職場では多くのサラリーマン、OLが経済的な理由等から会社を辞めることができず慢性的なストレスを抱えています。

(出典:厚生労働省 平成24年 労働者健康状況調査の概況

上記の統計に書かれている通り、働く人の60%以上が強い不安、悩み、ストレスを抱え、男女共に「職場の人間関係の問題」が一番の原因となっていたことがわかります。

労働者健康状況調査は平成24年をもって廃止されたため、現在は変わっているのかもしれません。

それでも60%以上を占めていたストレス要因がなくなったということはないでしょう。

職場の人間関係を悪化させた背景

バブルが崩壊したことにより、雇用安定の象徴であった終身雇用、年功序列制度が崩れ去り、コスト削減を目的とした契約社員、派遣社員の積極採用、実力主義の年棒制導入など、雇用の不安定化が急激に加速しました。

正社員として就職できたとしても低収入の上に長時間労働で残業カットという現実。

時給換算のアルバイトや派遣社員よりも給料が少ないというケースもあり、さらには生活保護を受けている人よりも生活水準が低いケースまであります。

また、不況の影響で業績の悪い企業も増えており、ボーナスカットやリストラなど不安は尽きない状態の中、日々の仕事に追われているという状態です。

こういった雇用面での大きな変化が働く人の心の余裕を奪い、そのしわ寄せが人間関係の悪化につながっていると考えられます。

解消しても解消してもストレスが沸いてくる

ストレスを解消しようと休日に出かけて気分転換をしてみたり、友達と飲みに行って愚痴を言いまくったり、ジムに通って汗を流してみたり、カラオケで熱唱してみたり、好きなDVDを観続けたり…

いろんなことをして解消しているはずなのに、なぜかずっとストレスは溜まったまま。

いくら頑張って解消しても、人間関係などストレスを生み出す根本的な原因がある職場にいる時間が長いわけですから、結局はまた多くのストレスを抱え込んで苦しんでしまうのです。

さらに、その状態が長期間続くと、自律神経の乱れによる胃炎や胃潰瘍、免疫力の低下、うつ病やパニック障害などの精神病、心臓病や生活習慣病になる危険性がどんどん高まってしまいます。

ストレスの危険性

「ストレスは万病の元」と言われるとおり、様々な病気につながる危険性があり、最近では心臓病の発病リスクが高まることまで指摘されています。

ストレスによって、交感神経の活性化による自律神経の乱れ、免疫力の低下、ホルモン異常などが起こるため、以下のような症状や病気を発症しやすくなります。

  • 肩こり、首こり、頭痛、腰痛、倦怠感、目のかすみ
  • 便秘や下痢、胃痛、胸焼け、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎
  • 過緊張、不眠、イライラ、抑うつ、生理不順
  • 体重増または減、肌荒れや蕁麻疹、円形脱毛症
  • 生活習慣病、心臓病
  • うつ病、パニック障害、ノイローゼ、心身症

ストレスを原因とする病気は身体の限界を超えて初めて発症するものであるため、日々のストレスを耐え続けた結果、ある日突然大きな病気にかかってしまうという怖さがあります。

ですので、ストレスを感じるなと思ったり、肩こりや胃痛などの症状がある場合には、早めにストレスを解消して病気にかかってしまう危険性を防いでおくことが必要です。

以上のように過度のストレスは危険なのですが、軽度のストレスは程よい緊張感や集中力を生み出して能力を高めてくれる効果があるため、ストレスを悪者扱いして完全に排除しようとする必要はありません。

ストレスが引き起こす3つの異常

脳内の異常

まず、扁桃体が活発に働いてしまうという点があります。

扁桃体は不安や恐怖をコントロールしているところなので、活発になると不安や恐怖を感じやすくなってしまいます。

次に、前頭前野が弱ってしまうという点が挙げられます。

前頭前野は自制心や共感力、集中力、判断力をコントロールしているところになりますから、簡単なミスを連発したり、頭がボーっとしたり、思考停止で頭が真っ白になりやすくなるといった問題が起こります。

前頭前野は扁桃体に伝わる不安や恐怖の刺激を緩和する役割も担っているため、余計に不安や恐怖を感じやすくなってしまうのです。

さらに、ストレスによって副腎から過剰分泌されるコルチゾールが記憶を司る海馬にダメージを与えて記憶力まで低下させます。対人恐怖で悩んでいる人の記憶力が低下するのはこれが理由です。

対人恐怖症は他人に合わせる傾向が強いことから他者依存症とも言えるのですが、以上のような脳内の異常によってアルコールや買い物、ギャンブル、インターネット、ゲーム等の依存症になってしまうケースもよく見受けられます。

心身の異常

身体の震えが止まらなくなる、胃や腸が痛くなる、動悸がする、吐き気がする、気分の落ち込みが激しくなる、楽しい嬉しいという感情を感じなくなる、眠れなくなる、睡眠が浅くなる、やる気が起きない、アトピーが酷くなる、肩や首の凝りが酷くなって頭痛がする、免疫力が低下して風邪を引きやすくなる等、心と身体に異常が起こります。

これらの異常はストレスによって交感神経と副交感神経からなる自律神経が乱れてしまうことが大きな原因となっています。

交感神経が働いているときは行動しやすい緊張状態となります。対して、副交感神経が働いているときはリラックスしやすい緩和状態となります。

ストレスが過剰にかかると交感神経が活発に働くようになるために、リラックスできず緊張したままの状態が続いて異常を起こしてしまうのです。

この状態を我慢し続けていると、うつ病やパニック障害等になってしまいます。

人間関係の異常

消えることなく溜め込まれたストレスは知らず知らずのうちに表面に出てきます。

例えば、キツい声になったり、鬼の形相になったり、些細なことですぐにイライラして態度を変えたりと、自分でも気付かないうちに他人から見たら近寄りがたい恐い人に豹変してしまうのです。

攻撃的な雰囲気が出ていると、相手も攻撃的な状態にしてしまいやすいため、なぜか嫌がらせを受けるようになったり、いじめられるようになったりします。

その結果、さらに相手に対して敵意を抱いて攻撃的になって、といった感じでどんどん人間関係が悪化していくのです。

ストレスを抱え過ぎるとうつ状態になることも

人間関係で悩む人がうつ状態になっているケースは珍しくありません。

  • 気持ちが落ち込んで何もやる気が出ない
  • マイナス思考に拍車がかかってとめられなくなる
  • 仕事で普段しないような簡単なミスをしてしまう
  • イライラや焦りの気持ちが強くなる
  • 死にたいと思ってしまう
  • 身体が重たくて気だるい感じが抜けない

「気分が沈んで、何をするのにも元気がない状態」は、うつ状態といわれます。

引用元:憂鬱(ゆううつ)~気分が沈んで、何をするのにも元気がない … – 厚生労働省

カウンセリングをおこなっていても対人恐怖症で悩んでいるほとんどの人がうつ状態にあると感じています。

対人恐怖症とうつ病は密接な関係があると毎日新聞の連載記事で掲載されたこともありました。

他人の評価を過度に気遣い、否定されたり、嫌われたり、恥をかかされることを心配します。このような状態が高じ、あらゆることを避けて外出しなくなり、家に引きこもる場合も少なくありません。

「引きこもり」が持続すると、抑うつ気分、意欲の低下、興味の喪失などの症状を生じ、うつ病を発症しやすくなります。一方、うつ病になるとうつ症状のため、他人と会うのが面倒になり、これを避けるため、対人恐怖症の状態になります。このように、対人恐怖症とうつ病は密接に関連しています。

引用元:毎日新聞 2007年7月28日 大阪朝刊 第17回 対人恐怖症と密接関連(大阪市立大大学院医学研究科准教授・神経精神医学、永田利彦)

記載されている通り、ひきこもりによってうつ病になりやすいのもありますが、外に出て人とかかわっている人は大丈夫という話ではありません。

人間関係で抱える莫大なストレスがうつ状態を作り出す

うつ状態は日々蓄積されたストレスによって引き起こされる症状です。

人間関係に悩みながら日々を過ごしている人は、そういったことを考えない人とは比べ物にならないほどの神経を遣い、何気ないことにまでストレスを感じています。

働いていたり子育てをしたりしている以上、人とかかわる機会を避けることはできず、人と話せないことから人とのコミュニケーションの中でストレス発散することもできません。

ストレスは溜まる一方です。

その溜まり続けた莫大なストレスによって理性を司る脳の前頭前野の働きが弱まり、逆に本能的な欲求を司る大脳辺縁系の働きが強まってしまう。

気分の落ち込みや衝動的な希死年慮だけでなく、不眠や気だるさなどの身体症状まで生み出してしまうというのがうつ状態なのです。

もしも、うつ状態を我慢し続けたとしたら…

うつ状態を我慢してそのまま放置してしまうと、過度のストレスによって脳にある感情を司る扁桃体と記憶を司る海馬に深い傷を負わせることになってしまいます。

この傷によって朝起きようとしても布団から出られない、リモコンを取ることすら困難なほどになるのがうつ病です。

うつ病になってしまうと薬を飲みながら休養して、脳の傷が回復してきた頃からカウンセリングを受けていくことになりますので、しんどい思いをするだけでなく克服するまでに多くの時間とお金を費やすことになってしまいます。

うつ状態だと気付かれたのであれば、できるだけ早い段階から改善に向けた取り組みをしていくようにしましょう。

うつ状態にはストレス対策と生活習慣の見直しが有効

うつ状態を改善するためにまず大切なポイントは、ストレスのはけ口を作ることです。

以下のような人間の本能的な行動に近いことをやるとストレス発散しやすいので参考にしてみてください。

  • ガムを噛み続ける(またはスルメなどの歯ごたえがある食べ物を噛む)
  • 物を殴る、投げる、破る
  • ストレッチをする
  • 感動するドラマや映画を観て涙を流す
  • カラオケで歌う(または大声で叫ぶ)
  • 話せる人がいるなら話す、話せないなら書く等で溜め込んだ感情を吐き出す
  • シャワーを浴びているときに愚痴を言って一緒に流す
  • 小さなことでいいからやりたいことを探してやってみる

しかし、これだけでは一時しのぎにしかならず再発を繰り返してしまうので、同時進行でストレスを生み出す習慣の改善も必要となります。

  • 睡眠時間を長くする
  • 糖分の摂取を控えるようにする
  • テレビやインターネット、動画を観続けるのをやめる
  • 散歩をする等身体を動かす時間を作っていく
  • 太陽の光を浴びる
  • 呼吸法や自律訓練法等によってリラックスできる時間を増やす
  • 人と楽しく会話する機会を作っていく
  • 人とのかかわりの中で言いたいことが言える状態になる

「人とかかわる場面でのストレス」は莫大なものですから、うつ状態を本質的に改善するためには人間関係の悩みを解消することが必要です。

うつ状態で苦しむほどの状態であれば耐え続けるのではなく、できるだけ早い段階でご相談ください。