対人恐怖症というと誰に対しても怖がるイメージかもしれませんが、実は特定の人だけを怖いと思う症状もあります。

よくあるのが苦手なタイプと話すときだけ恐怖を感じるというケースです。

  • 高圧的な上司
  • しゃべり口調がキツイ女性
  • 寡黙な男性
  • 言動や仕草に敏感な人

など、人によってどんなタイプの相手に出るかは異なります。

特定の人の前でしか症状が出ないので、該当する相手がいない環境で過ごしてる間はとくに問題を感じません。

しかし、毎日かかわらざるをえない職場の上司や同僚、姑、身内が該当してしまった場合、どうしようもなく辛い日々が続くことになってしまうのです。

なぜ、特定の人だけ怖いと思ってしまうのか?

原因として考えられるのは過去の経験です。

人が苦手だなと感じる相手はたいてい以前に何かでトラブルにあったか、上手くいかなかった経験があった人と似ています。

記憶は曖昧であっても感覚には深く刻み込まれているから直感的に恐怖を感じるのです。

過去に特定の人との関係でトラウマが形成された

トラウマといえば「あの映画がトラウマになった」とか軽い感じで使われるイメージですが、今回お伝えするのは精神医学用語としてのトラウマ。

ややこしいかもしれませんが、同姓同名の別人みたいなイメージで捉えてください。

トラウマはもともと戦争や自然災害、虐待など直接死につながる経験をした人が負う心の傷を表す言葉でした。

それが以下の3要素を満たすものも含まれるようになってきています。

  • 長期反復性
  • 対処困難性
  • 自己コントロール感の剥奪

本稿では,致死性の高さのほかに,3つの属性が個人に深刻な影響を与える出来事の属性である可能性を示唆した。出来事が単回性ではなく長期間継続する,複数回同じようなことが起きるという長期反復性,これまでの対処法略では状況を改善できず,回避もできないという対処困難性,自己の行動や対処の自律性を剥奪される自己コントロール感の剥奪がこれにあたる。

引用元:トラウマと心の傷に関する研究の動向と展望 : 何が人を傷つけ苦しめるのか、2014、広島大学心理学研究

つまり、特定の相手と長期にわたって接しながらも上手く対処できず、自分ではどうしようもないと思った経験はトラウマに該当するということです。

たいていは親子関係が当てはまると思いますが、兄弟姉妹、友達、部活の先輩、職場の上司などでも起こりえます。

特定の人だけに恐怖を感じる原理

過去のトラウマは脳内の長期記憶を保管する側頭葉というところに残っていて、当時不安や恐怖を抱いた度合いが強ければ強いほどしっかり記憶されています。

「また怒られたらどうしよう…」

「また失敗したらどうしよう…」

「また見捨てられてしまうかも…」

記憶されたトラウマ体験が脳内の不安や恐怖を司る扁桃体を刺激してしまうがために、不安や恐怖が高まって一時的に対人恐怖の症状が出るのです。

緊張して顔がこわばったり、普通に話せなくなったり、頭が真っ白になったり、大量の汗をかいたり…

何とかしようにも不安や恐怖に飲まれると頭が働かなくなるので、余計にぎこちなくなっていく。

結果として苦手な相手との関係は上手くいかなくなり、またトラウマを記憶することを繰り返してどんどん悪化していきます。

特定の人に対する恐怖は広がっていく

最初はあるひとりの人だけに恐怖を感じていたのが、同じようなタイプの人に広がっていくことはよくあります。

例えば以下のようなケース。

ヒステリックな母親との関係でトラウマが形成された人が、社会に出てヒステリックな上司のもとで働くことになった。

上司とかかわるときに恐怖を感じてしまって上手くいかない。

ミスをしたり発言できなかったりで上司を怒らせてより恐怖を感じるようになっていく。

出社することができなくなって適応できないまま辞めることに。

こんな感じで同じようなタイプの人に適応できなかった経験を繰り返すと、ヒステリックな人、感情的になりやすい人は危険だと脳が学習します。

母親だけ、上司だけが怖かったはずなのに、感情的になりやすい人全員に出るようになってしまうのです。

カウンセリングでは、恐怖の原点となった人は誰なのか、当時どういう思いを抱いていたのか、相手はどういう人だったのか等、詳しくお聴きするところから。

「自分は何を恐れているのか」が明確になり、今の自分なら大丈夫と思えるようになれば特定の人への恐怖心はなくなるのです。

特定の人にしか出ない対人恐怖症の場合、克服にかかる期間も短く済むケースが多くみられます。

なるべく恐怖を感じる対象が広がってしまう前にご相談ください。

⇒特定の人が怖い対人恐怖症を克服するカウンセリング