対人恐怖症のご相談をいただく中で、常に何かしていないと不安で仕方なくなるという悩みによく直面します。

  • 家で一人の時間をゆっくり過ごすことができない
  • お風呂にゆっくりつかることができない
  • わざわざやらなくていいことまでやって忙しくしてしまう

という状態になっているため、なかなか自分を見つめなおす時間が作れない。人によってはカウンセリングに来る時間すら作れないとおっしゃる方もおられます。

何かに追われているような焦燥感、義務感ばかりで自分のために時間を費やすことができない状態。

「病的な不安」に該当するものです。

「病的な不安」は「正常な不安」と違って、理由がないのに生じる、あってもそれと不釣り合いに強い、原因がなくなってもいつまでも続く、などの特徴があります。「正常な不安」が危険に備え、問題解決へ向かって行動を起こす原動力になるといった、人間にとって必要な側面をもっているのに対し、「病的な不安」は何らかの精神的・身体的な疾患の徴候である可能性があります。

引用元:不安・緊張 ~気持ちが落ち着かない・どきどきしてこころ細い~|こんな症状ありませんか?|みんなのメンタルヘルス総合サイト

この度合いが強い人は、回遊魚(マグロなど)のように「動いていないと死んでしまう」という感覚に近いかもしれません。

それほどにゆっくり時間を過ごすことによって不安を感じてしまうことが怖いのです。

根っこにある存在不安

その不安の根源は「人からどう思われるか、どう見られるか」といった対人面ではなく、自分という存在に対する不安(存在不安)にあります。

自分が存在することへの不安だから、人と接しない場面でも常に不安が消えない。

世間一般から見ればある程度満たされた環境であったとしても、心の隅にずっと消えない不安があり続ける感じですね。

不安をごまかすために自分は忙しいんだという錯覚を抱き、相手に認められるように合わせてばかり、他人に自分の価値観を押し付けて応えてくれないとイラついたり、相手を見下して自分に存在価値を感じようとすることもあります。

でも、何をやっても周りから認められても自分で自分という存在を認められないから苦しみは消えないのです。

存在不安は親子関係によって形成される

人間は自分という存在をありのまま受け入れてもらった実感があれば存在不安を抱えることはありません。

しかし、親がありのままの自分を受け入れてくれなかったと感じたとすれば、「ありのままの自分が受け入れられないんじゃないか」という不安を抱えたまま成長してしまうことになります。

よくあるのは「いい子」の自分は受け入れてもらえるけど、「わがまま」な自分は受け入れてもらえないとかですね。

暴力による虐待、人格否定やからかいによる言葉の虐待によっても「受け入れられなかった」という感覚は生まれやすいです。

「受け入れられないんじゃないか」という不安は他人に対しても抱きますので、他人にありのままの自分を見せられない、本当の自分を隠して接することになります。

本当の自分を隠した状態では人と深くつながることができないので、人を信頼することもできず、相手からも信頼されることがなくなってしまう。

なぜ人との関係が上手くいかないのかと思いながらも、存在不安を抱えたまま本当の自分を隠して表面上のコミュニケーションを繰り返すのです。

役に立たない自分は価値がない

自分自身の存在に不安を抱え、自分が存在するだけでいいと思えない。

ただ存在するだけで自分に価値があるなんて到底思えません。

だから、誰かの役に立つことによって価値を見出そうとする。

どれだけしんどくても家事を休まず徹底的にやったり、他人から頼まれたことは全部引き受けたり、子供のためにと自分の時間を持たなくなったり…

しんどいし面倒くさいしと思う気持ちがありながらも、それを大きく上回る嬉しさがあります。

自分は役に立てている、必要とされている、自分には価値がある。

単に不安を紛らわせるためだけでなく、自分に価値を見出そうとするから動き続けざるをえないのです。

見捨てられないかどうか不安で仕方ない

自分に価値がないと思っているから、相手に見捨てられるかもという不安が強烈にあります。

価値がない自分と一緒にいてくれる相手が、いずれ自分に嫌気がさして去っていくのではないか。

友達も恋人も夫も妻も…

頭ではそんなことはないだろうと思いつつも不安が消えることはありません。

だから、見捨てられないようにと相手のために必死になる。今以上に自分のダメなところは見せないようにする。

自分に価値があると思えている人は、親しくなった人が離れてもまた別の人と親しくなればいいと思えます。

しかし、価値がないと思っていると離れたらもう他に自分と付き合ってくれる人がいるとは思えない。

相手にしがみつく形になって、それが逆に相手にとっては負担になり、関係を破綻させてしまうケースもあります。

また、DVをするような支配的なパートナーと一緒になってしまい、離れたいのに離れられない共依存状態になることも多いです。

どうすれば常に動いていないといけない状態をやめられるのか

根っこにある存在不安を解消することです。

存在不安がある限り、いつまで経っても動き続けて不安から逃げ惑う生活を繰り返すことになります。

存在不安はありのままの自分を受け入れてもらうことによって解消できます。

本来であれば親に受け入れてもらえるのがいいですが、自分に存在不安を抱えさせた親にそれを求めるのは困難です。

じゃあ、誰に受け入れてもらえばいいのか?夫(妻)?彼氏(彼女)?友達?職場の同僚?知り合い?先輩?上司?

と外にばかり目を向けてしまいがちですが、一人忘れています。

自分です。

他人に求めてばかりでは他人の反応に依存して失う不安が生まれますので、自分を自分に受け入れてもらえるようにすることが必要なのです。

他人に受け入れてもらうことも大切ですがそれは次のステップ。

まずは自分が自分を受け入れ、たとえ一人でもある程度大丈夫な状態を少しずつ作っていきましょう。

カウンセリングを受けながら自分で自分の存在を受け入れていくことを少しずつ繰り返すことによって存在不安は解消していくことができます。