対人恐怖症で悩んでいる人は、思い込みが激しく何でもネガティブに解釈する傾向があります。
電車で自分の隣が空いているのに誰も座らなければ、自分のことが嫌だから避けているんじゃないかと思う。
道を歩いていて視線を感じると、自分が変だから注目されているんじゃないかと思う。
友達が食事に誘ってくれても、本当は誘いたくないけど気を遣ってくれたと思う。
ネガティブに考えすぎかなと思いつつも「いや、そうに違いない」と思いなおす。
繰り返す中で、自分はおかしい、周りに受け入れられない、嫌われてる、ダメな人間だと思い込みを強化していくのです。
思い込みが激しくなる原理
思い込みはどうやって形成されるのか?
サーカスの象の話をご存知でしょうか?
サーカスの象は小さくて非力な時期に鎖につながれて逃げようとしても逃げ出せない、杭が抜けないという経験を何度も何度もさせられます。
その結果、大人になって杭を抜く力をつけたにもかかわらず、逃げることを諦めてしまっているがために杭を抜いて逃げ出そうとはしなくなるという話です。
これは象の話なのですが、実は人間にも共通しています。
自分が欲しいものを言うと親が不満げな顔をする。「こっちの方がいいんじゃない?」と自分の好みを押し付けてきた。
「自分の欲しいものを素直に言わないほうがいいんだな」と思い込む。
友達に面白かったことを話したら「何言ってるかわからない」と言われた。
「自分の話はわかりづらいんだ」と思い込む。
思い込みはビリーフ、固定観念とも呼ばれ、自分自身の実体験、親や先生から教わったこと、友達から聞いたこと、文化的風習、宗教、メディアの情報等によって形成されます。
思い込みが激しくなっていく悪循環
例えば、自分のことをダメ人間だと思い込んでいる人は、自分のダメなところを探しては「自分はダメだ」と思い込みを強化します。
- 暗い自分じゃダメだ
- 面白い話ができないのはダメだ
- 話が続かないのがダメだ
- 自己中な部分があるのがダメだ
- 初対面ですぐ打ち解けられないのがダメだ
- 赤面してしまうのがダメだ
- 緊張しやすいのがダメだ
- どもって会話に詰まってしまうのがダメだ
- 脇見をしてしまう自分はダメだ
- 人に迷惑をかけてしまう自分はダメだ
- 人生を楽しめていない自分はダメだ
- 人と普通に話せない自分はダメだ
- 女の子と普通に話せない自分はダメだ
- 結婚できていない自分はダメだ
- 完璧主義な自分はダメだ
- 神経質な自分はダメだ
- 不安を抱えやすい自分はダメだ
- 仕事ができない自分はダメだ
- 不器用な自分はダメだ
- 頑固な自分はダメだ
- ルックスが悪い自分はダメだ
人とかかわっても自分が自分のことをダメ人間だと思っているから話せない。
自分が話せなかった結果と相手の反応を見て、さらに自分はダメだと思い込む。
無限の悪循環にハマって自分はダメ人間だという思い込みをどんどん悪化させていくのです。
思い込みが与える影響は絶大
思い込みは現実を引き寄せる力を持っている
できると思い込んでいればできるようになっていく、できないと思い込んでいればできなくなっていく。
思い込みは現実になります。
ナポレオン・ヒルの自己啓発書『思考は現実化する』は有名ですよね。
例えば、「数学が得意だからテストで90点以上とるのが当たり前だ」と思い込んでいる人は90点以上をとる。
逆に「数学が苦手だからテストで50点しかとれない」と思い込んでいる人は50点しかとれなくなってしまう。
90点以上とるのが当たり前になっている人は、本人に頑張っている意識がなくても90点以上をとるために必要なことをやる。
50点しかとれない人は50点しかとれない前提だから高得点をとるために必要なことをやっていない。
これは本人の努力が足りていないという話ではありません。
できないと思い込んでいる限り、いくら努力してもできないままになってしまうということです。
思い込みは行動だけでなく生死をも左右する
「周りの目が気になるから外に出られない」と思い込んでいる人は外に出られない前提で考え、行動しています。
必要なものはすべてインターネットで注文をするとか、家族に頼んで買ってきてもらうとか。
外に出られる前提で考えていない、行動していないから外に出られなくなってしまうわけです。
「自分は人に嫌われる人間だ」と思い込んでいる人は他人に嫌われるようなことを無意識にやってしまうし、「自分は幸せになれない人間だ」と思い込んでいる人は幸せになれそうなタイミングでわざと上手くいかない選択をする。
偽の薬でも効くと思い込んで飲めば効くというプラシーボ(プラセボ)効果は有名ですよね。
誤診で余命宣告をされた人が実際に亡くなってしまったという話もあるくらい。
思い込みというのは本当に強力なものです。
思い込みが激しい状態から抜け出すために
まずは自分が持っている思い込みに気付く
思い込みをなくすために、まずは自分が持っている思い込みに気付くところからやっていきましょう。
自分が持っている思い込みは出来事に対する感情の動きを見ていただくと気付きやすいです。
年長者を敬っていない、失礼な態度をとる人に怒りを感じたら「年長者は敬うべきだ」という思い込みを持っている。
人に迷惑を掛けたときに強い罪悪感を抱いたら「人に迷惑を掛けてはいけない」という思い込みを持っているといった感じで。
思い込みすべてが悪というわけではありませんが、自分を苦しめるような思い込みはなくせたほうがいいですよね。
ただ、思い込みをいきなり変えるのは難しいので、まずは自分が持っている思い込みを知るところからやっていきましょう。
自分が持っている思い込みを知れば「自分にはこういう思い込みがあるからこういう感情になってしまうんだな」と自分を客観的に見やすくなります。
自分の中にどういう思い込みがあるか、一度考えてみてください。
ルーティン化した生活に変化を与える
思い込みが激しく柔軟に考えられない人は、日々の生活がルーティン化している傾向が見られます。
同じことの繰り返しだから脳が活性化しない。
逆に脳を活性化させることができれば、柔軟な考えになりやすいわけです。
簡単なことで大丈夫なのでまずは小さな変化を日々の生活に取り入れてみましょう。
- 毎日の通勤経路を少しだけ変えてみる
- 駅でいつもエスカレーターに乗っているなら階段に変えてみる
- スマートフォンを操作する手を右手から左手に変えてみる
変化のある生活を継続していくことによって思い込みから抜け出しやすくなります。
相手と自分を入れ替えて考えてみる
例えば、友達に言いたいことを言った翌日、たまたま挨拶を返してくれなかったという出来事があったとします。
すると、「昨日あんなこと言ったから嫌われたんだ」と勝手な結論を出して悩んでしまう。
確かに挨拶をしてくれなかったことは事実です。
でも、嫌われたのかどうかまではわからないですよね?
相手にとって嫌いになるほどのことだったのか、一度自分と相手の立場を入れ替えて考えてみてください。
そして、相手の立場で他の原因も考えてみる。
- ただ聞こえてなかっただけ
- 相手の体調が悪くて頭がぼーっとしていた
- 考え事をしていて気付かなかっただけ
原因はどれか一つだけでなく、いくつか重なり合って起こったのかもしれません。
勝手に解釈して悪い方に思い込んでしまうときは、自分と相手を入れ替えて考えてみることをお勧めします。
「思い込みが事実なのか」を検証してみる
例えば、仕事だから笑顔で接客しないといけないと思い込んでいたとしましょう。
コンビニ、カフェ、ファミレス、アパレルのお店、駅…
実際に仕事で接客をしている人を観察してみます。
すると、全員が笑顔で接客していないという事実に直面するでしょう。
ただ、事実を知ったからといって急に思い込みがなくなるわけではありません。
笑顔で接客していない店員さんに対するお客さんの反応も観察します。
別に嫌な顔をしていない、怒っているわけでもない。
もしかすると、笑顔で接客しなくても大丈夫なのかなと思う。
さらに、過去の経験を振り返って笑顔で接客しないことで何か問題が起こった場面を見たことがあるかまで考えてみる。
すべてを書き出して最後に「だから笑顔で接客しなくてもいい」と書き、納得できれば思い込みはなくなります。
思い込みをなくす特効薬は実際に行動してみること
行動して実際に経験することは、思い込みの修正にもっとも効果的だと言えます。
なぜなら、人は自分が「これはこうなんだ」と間違って思い込んでいることに対して、誰かに正しいことを言われても腑に落ちないからです。
「百聞は一見に如かず」ということわざもありますよね。
たまたま相手が挨拶を返してくれないことがあったとします。
「もしかして嫌われたのかな?」と不安になる。
でも、次の日に自分から挨拶をしたら普通に返してくれた。
「あー、別に嫌われてなかったんだ」と思い込みが修正される。
不安に思いながらも相手とかかわりを持ち続けたから修正されたのです。
思い込みに苦しめられないためにも、なるべく避けずに行動していくようにしましょう。