あがり症とは、以下のような場面で過度に緊張してしまい、声が裏返る、頭が真っ白になる、汗をかく、顔が赤くなる、手足が震えるといったことが支障をきたすレベルで起こる症状です。

  • 人前でスピーチする
  • 会議で発言をする
  • 好きな人に会う
  • 権威のある人(教授、役員、社長等)と話す
  • 面接を受ける

さらに、赤面や手足の震えが「変に思われるのではないか」という不安によってひどくなったり、激しく心臓が鼓動するほどに心拍数が高まったりする二次的な症状にも発展します。

特定の場面でのみ症状が出ることから、学生時代より社会人になって困る人の方が多いです。

あがり症は軽度と重度の差が激しいので別々にご説明します。

2種類のあがり症

軽度あがり症

人前で話すときに赤面や手の震え、発汗が気にはなるけど支障をきたさない範囲で話せます。

どちらかといえば話すのが上手い方で、コミュニケーションに深刻な問題を抱えてはいません。

  • 人前で話す仕事をしているのにどうしても苦手意識が消えない
  • 講師の仕事で赤面してしまうことがあって悩んでいる
  • 人付き合いは問題ないがスピーチとなると緊張してしまう

すでに高い基準に到達しているにもかかわらず、さらに高い理想像を追い求める傾向が見られます。

あがり症は対人恐怖症の一種ですが、軽度の場合は対人恐怖症とは言えないくらいの症状です。

    重度あがり症

    人前での赤面、声や手足の震え、発汗がひどい。人によってどこに症状が出るかは異なります。

    緊張の度合いが非常に強く、頭が真っ白になって話せなくなる人も多いです。

    • 朝礼の1分間スピーチで頭が真っ白になる
    • 結婚式で手足が異常に震えて招待した家族や友人に笑われる
    • 自分が発言することで注目される機会を必要以上に避ける

    一度あがってしまうとコントロール不能となり、何をやっても緊張が和らぐことはありません。

    普段からコミュニケーションに問題があり、人付き合いが苦手、他人に合わせて生きているタイプの人がなりやすいです。

        重度の場合は対人恐怖症としか言いようがないレベルですので、軽度の人と同じ対応では悪化する危険性があります。

        あがり症の原因は?

        自信のなさからくる限界を超えた頑張り

        「自分を大きく見せたい」「良く思われたい」「欠点を隠したい」等といった気持ちが強いことが原因となっています。

        根底には自信のなさがあり、自信がないからこそ、自分以上の力を出そうと変な力みが出て緊張してしまう。

        顔が赤くなる、手足が震えてくるといった症状が出てくるのです。

        無理をしすぎてオーバーヒートしてしまっているんですよね。

        失敗を繰り返すことで「またあがってしまうのではないか」と思う予期不安が生まれ、さらに緊張しやすい状態になっていく。

        赤面や手足の震えを気にしすぎて「赤くなっちゃいけない」「震えを止めなきゃ」と思うことで、人間の本来の生理現象までも排除しようとして余計に悪化していきます。

        不安との付き合い方が上手くいっていない

        例えば、1000人を前にスピーチをしてくださいと言われれば誰でも緊張するでしょう。

        声が高くなったり、汗をかいてしまったり、言葉が出づらくなったり…

        それでもなんとか乗り切れる人もいれば、逆に全く言葉が出てこない状態になる人もいる。

        両者の違いは不安に飲まれているかどうかにあります。

        「上手くしゃべれるかどうか」といった不安があったとしてもコントロール下に置けていれば問題は起こりません。

        つまり、不安があること自体ではなく、不安がコントロールできていないことが問題だと言えます。

        あがり症を改善していくためには不安と上手く付き合ってコントロールできるようになることが大切なんですよね。

        不安や恐怖をコントロールして緊張しなくなる方法

        対人恐怖症のカウンセリングを重ねる中で不安と恐怖への対処法は常に考えてきました。

        面接やプレゼン、発表で緊張しない方法を教えてほしいという相談は多いですからね。

        以下の4つの対処法を実践していただければ不安に飲まれずに生活しやすくなります。

        効果は実証済みの方法なので不安をなくしたいと思っているのであれば少しずつでも継続してください。

        緊張は生理現象だと理解する

        緊張してしまう原因の一つに緊張を排除しようとしていることがあります。

        緊張してはいけないと思うから緊張するということです。

        しかし、先程からお話しているように緊張するのは人間の機能として当然のもの。

        逆に緊張しないのは生きていく上で危険性があります。

        人間は不安や恐怖を感じたとき、戦うか逃げるかをしやすいように手に汗をかいたり、消化器が働かなくなったりします。

        これが緊張と呼ばれるものであり、健全な人間である以上、誰にでも起こりうる生理現象です。

        身体症状としては赤面、震え、発汗、喉の渇き、呼吸の乱れなどがあります。

        ただ、緊張すると思考停止状態になってしまうから、話すときは上手く言葉が出てこなくなったりして困るんですよね。

        目的を意識する

        目的を意識することで不安や恐怖を感じなくすることができます。

        森田療法の目的本位や選択理論心理学の考え方に近いですが、私はこの「目的意識」というものに非常に救われています。

        人前でスピーチする場面であれば「何を伝えたいのか?」「何を伝えなければならないのか?」に集中するというように、その行為の目的に集中します。

        目的に強く意識を向けることができればできるほど「失敗したらどうしよう」「上手く喋れなかったらどうしよう」といった不安が薄れていきます。

        感情的になることは誰にでもありますが「その感情から出てくる行動が自分の目的を果たしてくれるものかどうか?」「それとも、それを邪魔するものなのか?」を考えることで行動が変わります。

        私の場合はこれをやり過ぎて、怒らないのが不満だと妻に言われますので、たまには感情のままに動くことも大切ですね(笑)

        ただ、感情をコントロールする方法としては優れていると実感しています。

        人間は誰しも欲求に基づいた「目的」に従って日々の生活を繰り返しているのですが、無意識の部分が多くなかなか気付けないことも多いかもしれません。

        そんなときは「何のために今これをやっているの?」と自分自身に質問してみてください。

        その答えが「目的」です。

        もし、質問をしても出てこないようなら目的が小さすぎて把握できないのかもしれませんので、そういう場合は無理をしてまで考える必要はありません。

        まずは、気付きやすい「目的」を意識することから試していただければと思います。

        相手の反応に対する捉え方を変える

        緊張しやすい人は物事をネガティブに捉えてしまう傾向が強くあります。

        私自身も悩んでいた時期は「自分の話が下手だからわかりづらいのかな」「こいつ大丈夫かなと思われているのかな」とかよく思いましたからね。

        でも、実態はたまたま反応が薄い人だったとか、真剣に話を聞いてくれているだけだったとかでした。

        原因は相手が作り出してるんじゃなくて、結局は自分が勝手に作り出しているに過ぎなかったのです。

        朝礼のスピーチで退屈そうに聞いている人は、眠くて頭がぼーっとしているのかもしれませんし、たいして意味をなさない朝礼自体が嫌いなのかもしれません。

        面接で険しい顔をしている面接官は、もともと強面なのかもしれませんし、真剣に話を聞こうとしているからこその顔なのかもしれません。

        相手の立場になって考えてみましょう。

        相手の反応をいつものネガティブな捉え方以外、自分以外の原因と結び付けてみると緊張しづらくなります。

        頭で理解するのではなく感覚的に理解することが必要なのでなかなか難しいですけどね。

        最悪の事態を想定して具体化しておく

        失敗を恐れていると緊張しやすいのはあります。

        「失敗したらどうしよう」という不安が強ければ強いほど緊張してしまうのです。

        人前で発表するときに失敗したとしても死ぬわけではないのもわかっている。

        でも、失敗して恥ずかしい思いをする、上司に怒られるのは何としても避けたい。

        まるで失敗したら取り返しがつかないほどのことに思えてくるから緊張が高まってしまう。

        だから、もし失敗したらどうなるか、最悪の事態を想定できていれば緊張しづらくなります。

        例えば、朝礼で緊張しすぎて言葉が出なくなったとします。

        周りは「どうしたんだ、大丈夫か」となるでしょう。

        でも、それほどの緊張であれば赤面や震え、汗、何かしらの身体症状が出ているはずなので周りもわかります。

        「緊張しすぎて頭が真っ白になってしまったのかな」と。

        気遣って何事もなかったかのように振る舞ってくれる人もいれば、意地の悪い人はからかってくるかもしれません。

        もし、職場の人たちにそういう対応をされたらどうなるでしょう?

        恥ずかしくて逃げだしたい気持ち、気を遣わせていることへの申し訳なさが出てくる。

        からかわれたら嫌な気持ちになって怒りが湧いてくるかもしれません。

        だからといって、何か日常に大きな変化があるわけでもなく、今まで通りまた時間が過ぎていく。

        朝礼の失敗をネタにする人がいたとしても、同じ話ばかりしていてはその人が嫌がられます。

        人間の記憶は長くて1ヶ月、短ければ1週間も持たず消えていくもの。

        失敗しても何とかなったというところまで、自分の体の感覚も交えて具体的にイメージできればできるほど緊張から解放されていきます。

        不安や恐怖を感じていることに対処法を準備する

        不安や恐怖を感じるのは「対処法を知らないから」とも言えます。

        例えば、変なことを言って仲良くなりたい人に嫌われたとしても、その関係を修復できる魔法が使えるなら全く不安や恐怖なんて感じないはずです。

        さすがにそんな魔法はありませんが(笑)

        でも、以下のような不安や恐怖への対処法はあります。

        誰かにひどいことを言われても、いつも味方でいてくれる家族がいる

        もし相手を不快にさせたとしても謝って関係を修復することができる

        10人中9人に嫌われても残りの1人とは仲良くなれる

        失業しても雇用保険から一定のお金がもらえる

        失業してもお金をもらいながら勉強できる職業訓練学校に通える

        周りから嫌われようが批判されようが「勝手に言わせておけばいい」と開き直れる自信がある

        その時々に応じた対処法を持っていればいるほど、不安や恐怖を感じずに、人と接することができるようになるのです。

        そのためには、まず今感じている不安が的中して最悪の事態になったときの対処法を事前に考えておくこと。

        今の自分が実践できる対処法を考えてください。

        どれだけ立派な対処法でも使えないものでは意味がありませんので。

        そして、実際に緊張する場面で何とか乗り越えることができたという成功体験を積み重ねると緊張しなくなっていきます。

        緊張してしまったときの緊急対処法

        思考中断法

        緊張状態は五感を刺激することで解消できます。

        手を近くの机に触れるなどして、意識を違うところに向けましょう。

        緊張が強ければ同等の刺激が必要となるため、手に輪ゴムをはめておいてパチンとする痛み、片方の足でもう片方の足を踏むとかが必要となるかもしれません。

        アロマをしみこませたハンカチを用意しておくとか、フリスクを噛むとかも効果はあるので、場面によって可能であればやってみてください。

        呼吸法

        緊張すると呼吸が浅くなり肩に力が入ります。

        呼吸法によって深い呼吸にしていくことができればリラックス状態となり緊張から抜け出せます。

        緊張状態のときにおすすめの呼吸法は「逆腹式呼吸」です。

        腹式呼吸の逆、息を吸っているときにお腹をへこませ、息を吐いているときにお腹を膨らませる形で呼吸をしてください。

        横隔膜がしっかり上下している感覚があれば上手くできています。

        ストレッチ

        肩を上げて力を入れた状態からストンと下ろしたり、ジャンプをして緊張から脱します。

        緊張する出来事の前に走っておくのも一つの対処法です。

        あがり症で悩んでいた人が克服できた事例

        以前、ある交流会に参加した際に、すごく話し上手でコミュニケーション能力が高い営業マンの方とお話する機会がありました。

        営業として数字も上げておられる方で、その場にいる全員の前で堂々とスピーチもされていて話も面白く非を探すのが難しいくらい。

        でも、実はその方、少し前まで人前で話すのがすごく苦手だったらしいのです。

        その話を聞いたとき、最初はその場にいた全員が「え~、嘘でしょ」という感じで疑っていましたが、人前で話すときに緊張して考えてきた内容を読み上げるのがやっとだったとのこと。

        それがあるキッカケで、ほとんど緊張しなくなり、アドリブを利かせて自分らしく話せるようになったそうなのです。

        キッカケは「自分は自分のままでいい、自分以上のことはできない」と気付いたことでした。

        その答えを聞いたとき、私はすごく納得しました。

        なぜなら、人前で緊張したりあがったりすることの原因が「自分以上の力を出そうとすること」だと知っていたからです。

        実際にカウンセリングを受けていただいた方からもこの気付きで緊張しなくなったとお聞きしたこともあります。

        「『自分は自分以上でもなく自分以下でもない』と思えるようになってから、すごく楽になりました」と嬉しそうに話しておられましたね。

        自信が無いからと本当の自分を隠したり、感情を抑え込んだりすることは、「相手にバレないかどうか」という余計な不安を生み出してしまいます。

        でも、少しずつ自信を積み上げたり、感情を表現していくことをやっていれば、今回のようにある一定の時点を越えたときに感覚をつかめてあがり症を克服できるのです。

        あがり症を克服していくために

        都度、対処法で乗り越えていく方法もあるのですが、根本的な解決にはならないため毎回あがってしまう場面で苦しみます。

        まずはあがってしまう原因が何なのか、あがってしまうとなぜ自分で止められない状態になってしまうのかといった部分に気付く。

        そして、成功体験の積み重ねで自信を取り戻すことによってあがり症を克服できるのです。

        あがり症を克服するためにカウンセリングでは以下のようなことをおこないます。

        • 自分自身の性質や傾向、感情の動きを知る
        • 感情表現をして不安などの感情を受け止める器を大きくする
        • 責任の所在を明確化、自分でコントロールできることできないことを知る
        • 理想(固定観念)と現実のギャップを埋める
        • イメージの修正による準備~成功体験を重ねて自信をつける
        • 普段から他人ではなく自分基準の習慣を形成、目的意識を強化する

        あがり症が軽度の場合、話し方教室や自己啓発セミナーに参加する人もいますが、余計にあがりへの意識が強まって悪化してしまうケースもあります。

        慎重に判断して下さい。

        カウンセリングルームWILL(大阪・天王寺)