最近、高校生、大学生の方のカウンセリングと依存症で悩む親御さんからのご相談対応をさせていただく機会が増えており、その中で直面する親子関係の問題を肌で感じています。

母親が子供に過度に干渉することによって、子供が問題を抱えるケースは非常に多いです。

「あれしなさい」「これしなさい」「あれはできているの?」「準備したの?」「大丈夫?」と干渉をされ続けて育つと、自分で考えることをしないために、自分が何を考えているかすらわからなくなって、人間関係などの問題に直面したときに何かしらの症状が表面化するのです。

私自身、母親に「ちゃんとお礼言わなあかんで」「ありがとう言った?」「あいさつした?」等とよく干渉されていたため、実家にいた頃は自発的に感謝したり挨拶をしたいと思うことがなくなっていました。

親子関係の問題として、無関心、過干渉、過保護などが挙げられますが、とくに過干渉が問題になりやすいかなと思っています。

親が過干渉になってしまう理由

自分の子供がかわいくない、どうでもいいと思う親は子供をほったらかしにして、自分のやりたいことを最優先にします。

子供に時間を費やすことを惜しむでしょう。

しかし、過干渉の親は自分よりも子供を優先し、子供の為にと必死に頑張っています。

子供のことを考えて愛情を注いでいるのは間違いありません。

ただ、愛情表現の仕方を「過干渉」という形にしてしまっていることが問題なんですよね。

親が過干渉によって愛情表現するのは、子供のことで感じる不安に耐えかねてしまうことが原因だと思っています。

時間に間に合わないのではないか、一人でできないのではないか、自分で言えないのではないか…不安を感じれば感じるほど、干渉しないといけないという気持ちが強くなってしまうからです。

子供が自立することで自分が見捨てられるかもしれないという不安を抱えているケースもよくあります。

本来、親の役割は子供を育てるというよりも子供が育つのを見守ることにあるのですが、自分の不安をぬぐいきれないが為に干渉を繰り返してしまう。

そして、「私がいないとこの子はなにもできない」と思うことで、子供にとって必要不可欠な自分という存在を確立させてしまうのです。

また、自立をかえって引き止めている共依存の状態も起こっているのではと言われ、ハッとしました。他者―私の場合は息子ですが―に必要とされることで自分の存在意義を見い出し、依存関係を続けてしまっていたのですね。

引用元:ひきこもった息子とわたしの共依存:こころの病 克服体験記|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

子供から見た過干渉の母親像

過干渉を受けている子供が母親に対して心の底から嫌悪や怒りの感情を抱くことはありません。

反抗期や何かのキッカケで母親に暴言を吐いたりすることはあるのですが、基本的に自分の母親は良くしてくれていると感じているからです。

イライラして母親に八つ当たりしてしまったときは罪悪感にかられますし、自分が悪かったんだと思います。

体調を崩したらすぐ病院に連れて行ってくれたり、学校の用意も抜けがないようにチェックしてくれたり、進路についても自分に合いそうな学校を探してきてくれたり、先生に言いづらいことも代わりに言ってくれたり…

こんなにも自分の為に無償の愛を注いでくれる母親に感謝するのは当たり前だと思うんですよね。

だから、母親のことを思いやって愚痴を聞き続ける子も結構います。

まさに共依存の状態です。

過干渉が引き起こす子供の問題

しかし、過干渉によって自尊心が傷つけられていくため、気付かないうちに以下のような問題を抱えてしまいます。

  • わかってもらえないと思うから自分の本音(感情)を押し殺す
  • 自分の意志を伝えることに罪悪感を感じて自由に表現できなくなる
  • 価値観が育たず自分という存在が確立されない(反抗期がなくなる)
  • 自分の気持ちが理解してもらえないことへの悲しみが募り、諦めが習慣化する
  • 甘えによって自己中心的な傾向が強くなり相手の立場に立つことができなくなる
  • 何をやっても続かなくてすぐ辞めてしまう

母親に挨拶しなさいと言われて「そんなこと言われなくてもわかってるよ」と思いながら挨拶する状態ならまだいいですが、何も思わずに言われた通り挨拶をするのは末期状態だと言えます。

何も思わないのは、自尊心が傷付けられ過ぎて自分の感情や本音が自分で気付けない状態になっている証拠だからです。

末期状態になっても学校や職場で表面上は上手くやれるのですが、人とのコミュニケーションに支障をきたすようになります。

  • 相手にどう思われているかが異常に気になって本音が言えない
  • 仲良くしていたはずの友達から急に嫌がらせやイジメを受けるようになる
  • なぜかわからないけど無性にイライラして人と話したくなくなる
  • 自分がどう思っているかを振り返っても自分の感情がよくわからない
  • 喜怒哀楽、恋愛などの感情をほとんど感じない

といった感じの問題がどんどん周りの人との関係に歪みを生み出して、人間関係でストレスを抱えやすい状態になってしまうのです。

親(特に母親)が過干渉であったと感じている大学生の対人恐怖心性は、過干渉であったと感じていない大学生の対人恐怖心性よりも有意に高いことが報告されている。

引用元:青年期における対人恐怖心性の特徴とその関連要因についての省察、2013、愛知大学教職課程研究年報

精神的に自立できなくなる

親に「挨拶しなさい」「お礼言いなさい」「ちゃんと謝りなさい」等と言われ続けると、子供はなぜするのかを考えないままとにかく言われたことをやるようになります。

感謝の気持ちが出てくるからお礼を言いたくなる、自分が悪いことをしたと思うから謝るといった行動の元となる自分の感情に目を向けないまま育ってしまうため、自分の感情がよくわからない状態になってしまう。

その結果、人間が生きていく上で指針となる「自分がどうしたいか」が曖昧になってしまい、自発的に考えて行動することができなくなるのです。

子供も年齢とともに成長していくわけですから、本来なら親が年相応の接し方をしてくれて自分の成長を実感できます。

しかし、過干渉が続くといつまでも子ども扱いされているように感じて成長が妨げられてしまいます。

愛された実感が得られなくなる

愛されたという実感は自分が求めたことに応じてもらったときに出るのですが、求めていない状態であるにもかかわらず先回りされると愛された実感が得られないままになります。

親からすれば愛情を注いだつもりが子供は愛された実感がないという状態になるのです。

子供からすれば親子関係は良好なはずなのに愛された感覚がないという変な感じになってしまう。

ありのままの自分が愛されるという実感を親からもらえなかった子供は「ありのままの自分は愛されないのではないか」という自分の存在に対する不安を抱えてしまうために人にありのままの自分を見せられなくなります。

過干渉の親に育てられた子供が自己主張を苦手とするのは、自分を出すことに対する不安が強いからです。

過干渉が依存症を生み出す仕組み

過干渉を繰り返された子供は本当の気持ちを出せなくなります。

面倒くさいことはやりたくない、少しでも楽したい、嫌なことから逃げたい、嫌いな人とは話したくない、好きなことだけやっていたい、自分のペースでやりたい…

こういった人間誰しも持っている本音を過干渉によって否定され続けるからです。

本当の気持ちを出せない状態はしんどいので、自分の中にそういう気持ちはないんだと否認して見ないようにする。

否認するからそういう自分の気持ちと向き合わなくなって精神的な成長が止まってしまう。

人付き合い等の現実が上手くいかないことで不安やストレスを抱えてしまい、日常の楽しみも失われていく。

そして、ゲームやネット、何かしらの問題行動による強い快感で誤魔化すようになり、依存症になってしまうのです。

そもそも過干渉の親子関係が共依存なので、依存症になる前からしっかり土台ができている。

依存症になりやすい因子を持っていると言えます。

依存症には、アルコール依存、ギャンブル依存、買い物依存、性依存などがありますが、子供に起こりうる依存症としては、インターネット依存、ゲーム依存、スマホ依存、テレビ依存、対人依存(対人恐怖症)が多いですね。

過干渉をやめて子供の問題を生み出さないために

過干渉が子供の問題を引き起こす話をしてきましたが、ではどうすれば過干渉をやめることができるのでしょうか?

そのカギは、親自身の成長にあります。

親が成長して自立した状態になり、不安など自分の感情に惑わされて子供を利用することがなくなれば、過干渉はなくなり子供も自立していくことができるのです。

子供に依存しすぎず、自分らしく生きることが子どもにとって『大人になりたい』と思える、やる気に繋がるロールモデルになると思います

引用元:不登校児を東大に合格させた親のスゴい声かけ つまづいた子供を潰す親、伸ばす親 | PRESIDENT Online

そのためにまず必要なことは親が自分の過干渉に気付くこと。

そして、なぜ過干渉になってしまうのかという自分の問題と向き合っていくことです。

問題に気付き解決していく決意をした段階から少しずつ過干渉はなくなっていきます。

過干渉は自覚しづらいから厄介

子供に対して過干渉になっている親は自分が過干渉であることに気付いていません。

お互いに依存し合っていて子供が嫌がらないから気付けないのもあります。

そもそも、過干渉の自覚があればやめようとするでしょう。

自覚がないからこそ、無意識に過干渉を続けてしまうのです。

子供から言われても、他人から指摘されても「これは過干渉ではなく子育てにおいて必要な干渉だ」と思い込んで聞き入れないケースもあったり。

だから、親自身が過干渉だと自覚するのは難しいのですが、子供の異変によって間接的に気付くことはできるのではないかと思っています。

  • 自分で決められず何かにつけて確認してくる
  • 自分の意見を言わず何を考えているかよくわからない
  • 同年代の子と比べて幼い印象を受ける
  • 親に反抗することが少なく従うのが当然という感じになっている
  • インターネットの動画を観続けて注意してもやめない
  • たまにキレて物を壊したりすることがある
  • 学校でのコミュニケーションが上手くとれず登校拒否をする
  • 嫌なこと、苦手なことにはチャレンジせず逃げる
  • 対人恐怖症かもしれないと言い出す

こういった傾向がある場合、子供への接し方が過干渉になっていないか一度振り返ってみてください。

どこまでが過干渉でどこまでが過干渉ではないかの判断がつかない、自分ではどうかわからないのであればご相談ください。

親自身が自分自身の問題と向き合って解決しながら精神的に自立していくことで過干渉をやめることができるのです。

干渉の反対は見守ること

「親」という漢字が示すとおり、本来親は木の上から立って見守る存在です。

つまり、子供に付きっ切りになって干渉を繰り返すのは親ではないということになります。

私も親ですから親が子供のことを心配する気持ちも、干渉したくなる気持ちもよくわかります。

それでも、自分の子供を信じて干渉したい気持ちをグッとこらえて見守るようにしていく。

子供に投影してしまう自分の不安は自分で対処して、子供には子供の自発的な人生を歩ませようとすることが親としてできることかなと思っています。

干渉の反対は放置ではありません。

自分の子供を信じてしっかり見守るようにしていきましょう。

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