実家で暮らしているときだけでなく、一人暮らしをしてからも親の過干渉に苦しんでいる人は少なくありません。
過干渉は親元を離れるだけで解決に向かうほど単純なものではないのです。
親の過干渉に対処していく上で過干渉の実態を知ることが必要になるため、まず親が過干渉になってしまう原因からお伝えしていきます。
親が過干渉になってしまう原因
干渉せずにいられない親の不安
本来であれば少々子供が危ないことをしても見守る、失敗を経験させる形になります。
しかし、不安を抱えきれない親は危ないと思ったら防ぐ、失敗して子供が泣くのは自分が耐えられないから代わりにやってしまう。
親が過干渉になるのは、子供のことで感じる不安に耐えかねてしまうことが原因だと言えます。
時間に間に合わないのではないか、一人でできないのではないか、自分で言えないのではないか…不安を感じれば感じるほど、干渉せずにはいられなくなってしまうからです。
子供が自立することで自分が見捨てられるかもしれないという不安を抱えながらの子育て。
「私がいないとこの子はなにもできない」と思うことで、自分の存在意義を見い出している側面もあります。
また、自立をかえって引き止めている共依存の状態も起こっているのではと言われ、ハッとしました。他者―私の場合は息子ですが―に必要とされることで自分の存在意義を見い出し、依存関係を続けてしまっていたのですね。
問題がある夫婦関係
夫が子育てに協力的でない、仕事にかまけて任せっきり。
子供のことで相談しようにも話を聞いてくれず、子育ての悩みを一人で抱え込んでいるケースは多いです。
まだ両親に手伝ってもらえたり、友達に相談できるならいいですが、誰にも頼れない場合はより干渉がひどくなります。
「自分が何とかしないと」という気負いが強くなってしまいますからね。
そして、子供を相談相手にして夫の愚痴を聞かせる、感情的に子供を否定するといったことで、子供の心をどんどん殺していく。
過干渉で子供のためにしてあげることと、子供を傷付けることのアンビバレンス(両価性)。
上手くいっていない夫婦関係から目を背けるために過干渉になってしまうところがあるのです。
親が心配になりやすい子供の性質
生まれ持った子供の性質も親が過干渉になるかどうかに影響します。
- 生まれつき体が弱く病院通いが多い
- 他の子供たちと一緒に遊ぶではなく一人でポツンとしてしまう
- 大人しくて言いたいことがなかなか言えない
- 不器用で何をやるにも時間がかかってしまう
- 怖がりですぐ泣く
とくに発達障害やHSC(ひといちばい敏感な子供)の場合、他の子と比べて違いが多いから過干渉になりやすい傾向が見られます。
子供の様子を見ていて「この子は大丈夫なのか」と思う気持ちが募っていく。
親が何とかしてあげないとと思うことが過干渉へとつながるのです。
世間体を気にする親の場合、他の子と同じようにさせようとする気持ちから干渉がより強くなってしまうところがあります。
親が過干渉を自覚できないのはなぜ?
過干渉を愛情だと思い込んでいる
過干渉の親は子供を放置することはありません。
子供のためにできる限りのことを積極的にやるわけですから、自分は子供に愛情を注いでいると思っています。
たしかに愛情があって干渉しているのですが、制御できない不安や一方的な思いが影響して過干渉になっているのです。
- 子供が学校で恥をかかないためにやってあげる
- 自分が親にしてもらえなかったことをしてあげる
- 自分がやりたくてもできなかったことをさせてあげる
自分が子供にとって良いと思うことを押し付ける形で「子供にとってどうなのか」という一番大事な視点が抜け落ちています。
親自身が親子関係で抱えた心の傷や制御できない感情を子供にぶつけているだけなのです。
子供から言われても、他人から指摘されても「これは過干渉ではなく子育てにおいて必要な干渉だ」と思い込んで聞き入れないケースがほとんど。
実際に私も母親に過干渉だと伝えたことがあるのですが、「何を言っているんだ」という反応でした。
子供も過干渉を愛情と錯覚している
過干渉を受けている子供が母親に対して心の底から嫌悪や怒りの感情を抱くことはありません。
と言うより、嫌な思いと良い思いとを繰り返すアンビバレンスの影響で抱けなくなっているのが正しいでしょう。
反抗期や何かのキッカケで母親に暴言を吐いたりすることはあるのですが、基本的に自分の母親は良くしてくれているという感覚だから責めきれない。
イライラして母親に八つ当たりしてしまったときは罪悪感にかられますし、自分が悪かったんだと思います。
体調を崩したらすぐ病院に連れて行ってくれたり、学校の用意も抜けがないようにチェックしてくれたり、進路についても自分に合いそうな学校を探してきてくれたり、先生に言いづらいことも代わりに言ってくれたり…
こんなにも自分の為に愛情を注いでくれる母親に感謝するのは当たり前だと思うんですよね。
だから、母親のことを思いやって愚痴を聞き続ける子も結構います。
親子でお互いに依存し合う共依存の状態になっているのです。
過干渉な親に有効な4つの対処法
親の問題を切り離す
過干渉は親自身の不安からきているものである以上、親が自分で何とかしなければならない問題だと言えます。
自分が親に心配をかけやすい要素を持っていたとしても、過度な干渉をしてしまうほど心配するのは親の問題です。
自分が抱えている問題と親が抱えている問題をそれぞれ書き出してみてください。
親子共依存の影響で親の問題が自分の問題になってしまっているところも多いですが、視覚化することで切り分けやすくなっていきます。
ただ、今まで自分の問題にすり替えられてきたものを親の問題だと切り離すのは難しいため、カウンセリングで客観的な意見を聞きながら少しずつ切り離せる状態にしていくことが必要です。
親と心理的に距離を置く
一人暮らしをする等、物理的な距離を置いたとしても、親から長文のLINEや電話がくるケースは少なくありません。
物理的な距離だけでなく、心理的にも距離を置くことが必要となるのです。
過干渉の親は子供に距離を置かれることで距離を詰めようとあの手この手を使ってくることがあります。
それでも、親の要求に応じず距離のある対応を心がけてください。
電話がかかってきても出ないようにする、長文のLINEに対して最低限の内容だけ返す、実家に帰ってこいと言われても自分の予定を優先して断る等。
干渉ができなくなることで親自身が自分と向き合わざるをえなくなり、子供以外のことに目が向くようになる可能性もあります。
親への思いを手紙にしてみる
干渉を受け続けてきたことで親に言えないまま蓄積されてきた感情があります。
ぶつけることができても受け止めてもらえず、蓄積されたままになっているケースも多いですね。
そもそも子供の気持ちを考え、寄り添うことができる親であれば過干渉をしないので当然と言えますが…
今まで過干渉をされてきたことでどういう気持ちになっていたのか、本当はどうしたいと思っていたのか、親にどうして欲しかったのか。
親に出す前提で手紙に自分の気持ちを書いてみてください。
最終的に出すか出さないかは書き終わった時の気持ちで判断していただければと思います。
自分の人生を充実させる
親の過干渉は嫌な気持ちになるから何とかしたい。頻繁に連絡が来て大変だから何とかしたい。
そう思うのは当然だと言えますが、年齢を重ねた親がいまさら変わることはなかなかありません。
変わらない親を変えようと考えれば考えるほど、親への怒り、執着が強くなってしまい、本来自分にとって大切なことが疎かになる。
結果として、自分の人生が上手くいかなくなり、上手くいかない原因としてより親への執着を強まる悪循環に陥ってしまいます。
親がどれだけ過干渉であろうとも、自分にとって大切なことに時間を費やし、より良くしていくことはできるはずです。
カウンセリングでは、自分に軸を持ち、親の干渉に左右されない状態になれるようサポートしております。
親子関係で抱えた生きづらさ、過干渉な親への対応でお困りでしたらご相談ください。