対人恐怖症は他人に迷惑を掛けることを恐れるもので、自己視線恐怖症自己臭恐怖症などが特有の症状である。

対して、社交不安障害(旧名:社会不安障害)は自分が恥をかくことを恐れるもので、嘔吐恐怖症、頻尿恐怖症などが特有の症状だと言われていました。

現在では対人恐怖症も社交不安障害もほぼ同じものとして扱われるようになりましたが、それぞれ特有の症状において両者の違いが見られます。

これまで日本で対人恐怖と呼ばれてきた病理は社交不安障害と呼ばれるようになってきている。ところが、日本で対人恐怖と呼ばれてきた病理と、西洋社会で生まれた社交不安障害という呼称が指している病理は、完全に同一のものとはいいがたい面がある。

引用元:社交不安障害の臨床社会学に向けて、2013、浜松学院大学研究論集

対人恐怖症で一般的な自己視線恐怖症や自己臭恐怖症は、西洋社会で社交不安障害として扱われている病理と重ならない。

「脇見をして他人に迷惑をかけてしまう」といった加害性を持つ症状は、社交不安障害ではなく妄想性障害に分類されます。

逆に、社交不安障害で一般的な嘔吐恐怖症や排せつに関する恐怖症状は、日本で対人恐怖として扱われてきた病理ではあまり見られません。

まず対人恐怖症と社交不安障害では対象となる症状の範囲が違うことが挙げられます。

社交不安障害は診断名となるが対人恐怖症はならない

先程お伝えしたとおり、症状としては同じように扱われるようになっているのですが、最近の精神科や心療内科に行って対人恐怖症と診断されることはまずありません。

診断名として多いのは、社交不安障害、全般性不安障害、適応障害、統合失調症、うつ病あたりかと思います。

使われなくなった理由として、日本特有と言われていたはずの対人恐怖症が、外来の社交不安障害の基準(DSM-5)で診られるようになったこと。

背景には対人恐怖症という診断名になると神経症というくくりになってしまうことも影響したのではないかと考えます。

神経症のくくりになってしまうと薬で対処できる範囲から外れ精神科や心療内科では対応できない。

しかし、社交不安障害など脳の機能的問題による病名の診断が下ればSSRIや抗不安薬などの薬で対処できる話になるというところかと思うのです。

精神科や心療内科すべてがそういう考えに基づいて治療をしているとは思っていませんが、社交不安障害(日本に入ってきた当初は社会不安障害という名称だった)が広まりだした当初の話から推測するとそういう流れだったのかなと思わざるをえません。

社交不安障害に有効とされる、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)、いわゆる SSRI を製造する製薬会社による「啓発」活動の影響である。SSRI を製造する製薬会社にしてみれば、社交不安障害の患者が増えることで、莫大な利益を手にすることができる。そして実際に、社交不安障害の急増が顕著に見られるようになるのは、もともとは抗うつ剤の一種であった SSRI が、社交不安障害の薬としても認可された 1990 年代半ば頃からのことである。つまり社交不安障害の急増は、「あなたは内気なのではない、病気なのです」(Lane 2007=2009: 157)という一節に集約されるような、製薬会社による「病気作り」によって生じたものだというのである(Lane 2007=2009)。

引用元:社交不安障害の臨床社会学に向けて、2013、浜松学院大学研究論集

表面的な脳の働きだけを改善しても克服できない

確かに社交不安障害も対人恐怖症も厳密に言うと違いはあれど、何かしら脳の働きに異常が出ているというのは間違いないと思います。

ただ、脳の働きだけを見てしまうと、そこだけでは解決しないもっと根深い問題が置き去りになって本質的な克服に向かわない危険性が高まります。

対人恐怖症などの神経症は本人の心の成長なくして本質的に改善することはありません。

これはアダルトチルドレンや依存症などにも共通しているため、神経症だけの話ではないかもしれませんが、表面的に症状が出なくなったとしても本人の心が成長していない限り違う面で苦しむか、再発を繰り返してしまうことになります。

自己物語の書き換えの成否こそが回復の鍵を握るという事実は、森田療法以外の、社交不安傾向をある程度以下に抑えるために、より直接的な手段として、SSRIを積極的に用いるような治療の場合にも等しく当てはまる。それは、そうした治療においても、投薬だけで十分とされることはあまりなく――社交不安障害の場合、投薬のみによる治療では再発率がかなり高くなることはよく指摘される――、さまざまなカウンセリングが不可欠とされたり、しばしば自助グループ的な場での他者との語らいが推奨されたりすることからも明らかである。

引用元:社交不安障害の臨床社会学に向けて、2013、浜松学院大学研究論集

自己物語の書き換えとは、成長して自分の人生に対する捉え方が変わること。

過去の親子関係やいじめに遭った事実は変えられないけど、自分が変われば捉え方を変えることはできますよね。

薬を飲んで不安や恐怖を和らげるのは状態によって必要ですが、本質的に改善していくためにはカウンセリングを受けながら自分自身としっかりと向き合い、自分の本音を知って諦めずに表現しながら心の成長を遂げていくことが必要なのです。

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