相手の気持ちを考えることができない、相手の立場に立って考えることができない人は多いです。
- 不用意な一言で相手を怒らせてしまう
- おせっかいなことをして相手を困らせる
- 自分勝手な振る舞いをして周りに不快な思いをさせてしまう
人間関係で悩んでいる人は、他人とかかわるときものすごく気を遣っています。
家に帰ったら動けなくなってしまう人もいるくらいなので相当ですよね。
にもかかわらず、相手の気持ちを害するような行動を取ってしまうことがよくある。
気を遣っているのに相手の気持ちを考えられていないのです。
なぜ相手の気持ちを考えられなくなっているのでしょうか?
相手の気持ちを考えることができない原因
相手の気持ちではなく自分のことばかり考えている
人間関係で悩んでいる人は、一日のほとんどの時間を「自分が相手からどう思われているか」を考えることに費やしています。
そして、何か失敗したと思う出来事があれば終わった後でもクヨクヨ考えて悩み続ける。
それだけのことを考えながら相手の話に興味を持ったり、相手のためになる気遣いをしたり、そんな余裕があるはずないのです。
だから、相手の気持ちを考えられていない状態になってしまう。
「私は性格が悪いから人に興味が持てないし、ちゃんと相手の話も聞けないし薄情な人間なんです。」と言う人もいますが、本当にそうなのでしょうか?
私は違うと思います。
人に興味が持てないのは相手のことを考える余裕を失っているから。
相手の話をちゃんと聞けないのは余計なことを考えてしまっているから。
今は確かに自分のことばかり考えて変に気を遣っているだけかもしれませんが、気を遣うことができているのは間違いないのです。
そもそも気を遣えない無神経な人は、周りを悩ませることはあっても自分が悩むことはありませんからね。
相手のことを考える余裕ができてくれば自然と興味を持ちやすくなる。
余計なことを考える度合いが減ってくれば相手の話も入ってきやすくなります。
もともと性格が悪いとか薄情とかではなく、気遣いの方向が自分に向きすぎて周りの人のことまで考える余裕をなくしているだけなのです。
主観が強い人ほど相手の気持ちを考えることが難しい
以前参加した交流会で主催者の方を胴上げするというサプライズ企画がありました。
司会の方が「胴上げしたい方は前に出てきてください」とアナウンスされたので、胴上げしたい方が前に集まって行ったのです。
そのとき、私の隣にいた方が「参加しないんですか?」と聞いてこられた為、「いえ、まともに話したこともないので…」と答えたところ、「そんなこと気にしなくていいのに」と言われ「?」となりました。
たぶん、隣の方は私が遠慮していると勝手に勘違いしたのでしょう。
しかし、私は遠慮したわけではなく、単に胴上げしたいと思わなかっただけでした。
私の発言「いえ、まともに話したことがないので」に続くのは「胴上げしたいとまでは思いません」だったのですが、相手の方は「胴上げするのは気が引けます」だと思ったのでしょう。(たぶん)
こういった形で自分の思い込みで相手の話を解釈することは人は往々にしてあります。
そして、間違った解釈をされた相手は嫌な思いをします。
その場限りの方だったので訂正することもなかったですが、もし今後も関係を継続したい人なら訂正していたと思います。
こういった間違いはお節介な人や心理学をかじった人に見られる傾向が多いですが、誰にでもあり得ることであり、こういった間違った解釈をしないためにも相手の立場に立って考える力は必要だなと改めて感じました。
人は客観的に見ているつもりでも、結局は自分というフィルターを通じて見ているわけですから完全に客観的に見ることは不可能です。
ただ、主観的に見てしまう部分があることに気付き、少しずつでも客観的に見れるように視野を広げるための行動を繰り返せば変えることはできます。
「相手の考えていることはだいたいわかる」等と思っている人ほど、主観的に見ている傾向が強いので気をつけましょう。
相手の気持ちを考えられるようになるためのコツ
「主観」は「客観」の反対の対になる言葉です。
誰しも主観の中で生きているものなのですが、この「主観」が強ければ強いほど、相手の意図をゆがめて認識してしまいます。
そして、主観が強くなりすぎると妄想にまで発展してしまう。
相手がやっていないことまでやったと認識することだってありえます。
恐ろしいことです…
そうなってしまうと人間関係においても支障が出てくるので主観は強すぎない方がいい。
また、人に好かれやすくなる要素の一つである「相手の話を正確に素直に聞く」という観点からしても主観は強すぎない方がいいと言えます。
「相手がこういう話をしたからこう思ってるはずだ」
「相手がこういう態度だからこう思ってるに違いない」
とか、条件反射的に主観で決め付けてしまうのは当然のことですが、一度本当にそうなのか相手に聞いてみて下さい。
本人に聞きづらければ、誰かその相手を知っている人に聞いてみるでもかまいません。
きっと、自分の主観に気付かれることでしょう。
自分の主観の強さがどれくらいかを知るだけで、相手の話を正確に素直に聞くことができることに繋がっていきます。
どんなことであったとしても自分を知ることは本当に大切です。
営業の仕事をしている人ができるようになればお客さんから好かれて成績があがります。
夫婦間、家族間、友達間であれば好かれて関係が良くなります。
相手の話を正確に素直に聞けると「この人、私のこと分かってくれてるなぁ。」と思われて信頼してもらえるようになるからです。
これは対人関係を良くするためのコツでもありますが、自分の主観に気付いて客観視する力を養うことにもつながります。
客観視する力を養うことで自分の主観にとらわれずに物事に対して自由な捉え方ができるようにもなる。
主観を完全になくしてしまうと自分独自のアイディアや意見が出てこなるので良くないのですが、場面によって主観的に見たり客観的に見たり、その度合いも自由にコントロールできるようになりますので、深く悩んだりというマイナスの感情の波を小さくできるようにもなれます。
何事も変えるためにはまず「知る」ことからですね。
相手の気持ちを考えることと感じ取ることの違い
相手の気持ちを考えることは大事ですが、それ以上に大事なのが感じ取れるようになることです。
小さい頃から「相手の気持ちを考えなさい」と言われて育ってきた人が多いと思いますので、「相手の気持ちを感じ取る」という表現は聞きなれないのではないでしょうか?
考えるも感じ取るも同じように見えますが、相手の気持ちを考えること、感じ取ること。この両者には大きな違いがあります。
例えば、友達が怪我をして血を流している姿を見たときに「痛そう」と感じるのは相手の痛みを感じ取っていることになります。まるで自分が怪我したかのように相手の痛みを感じ取るから早く手当てしないととなるのです。
もし、相手の気持ちを考えただけの場合どうなるでしょう?
血を流している姿を見て「血が出るくらいだから痛いだろうな」と考えます。そして、血が出ているからまずは血を止めることが必要だと判断して手当てをする感じになりますかね。医者や看護師のような対応でしょうか。
どちらも最終的に手当てはしますし、考えるほうが適切な判断にはなりやすい傾向はあります。
ただ、その態度を見た相手はどう思うでしょうか?
自分の痛みを感じ取って心配そうに焦って手当てしてくれるのと、心配していないことはなくともどこか冷静に手当てされるのとでは受け取り方がまったく違ってきます。
つまり、人は相手の気持ちを感じ取っている人に対して、自分のことを本当に考えてくれているなと感じるのです。
相手の気持ちを考えることしかできないと、自分では必死に相手の気持ちを考えているつもりなのに相手から「自分の気持ちを考えてくれていない」と思われてしまいます。
相手の気持ちを感じられるようになるために
では、どうすれば相手の気持ちを感じ取れるようになるのでしょうか?
考えることは意識すればいくらでもできますが、感じることは意識しようとしてもどう意識していいかわかりませんよね。
相手の気持ちを感じるために必要なこと、それは自分の気持ちを感じ取ることなのです。
自分の気持ちを感じ取れない鈍感な人は相手の気持ちにも鈍感。逆に、自分の気持ちを感じ取れる敏感な人は相手の気持ちにも敏感。
人は自分が感じたことのある気持ちの中でしか相手の気持ちを感じることができませんので、自分の気持ちを感じ取れるようになればなるほど相手の気持ちを感じ取れるようになるのです。
自分の気持ちに敏感になるためには日々自分の気持ちに目を向けて「どういう気持ちだったのか?」「どう感じたのか?」を意識する習慣を付けていきます。
ただ、自分の気持ちに鈍感な人は無意識に自分の気持ちを見ないようにしてきた部分がありますので、カウンセリングで少しずつでも自分の気持ちを話していくことが必要です。
自分で話していくだけで気付けることもありますし、カウンセラーからの質問で気付くことも出てきます。
「本当はこんな気持ちだったんだ」という気付きが増えていくことで今まで見えなかった自分の気持ちが見えてきて、どんどん自分の気持ちを感じ取りやすくなり相手の気持ちも感じ取れるようになっていくのです。
自分の気持ちに敏感になって相手の気持ちを感じ取れるようになるのは簡単ではありません。
それでも、日々自分の気持ちと向き合うこと、相手の気持ちを感じ取ろうと意識し続けることを諦めず継続していけば少しずつ変えていくことはできます。
相互通行のコミュニケーションを目指す
相手の気持ちを感じ、考えてコミュニケーションを取るのは相互通行です。
上手くいっていない現状は一方通行になっているため、相互通行と言われてもなかなかイメージできないと思います。
以下の事例を参考に相互通行のコミュニケーションがどんな感じかイメージしてみてください。
Aさんが必要のない作業に苦しむ同僚(Bさん)を見かねて、「別にその作業はやらなくていいんじゃないか」と指摘するシチュエーションです。
一方通行のコミュニケーション
Aさん:「その作業大変じゃないですか?」
Bさん:「そうですね、でもやらないといけないんで…これがなかったら仕事だいぶ楽になるんですけどね」
Aさん:「じゃあ、やめたらいいんじゃないですか?実はすごく大変そうだなって思って見てたんですよ」
Bさん:「大変なんですけど、今までずっとやってきたことなんで簡単には変えれないんですよね」
Aさん:「Bさん、仕事で大切なことって何かわかります?」
Bさん:「えっ?う~ん…何でしょう…」
Aさん:「仕事っていうのはいかに効率よくするか、そして日々改善していくことが大切なんですよ。変えることを恐れていたら仕事なんてできないですよ」
Bさん:「でも、いきなり変えてミスが起こったらどうするんですか?」
Aさん:「変えたら絶対にミスが起こるって言えます?」
Bさん:「いえ、絶対ではないと思います」
Aさん:「とりあえずやってみましょうよ。やってみてどうかだと思うんです」
Bさん:「はぁ…」
相互通行のコミュニケーション
Aさん:「その作業大変じゃないですか?」
Bさん:「そうですね、でもやらないといけないんで…これがなかったら仕事だいぶ楽になるんですけどね」
Aさん:「そうですか…難しいですね。ちなみにこの作業って何のためにされてるんですか?」
Bさん:「う~ん、前任者からの引継ぎでこうするようにと言われたので何のためにって聞かれると困ります」
Aさん:「引継ぎで言われたからされているんですね。昔からこのやり方なんでしょうかね」
Bさん:「どうでしょう。その辺は全然わからないです」
Aさん:「ですよね…他の方ってこの作業のこと知ってるんですか?」
Bさん:「いえ、私しかやってないので誰も知らないです」
Aさん:「Cさん(上司)も知らないんですか?」
Bさん:「はい、細かい仕事の進め方は任されてますので」
Aさん:「それでもこの作業を続けてる意味って何かあるんでしょうかね」
Bさん:「いえ、別に意味はないんですけどね…」
Aさん:「そうですか…そういえば、私が前にいた職場でも同じようなケースがあって今までのやり方変えてミスが起こったりするのを気にされてたんですけど、そういうのもないですか?」
Bさん:「たしかにミスは恐いですね。それはあると思います」
Aさん:「そもそも、この作業って何かの役には立ってるんですかね?」
Bさん:「いえ、とくに何の役にも立ってないです…よく考えてみるとこれ意味ないですね(笑)」
Aさん:「ですね(笑)」
Bさん:「今まで考えずにやってましたけど、面倒くさいだけなのでやめましょうか」
Bさんになったつもりで考えていただくとわかっていただけると思いますが、一方通行の場合すごく嫌な気分になります。
一応、相手の意見を聞いてますし、その上で指摘をしているのですが、Bさんがなぜ必要のない作業を続けているのかを無視していることが問題なのです。
作業自体に意味はなくとも、本人は意味があると思ってやってますから。
そもそも、本人が意味ないと自覚してるならすでにやめてます。
やめられないのにも理由があるのです。その理由が何なのか、今回のケースで言うと「引き継がれた方法を変えてミスをするのが恐いと無意識に思っていたから」であり、その不安を本人が自覚して意味がないと気付けばやめようと勝手に考えるのです。
相手がなぜ今の方法をやってしまうのかを考えながら、相手が納得できるポイントを一緒に探そうとするのが相互通行のコミュニケーション。
一方通行になってしまうのは、相手を自分の思い通りにしたい欲求が強いから。
まず自分の中に思い通りにしたい欲求が強くあることを知り、なぜ強いのかを掘り下げて考えていくことが必要です。