対人恐怖症とよく間違えられる病気の一つに統合失調症があります。

統合失調症の幻覚(幻聴)、妄想が対人恐怖症の自己関係づけが似通っていますからね。

「実は、社会不安障害と、もっとも識別しなければいけない疾患は、妄想型障害であり、統合失調症なのです。社会不安障害と統合失調症は勘違いされやすく、見た目で判断するのは難しい。もちろん診たところ、本当に統合失調症の方も結構いらっしゃいますが、全国には誤診されている人も、かなりいるのではないでしょうか」(渡部理事長)

引用元:「引っ込み思案の目立ちたがり屋」が陥りやすい“社会不安障害”の苦しみ、2010、ダイヤモンド・オンライン

代表的な症状でいうと「悪口を言われているかもしれない」「外に出たら周りの人に監視されているような感覚になる」等。自分のにおい、視線で迷惑をかけているから周りの人たちが反応すると言う人もいます。

近所の人たち全員が家の前を通るたびに悪口を言ってくると話していた人は統合失調症と診断されていました。

統合失調症と対人恐怖症はどこが違うのでしょうか?

まずは統合失調症のことをお伝えした上で、対人恐怖症との違いを説明していきます。

統合失調症とは?

統合失調症は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患です。それに伴って、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で振り返って考えることが難しくなりやすい(病識の障害)、という特徴を併せもっています。

多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすく、その間に幻覚や妄想が強くなる急性期が出現します。

新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになりました(WHO 2001)。

以前は「精神分裂病」が正式の病名でしたが、「統合失調症」へと名称変更されました。

引用元:統合失調症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省

引用した厚生労働省のサイトには原因や症状、治療法までかなり詳しく載っていました。統合失調症についてもっと調べたい方は参考にしてみてください。

入院患者数は減少傾向ではあるものの、精神科入院患者全体(平成29年…27.8万人)の半数以上を占め続けています。

統合失調症による入院患者数は徐々に減少傾向にあり、平成14年から平成29年の間に約5万人減少して、15.1万人となっています。

引用元:精神疾患のデータ|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省

周囲の人に危害を及ぼしたり、親が手に負えない状態になれば、入院措置を取らざるをえませんからね。

父方の祖母が統合失調症になって大変だった話を聞いていますので、私個人としても無縁な精神病ではありません。「殺される」とか「盗聴されている」とか言っていたそうで、明らかに幻覚や妄想が出ていました。

幻覚や妄想から見た統合失調症と対人恐怖症の違い

統合失調症と対人恐怖症の違いを判別する上で指標となるのは幻覚や妄想の度合いです。

実際に病院での診断も幻覚、妄想などの症状をもとに下されています。

能力の低下は多くの場合、うつ病や引きこもり、適応障害などに見られるものと区別しにくいことがあり、確定診断は幻覚、妄想などの症状によって下される。

引用元:統合失調症とは何か|公益社団法人 日本精神神経学会

対人恐怖症にも幻覚や妄想のようなところはありますが、「道ゆく人が自分のことを見てくるように感じる」「同僚が自分の悪口を言っていると思う」といった感じの比較的現実的なもので、基本的に会話が支離滅裂になることはありません。

ただ、人によってはそれを確信的に思い込む場合もあって、「絶対に悪口を言っているに違いない」「同僚はみんな私のことを嫌ってるに違いない」「私だけを仲間外れにしようとみんなが結託してるに違いない」と言われるケースもあります。

こうなってくると幻聴じゃないか、妄想じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、幻聴や妄想というのは現実から外れたことです。

統合失調症の場合だと「近所の人たちが共謀して家に盗聴器を仕掛けている」「全国どこへ行っても自分のことを知っている人がいて共通の悪口を言ってくる」といった内容になります。

話が現実的であるかどうか、明らかにありえない話をしていれば統合失調症に当てはまるでしょう。

厚生労働省のサイトに具体例がありましたので参考にしてください。

24歳、女性

勤務2年目の公務員、人事異動で4月に人がかわり、職場が落ち着きを取り戻した6月頃から勤務態度に落ち着きがなくなり、OA機器と自分の席を行きつ戻りつしたり、引き出しを激しく開け閉めして大きな音を立てるようなことが目立つようになってきました。仕事の面でも、単純な確認行為を怠り間違った支出行為を行ったり、計算ミスも増えてきました。課長が本人に確認したところ、「この職場は、とても私語が多く、嫌がらせをする、自分は誰かに監視されているようだ、自分が考えた内容が職場に漏れている、職場は仕事をするところで、冗談や私生活のことを話すのは不謹慎だ」と主張して譲らず、意味不明なことを言ったり、目が離せなくなりました。

参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト[事例1-6] 幻聴、妄想などによる意味不明な言動をした女性社員の統合失調症の事例

「自分が話した内容」ではなく「自分が考えた内容」が職場に漏れるというのは現実的に考えてありえないですよね。

統合失調症になると情報の統合に問題が生じるため、「自分がおかしな行動を取った → 周りに警戒される」と結びつけることができず、被害妄想を悪化させていく側面もあるのではと思っています。

統合失調症でなくとも被害妄想がひどくなっている場合は早めの対処が必要

対人恐怖症はマイナス思考で思い込みを勝手に強めてしまう傾向があります。

挨拶を返してもらえなかった

嫌われてるんじゃないか

嫌われてるならあまり話さないようにしよう

何か最近よそよそしくなった気がする

自分に接するときと他の人に接するときの態度が違う

やっぱり嫌われてたんだ

このような流れで、自分から接しづらくしておいて、相手が嫌っていると勝手に決めつけるケースも多々あります。

相手からすればたまたま気付かなかっただけなのに「嫌われた」となったら大変ですよね。

被害妄想が強くなっている方は、統合失調症かどうかは別にしても人間関係を破綻させてしまう危険性が高いので、なるべく早くご相談いただければと思っております。

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