嫌な気持ちが我慢の限界に達した女性

人に嫌われたくない、良い人に見られたいと思っている人は、衝突が起こらないように波風が立たないようにしています。

だから、自分が我慢して丸く収まるならそれでいいと思うのです。

  • 友達に合わせて自分が言いたいことを抑え込む
  • 面倒くさいことを押し付けられても嫌な顔せず引き受ける
  • 何時間も愚痴を頑張って聞き続ける
  • 気分を害するようなことを言われてもヘラヘラ笑ってごまかす

こういったことを繰り返しているので、自分にとって嫌なこともわからなくなっています。

言いたいことが言えないのも、面倒くさいことを押し付けられるのも、延々と愚痴ばかり聞かされるのも、気分を害するようなことを言われて反論できないのも、本当はすごく嫌なこと。

なのに嫌だと感じないのは無意識に感情を抑え込んだり誤魔化したりしているからにすぎません。

感情の抑圧が引き起こす問題

自覚できないまま我慢を繰り返す

わかりやすくするために一つのエピソードを紹介します。

とある雨の日に電車で座っていたとき、乗り込んできた女性が私の目の前に立ちました。

その女性は傘を腕に引っ掛けるようにして持っていたので、ちょうど私の足に傘が当たる形になったのです。

私は足に傘が当たるのは嫌だったので傘を振り払いました。

すると、その女性は申し訳なさそうに頭を下げながら傘を持ち替えました。

傘を振り払わなかったとしても相手が気付いたかもしれません。隣の人が気付いて言ってくれる可能性もあったでしょう。

でも、そうなる保証はありませんし、そうなるまでの間じっと嫌なことを耐え続けることになります。

「傘を振り払うくらいならできるよ」という人もいると思いますが、人とのかかわりで我慢していることは多いはずです。

嫌ないじり方をされているにもかかわらず、笑いながら我慢している人は少なくありません。

何か思い当たることはないでしょうか?

自分の感情がわからなくなる

感情を抑圧し続けていると自分の気持ちを偽るようになるので「自分は嫌だけど他の人は嫌じゃないかもしれない」とか「相手も悪気があってやっているわけじゃないんだし」と自分を無理やり納得させていく。

「自分が我慢する」という選択の繰り返しによって、嫌な気持ちを感じない状態にまでなってしまいます。

嫌だという感覚がマヒしているから嫌だと思わないし、とくにイライラすることもない。

周りの人から「嫌じゃないの?」「怒ったほうがいいよ」と言われて「嫌なことなんだ」と気付く状態。

愚痴を聞いてもなかなか共感できなくて合わせるだけになっている人は多いですね。

些細なことでも我慢を繰り返していると蓄積されていきます。

そして、本当に我慢しないといけない肝心なところで我慢できず、信用を失ってしまうことにもなりかねません。

普段怒らない人が急にキレて周りの人たちが離れて行くとか、絶対にミスが許されないときにミスして上司に見限られてしまうとか。

日々何かしらずっと我慢している状態なのに、さらに我慢しようとしたら…

パンクするのも当然ですよね。

相手を責められず自分を責めてばかり

感情を抑圧していると怒りも感じないため、相手を責めることができなくなります。

信号待ちをしていて後ろから追突され、100%追突してきた相手が悪いはずなのに、停車していた自分が悪いと思う人もいるくらいです。

幼少期から親に責任転嫁され「自分が悪いんだ」という罪悪感を植え付けられてきた人も多いですね。

何でも自分のせいにするから相手を責められない。

我慢しきれなくなって爆発することもありますが、相手を責めたとしても責めてしまった自分をまた責める。

結局は自分を責め続けることになるのです。

私も自分を責める傾向がありますので、自分のことを棚に上げて相手を責められる人の感覚はよくわかりません。

感情の抑圧を解いていくために

嫌な気持ちを大事にする

抑圧され過ぎて嫌な気持ちが感じられなくなると、人に対して嫌だと感じることもなくなります。

周りの人たちが「あの人と一緒に仕事するの嫌だ」と声を揃えて言うような人とでも平気でかかわれてしまう。

気分屋で自己中心的、自分のことをないがしろにするような相手を嫌だと感じる人は多いでしょう。

嫌だと感じるからなるべく避けようとするし、自分にとって大切な人との時間を優先します。

まず,自分がどのような人物に嫌悪を感じるのかを知ることによって,自分が何を大切にしているのか,自分が現段階でつきあえる人の範囲など,自分のことについてより深く気づく機会を得ることができるだろう。嫌悪感情がなければ,嫌いであることがわからず,それらを考える機会も得られないかもしれない。

引用元:組織や集団内における対人嫌悪「イヤとキライ」の心理学、2016、機関誌「心理学ワールド」74号

もし、相手のことが嫌だと気付けなかったとすれば、嫌な相手とかかわり続けることになり、どんどん我慢することが増えていく。

本当にかかわりたい人とかかわることができず、満たされない苦痛な人付き合いを耐え忍ぶだけの人生になってしまうのです。

抑え込んだ感情は無意識レベルだから気付けない

感情を抑圧する習慣を長く続けてきた人は、カウンセリングを受け続けてやっと本音に気付けるかどうかのレベルになっています。

日記を書き続けて自分の感情や本音に目を向ける習慣をつけたとしても、無意識に抑え込んだり見ないようにしているから自分だけではなかなか気付けないんですよね。

自分の本音に目を向けて、なるべく捨てずに残しておくようにしてください。

緊張して普通に話せなくなったり、急にキレてしまったりするのは、抑え込まれた本音の悲鳴みたいなものだと私は思っています。

感情を抑え込んで人に合わせてばかりの人生、その先にいったい何があるのでしょうか?

生きている実感のある生活を取り戻していくために、まず日々の中に埋もれた自分の嫌な気持ちを探そうとすることから始めていただければと思います。