何かしら対人恐怖症の症状が出ている人は、本当の自分を隠しています。

本当の自分に自信がないからバレないように必死なのです。

その必死さは人とのかかわりを回避させ、場合によっては他人への批判に変わります。

だから、カウンセリングを受けてもほとんど良い話か、症状の話しかされません。核心となる自分の本音に近づけば近づくほど無意識に避けて違う話をし出します。

カウンセラー相手でも鉄壁の守りを崩さないのです。

自分が傷付かないように壁を作って壁越しに会話をする。表面上は穏やかで笑うのですが、怒りや不満を抱えた本音とのギャップが不自然さを生み出して相手を警戒させることになります。

怒り、憎しみ、悲しみを無意識に抑え込んでいるから

言っても仕方がない、どうしようもないからと諦めて自分の中では納得したつもりになっています。

確かに頭では納得できていても、心では納得できていないので、ずっと心に引っかかった状態が続きます。

でも、それを考えると嫌な気持ちになるし、どうしようもないから考えないようにする。繰り返すうちに無意識に考えなくなるのです。

考えなくなったとしても、心は納得していないままですから、そこに生まれるのが症状。

この問題はとくに複雑な感情が入り混じる親子関係によって起こることがほとんどです。

親子関係が問題となる理由

親と子の関係というのは複雑なものです。

子供は親の愛情を求め、親は子供に愛情を注ぐ。

子供は親がいないと生きていけないから親に逆らえない。親を選べないから嫌でも上手く付き合わないといけません。

たとえどれだけひどい親であったとしても、子供は親が自分のためにしてくれていると思いたいし、そうでも思わないと生きていけない。

でも、実態は親が自分の不安や思いを解消するために子供を利用する形となり、それを子供が我慢するという図式になっています。

お互いにその実態に気付きたくないから誤魔化して誤魔化して過ごす。

親は親で自分が子供を利用しているなんて思いたくはないので、子供のためにやっているんだという大義名分で突き進む。

その中で子供の感情や意志は抑え込まれ、精神的に自立できない状態になってしまうのです。

親子関係の呪縛から抜け出して精神的に自立するために

まずは親との関係における問題と向き合うことからです。

ただ、前述の通り子供は親を責めたくない、責められない気持ちがありますから、カウンセリングで話しながら少しずつ紐解いていく形となります。

その中で少しずつ問題を認識できるようになり、親に対して怒りを抱き、表現するようになっていきます。

精神的に親から自立するようになれば、本当の自分が成長していくので、守りを崩して人とのかかわりの中で本当の自分を表現できるようになるのです。

対人恐怖では,保護的で愛惜深い幼児的世界から離れた際の,社会と自分との関係の取り方の難しさが問題になっている。すなわち,それまでの育ちの中で培ってきた控えめで従順な自分を, 社会の中での居場所を得て行くにあたって,再度形成しなおす課題が生じるのである。

引用元:女性における対人恐怖心性、2007、京都大学大学院教育学研究科紀要

親と同居している場合は、親の接し方で成長を妨げてしまうこともよくあります。

ですので、親も接し方を変えられるように自分の中にある不安や思いに気付いていくこと、親自身が成長していくことも大切だと感じています。

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