親の過干渉に苦しむ女の子

高校生、大学生の方のカウンセリングと依存症で悩む親御さんからご相談いただく機会が多く、その中で直面する親子関係の問題を肌で感じてきました。

母親が子供に過度に干渉することによって、子供が対人恐怖症や依存症になるケースは非常に多いです。

「あれしなさい」「これしなさい」「あれはできているの?」「準備したの?」「大丈夫?」と干渉をされ続けて育つと、自分で考えることがなくなってしまう。

そして、『自分』というものがよくわからないまま育ち、人間関係などの問題に直面したときに何かしらの症状が表面化するのです。

私自身、母親に「ちゃんとお礼言わなあかんで」「ありがとう言った?」「あいさつした?」等とよく干渉されていたため、実家にいた頃は自発的に感謝したり挨拶をしたいと思うことがありませんでした。

親子関係の問題として、無関心、過干渉、過保護などが挙げられますが、とくに過干渉が問題になりやすいと思っています。

過干渉とは?

過干渉は精神的な虐待の一種であり、親が子供の気持ちを無視して思い通りにコントロールするものです。

  • 頼まれたわけでもないのに朝になったら子供を起こす
  • 学校に行く支度を代わりにしてあげる
  • 挨拶やお礼、場面に応じた態度を指示してさせる
  • 先生が子供に質問しているのに代わりに親が話し出す

こういったわかりやすい過干渉もあれば、「これがいいんじゃない?」と誘導したり、子供が選びそうなものを先に選んで与えるといった間接的な過干渉もあります。

ひどいケースでは、子供の宿題を代わりに解いて答えを書かせる、図工や家庭科の制作を代わりにやる親もいたり…

子供がして欲しいかどうかではなく、親がしてあげたいかどうか。

「子供のために」と言いながら一方的に自分の思いを押し付け、子供の主体性や感情を失わせていくのが過干渉です。

過干渉かどうかをチェックする10項目

親自身が過干渉だと自覚するのは難しいのですが、子供の異変によって間接的に気付くことはできるのではないかと思っています。

  1. 自分で決められず何かにつけて確認してくる
  2. 自分の意見を言わず何を考えているかよくわからない
  3. 同年代の子と比べて幼い印象を受ける
  4. 親に反抗することが少なく従うのが当然という感じになっている
  5. インターネットの動画を観続けて注意してもやめない
  6. たまにキレて物を壊したりすることがある
  7. 学校でのコミュニケーションが上手くとれず登校拒否をする
  8. 嫌なこと、苦手なことにはチャレンジせず逃げる
  9. 対人恐怖症かもしれないと言い出す
  10. 性犯罪等、性的な問題行動を起こす

こういった傾向がある場合、子供への接し方が過干渉になっている可能性は高いです。

どこまでが過干渉でどこまでが過干渉ではないかの判断がつかない、自分ではどうかわからないのであればご相談ください。

過干渉は子供に無自覚の問題を抱えさせる

傷付けられた自尊心

過干渉によって自尊心が傷付けられるため、気付かないうちに以下のような問題を抱えてしまいます。

  • わかってもらえないと思うから自分の本音(感情)を押し殺す
  • 自分の意志を伝えることに罪悪感を抱いて自由に表現できなくなる
  • 価値観が育たず自分という存在が確立されない(反抗期がなくなる)
  • 自分の気持ちが理解してもらえないことへの悲しみが募り、諦めが習慣化する
  • 甘えによって自己中心的な傾向が強くなり相手の立場に立つことができなくなる
  • 何をやっても続かなくてすぐ辞めてしまう

母親に挨拶しなさいと言われて「そんなこと言われなくてもわかってるよ」と思いながら挨拶する状態ならまだいいですが、何も思わずに言われた通り挨拶をするのは末期状態だと言えます。

何も思わないのは、自尊心が傷つけられ自分の感情や本音がわからない状態になっている証拠だからです。

精神的に自立できない依存体質

親に「挨拶しなさい」「お礼言いなさい」「ちゃんと謝りなさい」等と言われ続けると、子供はなぜするのかを考えないままとにかく言われたことをやるようになります。

感謝の気持ちが出てくるからお礼を言いたくなる、自分が悪いことをしたと思うから謝るといった行動の元となる自分の感情に目を向けないまま育ってしまうため、自分の感情がよくわからない状態になってしまう。

その結果、人間が生きていく上で指針となる「自分がどうしたいか」が曖昧になってしまい、自発的に考えて行動することができなくなるのです。

子供も年齢とともに成長していくわけですから、本来なら親が年相応の接し方をしてくれて自分の成長を実感できます。

しかし、過干渉が続くといつまでも子ども扱いされているように感じて成長が妨げられてしまいます。

愛された実感がない愛情飢餓

愛されたという実感は自分が求めたことに応じてもらったときに出るのですが、求めていない状態であるにもかかわらず先回りされると愛された実感が得られないままになります。

親からすれば愛情を注いだつもりが子供は愛された実感がないという状態になるのです。

子供からすれば親子関係は良好なはずなのに愛された感覚がないという奇妙な感じになってしまう。

ありのままの自分が愛されるという実感を親からもらえなかった子供は「ありのままの自分は愛されないのではないか」という自分の存在に対する不安を抱えてしまうために人にありのままの自分を見せられなくなります。

過干渉を受け続けてきた子供が自己主張を苦手とするのは、自分を出すことに対する不安が強いからです。

過干渉な親に育てられた子供によく見られる症状

依存症

過干渉を繰り返された子供は自分を見失います。

面倒くさいことはやりたくない、少しでも楽したい、嫌なことから逃げたい、嫌いな人とは話したくない、好きなことだけやっていたい、自分のペースでやりたい…

こういった人間誰しも持っている本音を過干渉によって否定され続けるからです。

本当の気持ちを出せない状態はしんどいので、自分の中にそういう気持ちはないんだと否認して見ないようにする。

否認するからそういう自分の気持ちと向き合わなくなって精神的な成長が止まってしまう。

人付き合い等の現実が上手くいかないことで不安やストレスを抱えてしまい、日常の楽しみも失われていく。

そして、ゲームやネット、何かしらの問題行動による強い快感で誤魔化すようになり、依存症になってしまうのです。

そもそも過干渉の親子関係が共依存なので、依存症になる前からしっかり土台ができている。

依存症になりやすい因子を持っていると言えます。

依存症には、アルコール依存症、ギャンブル依存症、買い物依存症、性依存症などがありますが、子供に起こりうる依存症としては、スマホ依存、ゲーム依存症、インターネット依存症が多いですね。

対人恐怖症

学校や職場で表面上は上手くやれたとしても、人とのかかわりでつらさやしんどさを感じやすくなります。

  • 相手にどう思われているかが異常に気になって本音が言えない
  • 仲良くしていたはずの友達から急に嫌がらせやイジメを受けるようになる
  • なぜかわからないけど無性にイライラして人と話したくなくなる
  • 意見を求められても出てこない
  • 感情表現が上手くできず他人の感情に共感できなくなる

といった感じの問題がどんどん周りの人との関係に歪みを生み出して、人間関係でものすごいストレスを抱えるようになるんですよね。

そして、限界を超えたときに対人恐怖症を発症、不登校やひきこもりになってしまう。

親(特に母親)が過干渉であったと感じている大学生の対人恐怖心性は、過干渉であったと感じていない大学生の対人恐怖心性よりも有意に高いことが報告されている。

引用元:青年期における対人恐怖心性の特徴とその関連要因についての省察、2013、愛知大学教職課程研究年報

今まで対人恐怖症のカウンセリングを何千件と対応していますが、親が過干渉だったケースは非常に多いです。

過干渉をやめて子供の問題を生み出さないために

親が自分の人生をしっかり歩む

親が感情を上手くコントロールできないから子供に干渉して押し付ける。

過干渉は親が子供に依存している状態だと言えます。

「子供のためなら」と自分を犠牲にすることは決して子供のためになりません。

本当に子供のことを思うのであれば、できるだけやりたいことをやって自分が人生を楽しめる状態にしていきましょう。

子供に依存しすぎず、自分らしく生きることが子どもにとって『大人になりたい』と思える、やる気に繋がるロールモデルになると思います

引用元:不登校児を東大に合格させた親のスゴい声かけ つまづいた子供を潰す親、伸ばす親 | PRESIDENT Online

親が精神的に自立できれば子供に依存する必要がなくなるため過干渉はなくなります。

置き換えた問題と向き合って解決していく

過干渉になってしまうのは、自分の中に未消化の問題があるからです。

  • 親に愛された実感がなく自分に存在意義を感じられない
  • 夫婦関係が上手くいかずコミュニケーションが取れていない
  • 世間の目をすごく気にしていて人とは違う自分を否定している

本来なら問題を解決することによって不安を解消するはずが、向き合わずに過干渉で誤魔化しているわけです。

何か目を背けて見ないようにしている問題はありませんか?

過干渉に置き換えた問題は何なのかを一度考えてみてください。

問題に気付き解決していく決意をした段階から少しずつ過干渉はなくなっていきます。

本来果たすべき親の役割を意識する

「親」という漢字が示すとおり、本来親は木の上に立って見守る存在です。

つまり、子供に付きっ切りになって干渉を繰り返すのは親ではないということ。

私も親ですから子供を心配する気持ちも、干渉したくなる気持ちもありますが、自分の子供を信じて干渉したい気持ちをグッとこらえて見守るようにしています。

過干渉をやめるためには「本当に子供にとって必要な干渉だろうか?子供の自立につながるだろうか?」と都度自分に問いかけ、試行錯誤する習慣が必要です。

早く一人暮らしをさせる、自分で何でもできるようにさせるといった表面的な自立ではなく、『自分』というものを持って生活していける本質的な自立を考えてください。

干渉の反対は放置ではありません。

過干渉にならないように気を付けながら、適度な干渉で子育てをしていきましょう。

カウンセリングでは、現在の状況を詳しくお聴きした上で、過干渉によって生じた親子関係の改善方法、過干渉をしなくていい状態になる方法を具体的にお伝えしております。

子供への過干渉によって何かしら問題が生じている状態でしたらご相談ください。