく人とかかわらないよう殻に閉じこもる。

人と関係を深めていくことができないので孤独感を常に抱えて苦しんでいます。

プラケーター(慰め役)

親の愚痴を延々と聞き続けて慰めるタイプ。

自己犠牲をいとわないのは自分の感情を押し殺してマヒしているからです。

嫌なことを嫌と言えない、怒りを感じない。

蓄積された感情が爆発して人間関係で問題を起こしてしまうケースが多く見られます。

クラン(道化師)

わざとふざけて不安や恐怖をごまかすタイプ。

表面上はおどけているが、争いごとが起こるのを過度に恐れている。

気まずい雰囲気になると急に笑わせようとふざけたり、変なことを言って場の空気を変えています。

周りには好かれることが多く、親族や友達、学校や職場からの評判もいい。

しかし、常に空気を読んでいるがために気が休まらず人と会った後はどっと疲れる。

ご機嫌取り、相手の期待に応えようとする意識が強く、自分の意見を言わず抱え込む傾向が見られます。

イネイブラー(支え役)

子供らしさがなく大人びた責任感が強いタイプ。

困っている人を放っておけないため面倒見は良いが、依存されることに自分の価値を見出す。

共依存関係を形成しやすいがため、人とかかわるごとに頼られてどんどんしんどくなっていく。

大人になって実家を離れても親の面倒を見続けたり、真夜中でも友達の相談を何時間も聞き続けたり、トラブルの仲裁役を買って出たり…

一般的な感覚なら「そこまでしなくても」と思うところまでやってあげないと自分に価値が見いだせないのです。

参考記事:アダルトチルドレン6つの役割 | JUST | NPO法人 日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン

アダルトチルドレンが根底に抱える問題

アダルトチルドレンの人は「親に愛されなかった」と感じているため、愛されたい欲求を強く持っています。

愛されたいがために相手を中心に考えるから、自己犠牲をいとわず頑張りすぎて自分を省みない。

傷付くのが怖いから自分を出さない、壁を作って人とのかかわりを避ける。

誰かから愛情を得られたとしても信じきれず、見捨てられないかどうかの不安に悩み続けるのです。

また、愛されなかった実感から親を憎むのですが、親を許せない自分にも嫌気がさして二重の悩みを抱えます。

客観性を失っているがために、物事を主観的にしか見れず、人との関係を上手く築けていないケースがほとんどです。

子供への接し方も自分が愛情を受けた実感がないために、どうやって愛情を与えればいいかがわからず苦労します。

アダルトチルドレンを克服するために

愛情飢餓感が強いため「愛されたい」気持ちばかり目立つのですが、その裏側には愛されなかった悲しみがあります。

アダルトチルドレンの人は、この悲しみを感じないレベルまで無意識に抑え込んでいるケースがほとんどですので、自分で気付こうと頑張っても気付くことはできません。

日々、自分の感情に目を向ける習慣をつけながら、カウンセリングで自分のことを話していく中で少しずつ抑圧された悲しみに気付き、解放できるようになっていくのです。(この辺りがスピリチュアル系のセラピストが好むインナーチャイルドを癒すことに当たるのでしょう)

そして、少しずつ悲しみと向き合って自分の中で受け止められるように、自分の本音を優先する時間を延ばしながら時と共に心を成長させていきます。

成長の過程で自己肯定感が高まり、自分で自分を愛せるようになったときに、アダルトチルドレンは克服できたと言えるのです。

幼少期から培われた否認の習慣により自分と向き合いづらく、カウンセラーに依存しやすい傾向もありますが、適度な距離感を保ちながら改善できるようサポートしております。

アダルトチルドレンであるがゆえの生きづらさ、人間関係における問題で苦しんでおられるのであればご相談ください。

⇒アダルトチルドレンを克服するカウンセリング