発達障害

対人恐怖症の人が「発達障害ではないか」と悩むことはよくあります。

莫大なストレスの影響でケアレスミスや物忘れが増える、「自分がどう見られているか」ばかり考えて目の前のことに集中できないといった問題が起こりやすいからです。

たいていは対人恐怖症による一時的な状態で発達障害には該当しません。

ただ、発達障害の二次障害で対人恐怖症を発症するケースも少なくないため、発達障害がどういうものかを知って該当するかどうかの参考にしていただければと思います。

発達障害とは?

発達障害は、脳の働きが特徴的であるために人とのかかわりや日常生活に問題を生じる生まれつきのもので、代表的なタイプにADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)の3つがあります。

発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます。
これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。同じ人に、いくつかのタイプの発達障害があることも珍しくなく、そのため、同じ障害がある人同士でもまったく似ていないように見えることがあります。個人差がとても大きいという点が、「発達障害」の特徴といえるかもしれません。

引用元:発達障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省

五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)と固有感覚(筋肉や関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の傾きやスピードを感じる感覚)をあわせた7つの感覚統合が上手くいっていないため、感覚過敏もしくは感覚鈍麻の状態になっています。

身体に入ってくる感覚を上手く整理できないことで混乱してしまい、力加減が調整できなくなったり、音やにおい、光、他人の態度など外からの刺激を適度に受け取れなかったりするのです。

ストレスがかかると胃腸の調子が悪くなりやすい、自覚がないまま限界を超えて疲れ果てる、二つ以上のことを同時進行できないといった傾向が見られます。

他の子と違う性質があることを理解してもらえず、親や先生に否定され自分の性質を抑圧してしまうことが対人恐怖症につながっているのではないかと感じています。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

落ち着きがない、集団行動で自分勝手な行動をとる、相手のことを考えず自分の欲求最優先の行動を起こす、目を離すとすぐにどこかに行ってしまう、忘れ物が多い、計画的に順序立てた行動ができない等といった症状を特徴とする発達障害。

発達年齢に見合わない多動‐衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。学童期の子どもには3〜7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。

引用元:発達障害|メンタルヘルス|厚生労働省

幼少期の話を聞いてみると、迷子になって親を困らせた経験が何度もあったり、小学校の通知表に先生からのコメントで「落ち着きがない」と書かれていたりするケースが多いです。

運動神経がよく行動力が高い性質を活かしつつ、忘れ物の防止や計画的な行動ができるような工夫をしていくことで社会に適応して能力を発揮しやすくなります。実際に営業で全国トップレベルの成績を収めた方もいました。

ASD(自閉症スペクトラム障害)

現在の国際的診断基準の診断カテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ群を指しており、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害が含まれます。症状の強さに従って、いくつかの診断名に分類されますが、本質的には同じ1つの障害単位だと考えられています(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。典型的には、相互的な対人関係の障害、コミュニケーションの障害、興味や行動の偏り(こだわり)の3つの特徴が現れます。
自閉症スペクトラム障害の人は、最近では約100人に1〜2人存在すると報告されています。男性は女性より数倍多く、一家族に何人か存在することもあります。

引用元:発達障害|メンタルヘルス|厚生労働省

コミュニケーションに支障をきたすのは想像力の欠如によるもの。

「自閉」という言葉通り、自分の世界に閉じこもって空想にふける想像力は高いのですが、他人や空間とのつながりをもとにした想像ができないということです。

裁縫や楽器の演奏等、手先の細かい動き(微細運動)やマット運動や鉄棒、跳び箱等の全身運動(粗大運動)にぎこちなさが見られます。

自閉症

知能の遅れ(IQ70未満)があり、言語発達の遅れ、対人コミュニケーションや社会性の障害、特徴的なこだわりの強さが見られる発達障害。

知能の遅れがない(IQ70以上)自閉症は高機能自閉症と呼ばれていました。

現在はアスペルガー症候群も含めて自閉症スペクトラム障害という診断名になっています。

アスペルガー症候群

言語や知能発達の遅れはないが、特徴的なこだわりの強さ、話の意図が汲めない、空気が読めない等があるため、社会人になってから周囲の人とのコミュニケーションに問題を生じて苦しむケースが多い発達障害。

広義の自閉症の一種とも言われ、最近になって自閉症スペクトラム障害と呼ばれるようになりました。

幼少期に見られる特徴としては、一人遊びを好む、同じ遊びを繰り返す、融通が利かない等があります。

過集中により一つのことを突き詰めてやることが成果につながったり、他人が言いづらいことを言って評価されることもしばしば。

医師、弁護士、大学教授等、専門的な職業に就くことで支障をきたさず生活できている人も少なくありません。

LD(学習障害)

知能の発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算、推論といった能力のいずれかを習得、使用することが著しく困難となる障害。

一つだけの場合もあれば複数の場合もあります。

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみがとりわけ難しい状態をいいます。有病率は、確認の方法にもよりますが2〜10%と見積もられており、読みの困難については、男性が女性より数倍多いと報告されています。

引用元:発達障害|メンタルヘルス|厚生労働省

個人の特徴として見れば、ある特定の分野が極端に苦手という感じです。

「ディマティーニ・メソッド」を体系化した人間行動学の世界的権威Dr.ジョン・ディマティーニもLDであったと言われています。

もしも発達障害だったとしたら治せるのか?

生まれながらのものであり一説には治せないと言われていますが、療育や薬、脳のトレーニングで治すことができるとも言われています。

実際、食生活の改善は効果的です。カフェインや刺激物、乳製品の摂取を控えたり、豆乳や発芽玄米、サプリでビタミンをしっかり摂るようにしたりするだけでも発達障害の性質が緩和されます。

ただ、「治る」という概念は風邪が治るのとは異なり、問題を起こさないレベルまで改善するというイメージです。

同じ発達障害でも育った環境で緩やかになっている人もいれば、より強くなっている人もいますので家庭環境も大きな影響があると感じています。

発達障害の子供に手を焼いた親が虐待をしてしまい、虐待を受けた子供の脳が委縮して悪化することは珍しくありませんからね。

過干渉によって言われるがまま動く習慣が形成され、考える、想像する、予測する等の能力が極端に低くなってしまうこともあります。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けて、対人関係における対処パターンを身に付けることは社会適応していくための一つの手段です。

成人を対象とした対人技能訓練や認知リハビリテーションを行っている施設は少ないですが、対人関係上の問題への対処方法を身につけるには有効です。地域の発達障害者支援センターが、自閉症スペクトラム障害者を対象にしたグループ活動を行っていることがあります。

引用元:発達障害|メンタルヘルス|厚生労働省

カウンセリングでは言語を用いた対話だけでなく、身体感覚へのアプローチによって感覚統合を促していくことが必要ではないかと思っています。

最終的には自分の性質だと認めて上手く付き合っていくことが必要

発達障害を改善できたとしてもこだわりの強さや欲求の赴くままに行動しやすい傾向は残りますが、自分の個性、性格のようなものだと認識して上手く付き合っていく必要があると感じています。

自分は欲求の赴くままに動きやすいんだと認識していれば、意識して相手の立場になろうと考えるでしょう。

順序だてて物事を進めるのが難しいんだと認識していれば、やることを紙に書き出す等の工夫をするでしょう。

周りの人にもそういった自分の特性を伝えていくことも大切です。

また、幼児期から成人期を通して、身近にいる親や配偶者が本人の特性を理解していることがとても重要です。それによって本人が安心するだけでなく、親から教師、上司などに対し特性を伝えることによって、本人にふさわしい学校や職場環境が整い、支援の輪が広がっていきます。

引用元:発達障害|メンタルヘルス|厚生労働省

ただ、仕事においてはできない部分の反面、できる面がないと単に仕事ができない人間と見られて立場がなくなってしまう危険性がありますので、欠点を補える工夫や脳を鍛えるトレーニングを習慣化すること、自分の特性を活かしたスキルを磨くことは必要だと思います。

私自身、自閉症スペクトラムの傾向があったと診断されているため、実情に基づいたアドバイスが可能です。

「もしかして発達障害では?」と心配になっている方は一度ご相談ください。

発達障害を「個性」と捉えることについて

この記事を書いた当時、自分が発達障害に当てはまると思いつつも、どこか向き合えていないところがありました。

表面的な特徴だけ見てちゃんと実態を見ようとしなかったのです。

現在は自閉症の診断検査ADOS-2の結果が「自閉症スペクトラムの特性は目立たない」に該当していますが、もともと自閉症スペクトラムの傾向があったと診断されています。

今は発達障害を「個性」だと言うことにものすごく抵抗を感じます。個性ではなくやはり「障害」という認識です。

ひもが上手く結べない、家庭科の裁縫が上手くできない、リコーダーが上手く吹けない、初めての文章がなかなか頭に入らず何度も読み返さないといけない、ドリブルができない、鉄棒や跳び箱が絶望的にできない、同じ動きをしなさいと言われてもよくわからない、些細な音やにおいにこだわって過剰反応する、後先考えず大胆な行動をしてしまう…

発達障害でない人たちが何の苦労もなくできることが発達障害の人にはできない。理解されないことで努力不足だと誤解され責められる。

このつらさを「個性」で片付けることはできないと思うのです。

上記に挙げた例は発達障害の診断に出てくる項目であり、そして、私自身が抱えている問題でもあります。

発達障害は3歳健診で見つかりやすいと言われますが、親が認めないまま集団生活を送らせているケースは少なくありません。

こういった問題を抱えながら集団生活を送ることがどれだけ困難か、子供の立場で想像すればわかるはずです。

なるべく早い段階で発達障害に気付いていただくことを願うと共に、発達障害を抱えながら少しでも生活をしやすくするために何ができるのかをもっと考えていかなければと思っています。