対人恐怖症を克服していくにあたって脳の働きを考慮することは外せません。

なぜなら、対人恐怖症と不安や恐怖などの感情を司る扁桃体が密接にかかわっているからです。

扁桃体は動物脳と呼ばれる大脳辺縁系の一部であり、不安や恐怖を感じてその感覚を記憶するところです。

この扁桃体が不安や恐怖を感じることによって視床下部から自律神経の中枢機能がある脳幹に刺激を与えるため交感神経優位となる。

山でクマに遭遇したときのように「戦うか逃げるか」の状態となり、震え、強張り、発汗、呼吸の乱れといった身体症状が出てきます。

命を守るために思考を停止させ即座に動けるようにするわけです。

これが実際にクマに遭遇した場面であれば適切なのですが、人と話すときや会議などでなってしまうと頭が働かないから困ります。

目つきが鋭くなる、顔がこわばる、手が震える、頭が真っ白になる…

対人恐怖症の症状は扁桃体の過剰反応によるものなんですよね。

扁桃体が過剰反応する原理

原理を説明するにあたって脳の「海馬」「側頭葉」「前頭前野」というところも知っていただく必要があります。

海馬は扁桃体と同じ動物脳にあり、隣り合って密接に情報のやり取りをします。扁桃体の影響を受けて記憶を出し入れするところと認識しておいてください。

側頭葉は海馬からの情報を受け取って長期記憶として保存する役割をしています。

前頭前野は理性脳とも呼ばれ、扁桃体の働きを制御する力を持っているところです。扁桃体と海馬のやり取り等でビリーフ(信念)を形成、物事を抽象化、一般化することができます。

海馬が側頭葉に長期記憶として残すのは生命の危機につながることです。

しっかり記憶に残すことで危険を回避して、生命維持、種の保存をしてきました。

例えば、「高いところから落ちて大けがをした」といった失敗経験、「仲良かった友達が急に無視してきた」といった予測に反することが該当します。

仲良かった友達に無視されても死ぬわけではありませんが、予測に反することが起これば現状を維持できなくなるため危険だと判断するのです。

さらに「集団からの排除が生命の危機につながる」という原始時代から受け継がれる遺伝子レベルのビリーフも危険だという判断に影響します。

では、いじめによって対人恐怖が発症するメカニズムを例に海馬と側頭葉、前頭前野がどのように関連して扁桃体の過剰反応を生み出すかを見てみましょう。

いじめによる発症のメカニズム

安全なはずの学校でいじめを受けたことによって扁桃体に恐怖の感覚が記憶され、同じ目に遭わないために海馬がいじめにあった経験を側頭葉に長期記憶として保存。

学校に関する話を聞くだけで扁桃体が「危険だ!危険だ!」と海馬にいじめられたときの記憶を引き出すよう指示を出し、実際にいじめられていたときと同じかそれ以上のつらさを感じる。

学校に関する話を聞いたり思いだしたりする中で扁桃体と海馬のやり取りが繰り返され実際よりつらい記憶として側頭葉に刻まれていく。

※この段階で学校に関連することには扁桃体が過剰反応します。

「他人はみんな敵だ。自分を攻撃してくるから警戒しないといけない」というビリーフが前頭前野に形成される。

※前頭前野は一般化できるため「クラスメイト」を「他人」にまで広げてしまうのです。

他人に会うだけで扁桃体が過剰反応しだす。(対人恐怖症)

扁桃体の過剰反応を抑えるために有効なことは?

直接抑えるためには薬によってセロトニン等の脳内物質のバランスを整えることになります。薬を飲みたくない場合は、セロトニンの原料となるトリプトファンが含まれた食事と日光を浴びながらの散歩で代用も可能です。

ただ、薬で過剰反応を抑えるだけでは単なる対症療法にとどまってしまうため、実生活で人とかかわりながら前頭前野に形成されたビリーフを上書きしていくことも必要となります。

「他人はみんな敵だ」「自分の存在は他人に迷惑を掛ける」といったビリーフの影響で扁桃体が過剰反応していますからね。

あと、扁桃体に直接的にも間接的にも影響を与える方法としては瞑想が挙げられます。

瞑想によって頭に浮かんでくる不安や恐怖をラベリングしていくと、悟りを開いたかのように超然的な物の見方ができるようになり、結果として不安や恐怖に巻き込まれない状態になりますからね。

その他にも考えられることは多々ありますが、一番効果が高い方法として考えられるのは、カウンセリングを受けて「自分がどうしたいか」に従って行動をコントロールできる状態にすることです。

自分が自分の人生をコントロールできる、多少の苦難でも自分で乗り越えられると思える状態になれば、扁桃体が過剰に反応することはなくなり、不安や恐怖を感じづらくなります。

脳の働きから言えば扁桃体に前頭前野が介入して抑えてくれるという原理です。

さらに、自分の意志を尊重して生きていく中で自己実現への意識が高まるため、無意識に余計な不安や恐怖を意識する比率が下がって自然と考えなくなっていきます。

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