脇見恐怖症で悩んでいる人は、脇見のせいで嫌われていると思っています。

脇見をすると相手があからさまに不快な反応を示すからです。

自分がいる方の視界を手で遮られる、ため息、舌打ち、咳払い、悪口…

実際に見てしまう人もいれば、無意識に見ているような感覚になる人、意識だけが向く人もいる。

明らかに自分の脇見で反応しているのに、家族や友人に話してみても「勘違いじゃない?」「被害妄想だよ」と言われて終わり。

脇見恐怖症で他人が反応するのは本当にただの勘違いなのでしょうか?

カウンセリングで対応してきた経験から実情をお伝えしていきます。

脇見が原因としか思えない認知の歪み

原因を脇見だけに結び付ける

「自分が脇見をしたから相手が反応した」というのが脇見恐怖症で悩む人の感覚です。

「自分が脇見をしたこと」が原因で「相手が反応したこと」が結果になります。

しかし、どんなことにも言えるのですが、物事の因果関係というのは一対一ではありません。

私の経験をもとにご説明します。

マクドナルドでカウンター席に座っていたときの話です。

隣にいた大学生くらいの男性が物を叩きつけるように置き、「あー」と苛立った声を上げて席を立ちました。

脇見恐怖の人だったら間違いなく、自分が脇見をしたせいで相手が怒って帰ったと思うでしょう。

私は脇見をしていないので別の原因を考えました。

勉強か何か上手くいかないことがあってイライラしていたんじゃないか。

隣の席が2つ空いていたので自分の方に詰めて座られたのが嫌だったんじゃないか。

脇見恐怖で悩んでいて隣に私が座ったことで集中できなくなってイライラしたんじゃないか。

店内が混んでいたことでイライラしていたんじゃないか。

待たされた挙句店員さんの対応が気に食わなくてイライラしたんじゃないか。

いくつか挙げましたが、どれか一つだけが原因とは言えません。

室温、天気、体調、におい、音、光、時間帯、性格、思考、感情、かかわった人、過去の出来事…

結果は様々な原因が重なって生まれています。

にもかかわらず、原因を脇見だけにしてしまうから勘違いが起こるのです。

確証バイアスで脇見の裏付けばかり抽出

脇見恐怖症は確信型の対人恐怖症なので確証バイアスが影響しています。

確証バイアスは社会心理学の用語で思い込みの強化を意味しており、自分が思い込んだ内容を裏付ける情報ばかりに目を向け、逆に否定する情報はスルー、どんどん自分の思い込みを確信へと変えていくものです。

誰かから「なんか見てきて気持ち悪い」と自分の方を向いて言われた。脇見をしたときにたまたま相手が咳払いをした。ネットで調べると斜視もあり得ると知り「だから視野が広くなってみてしまうのでは?」と考える…

脇見をしても何も起こっていないときもあるはずなのに、それはすべて見落として、脇見をしたときに相手の反応が変わったと感じたことだけをピックアップしています。

脇見で相手が反応したと勘違いというより確信しているわけです。

ただ、事実として横目で睨んで絡まれたり、見ないで欲しいと直接言われたケースもありますので、すべて確証バイアスの影響とは言い切れません。

直接見なかったとしても電波を飛ばしているから不快な思いをさせると言う人もいますが、客観的に考えて電波を飛ばすというのは人間の能力として至難の技ではないかと思っております。

脇見を気にするあまりキョドキョドして不自然な態度をとっていたり、不安や緊張で違った雰囲気を出しているために変な目で見られることが、もしかするとこの電波という表現に該当する部分なのかもしれませんね。

脇見恐怖症で悩んでいる人はこのバイアスの影響によって薬を飲んで不安が和らいでも、脇見をしてしまうこと自体は変わらないと言われるケースがほとんどです。

他の可能性が考えられないほど確信している

認知の歪みは間違いなくあるのですが、認知療法によるアプローチではほとんど効果が出ません。

知らずに使って以下のようなやり取りになることがよくありました。

相談者:「視線が気になってしまうんです。相手を見たくないのに視界に入ると見てしまうから迷惑を掛けてしまって…」

カウンセラー:「相手の方は本当に迷惑に感じているんでしょうか?」

相談者:「脇見したときに相手が迷惑そうなそぶりをするので間違いないです。」

カウンセラー:「そうなんですね。でも、それ以外の可能性って考えられないですか?例えば、相手が迷惑そうに目を逸らしたのがたまたま違うところを見たかっただけという可能性もありますよね?」

相談者:「いや、それはないんじゃないでしょうか?私が見たときにちょうど目を逸らしましたから。」

カウンセラー:「そうだったんですね。ということは、あなたの脇見のせいで相手が目を逸らしたのは間違いないということですね。」

相談者:「そうです。」

カウンセラー:「・・・(えっ、違うって言ってくれないの?)」

相談者:「どうすれば迷惑を掛けないように視線をコントロールできますか?」

カウンセラー:「・・・(う~ん困った、どうしよう)」

終了

脇見恐怖症の人は自分の視線が相手に迷惑を掛けていることに確信を持っています。

確信である以上、他の可能性なんてあるはずがない。

認知療法で応対しても水掛け論にしかならないほどの状態になっているんですよね。

脇見恐怖症を客観的に見た事実

ジーっと見続けていたり、チラチラと頻繁に見ていたりしたら嫌がられる可能性はあるでしょう。

しかし、脇見恐怖症の人は見ることができません。見ていないのです。

電車に乗っていても見ていると勘違いされたくないから顔が上げられず、すれ違う人が気になっても見ることができない。

実際に見たとしてもチラッと盗み見るくらいか、意識が向くとか視界の端に入るとかのレベルです。

それに相手がどれだけ気付いて反応できるのでしょうか?

なかなか難しいですよね。

例えば、電車やカウンター席で横並びになれば、誰もが視界の端に隣の人を入れてしまいます。

相手は視界に入れられたことに気付けるでしょうか?

たまたま隣の人がスマホでやっているゲームをチラッと見たとして相手は気付くでしょうか?

自分がされたとして気付けるかどうか考えてみてください。

意識が相手に伝わるのはありえないし、チラッと見ただけで気付かれる可能性もほとんどありません。

つまり、認知の歪みで脇見のせいだと確信しているけど、相手は脇見されたことすら認識していない可能性が高いということです。

しかし、実際に嫌われてしまうことはある

だからといって、脇見恐怖症の人が嫌われていないとは言えません。

脇見以外の問題で嫌われることがあるからです。

  • 相手に緊張が伝わって居心地を悪くさせる
  • 脇見をしないようにと意識するあまり態度が不自然
  • ソワソワしていて落ち着きがない
  • 怒りの感情が無意識に出て相手を不快にさせる
  • 自分のことばかりで思いやりがない
  • 過剰な気遣いで相手に負担をかける
  • 何でも他人任せで自分の意志を示さない
  • プライドが高く些細なことに執着する

妄想ではなく実際に悪口を言われたり、嫌がらせを受けたりする人は、自覚できないところで相手を不快にさせています。

まだ人とかかわれば誤解も解ける可能性があるのですが、自分は嫌われていると思うから避ける。

人とのかかわりを避けて壁を作っている状態なので、周りからすると話しかけづらい。

話しかけてくれないことも「脇見で嫌われているからだ」と勘違いして、人間関係を悪化させてしまうのです。

ただ、学校の全学年、職場全体、道ゆく人全員に嫌われていると思うのは非現実的なので、統合失調症の可能性も考えられます。

脇見恐怖症はただの勘違いとは言い切れない

すべての原因を脇見だと思うのは勘違いでしょう。

ただ、脇見以外で周りを不快にさせたり、迷惑をかけたりしている可能性は否定できません。

相手が反応しているのは自分が原因なのか、それとも他に原因があるのか。

脇見以外で何か不自然な態度や行動、言動をしていないか。

勘違いで片付けずに視野を広げて見ていく必要はあると思っています。

実際に嫌がらせを受けたり、聞こえるように悪口を言われたりするのは勘違いではないケースがほとんどですからね。

なかなか自分だけでは気付けないところがありますので、脇見で人間関係が上手くいかないとお困りでしたらご相談ください。