3人での会話

1対1なら話せるのに3人以上の複数になると急に話せなくなる、何を話せばいいかわからず会話に入れないからあいづちを打つことしかできない。

対人恐怖症の一種、雑談恐怖症に分類される症状でご相談は多いです。

対人恐怖症者は二者状況は比較的自由に構成できるが、そこへ第三者が入ってきて今まで自分が話していた相手と会話を始めると、3人の中で自分だけが仲間はずれにされたようで、ひどく劣等感をおぼえ、その第三の人にどう思われるかという不安が起こるという。

引用元:二者状況と三者状況における体験から見たふれ合い恐怖的心性・対人恐怖的心性、2014、日本箱庭療法学会

学校の休み時間、友達同士の集まり、ゼミのグループワーク、ママ友ランチ会、子供の習い事、保護者の集まり、役員会、職場のお昼休憩、グループディスカッション、ミーティング、会議、打ち合わせ、大人数の飲み会…

3人以上の複数で話す場面は避けられず、学生から社会人、主婦の方まで幅広くありますからね。

みんなと一緒に会話を楽しみたいのに何を話せばいいかわからない、頭が真っ白になって話すことが出てこない

話せそうなことが浮かんでもタイミングがつかめないから黙ったまま。

みんなは楽しそうにしているのに自分だけ会話に入れず、変に思われているんじゃないかと気にしながら居心地の悪さを耐え続ける。

複数人で話す場面を何とかやり過ごすだけのしんどい状態は何とかしたいですよね。

なぜ3人以上になると話せなくなるのか、そして、どうすれば改善できるかをお伝えしていきます。

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3人以上になると話せなくなってしまう原因

場の空気を意識しすぎている

3人以上の複数になることで集団特有の「場の空気」が生まれます。

1対1なら相手に合わせるだけでよかったのが、3人以上になることで場の空気を読まないといけなくなる。

コミュニケーションが一気に複雑化するのです。

場の空気を読んで適切に対応できる自信がある人なら問題ありませんが、自信がない人はどうすればいいかわからなくなってしまう。

自らの行動が適切であると自信が持てないために、おそらく常にうまくその場に合わせねばということにばかり注意を向けてしまい、自分自身がどうありたいか、自分自身の信念に従った振る舞いが少なくなり、その場その場ごとに自分がくるくると変わってしまう

引用元:対人恐怖心性とセルフ・モニタリングとの関連、2011、関西福祉科学大学

何が適切なのかばかり考えて自分がどうしたいかを見失うから話せなくなるのです。

何とか適切な振る舞いをしようと頑張っても、上手くできず変な空気にしてしまって自信喪失。

自分が話に入って場の空気を壊すくらいなら、他の人同士で楽しく話してくれている方がいいとさえ思うようになります。

「空気が読めない自分は発達障害じゃないか」と思う人も多いですが、空気を読もうとし過ぎておかしくなっているケースがほとんどです。

全員に合わせようとするから話せなくなる

誰が聞いても無難なことを言おうとして何を話せばいいかわからなくなるのもあります。

1対1なら目の前の相手に合わせるだけでいいのですが、相手が2人、3人と増えれば増えるほど全員に合わせるのは難しくなっていく。

というか、無理ですよね。

Aさんにとっては興味ある話でもBさんはあまり興味がないとか、Aさんは気にしないけどCさんはすごく気にするとか、人によって感じ方や考え方が違うので全員に合わせることはできません。

にもかかわらず、無理やり合わせようとするから無難なことしか言えなくなり、最終的には何も言わず笑顔でうなずくだけになってしまいます。

参加しても話せずに終わることで「やっぱり自分はダメだな」と一人反省会をして落ち込み、自信をなくすことの繰り返し。

失敗経験ばかり積むから頑張って参加すればするほど話せなくなるのです。

自分の話したいことを話すのは自分発信だから自立的な状態だと言えます。

対して、相手に合わせて会話をするのは相手次第で話せるか話せないかが決まる依存的な状態。

コミュニケーションにおいて相手に依存してしまっているからこそ、3人以上で会話する状態になったときに話に入るタイミングを異常に意識したり、自分が会話に入ることで会話が盛り下がったらどうしよう等と余計なことを考えて話せなくなるのです。

注目されることに対する恥ずかしさも影響

3人以上の複数人で話すと自分が注目されることになります。

5人で話していれば自分以外の4人から注目される、10人で話していれば自分以外の9人から注目される。

他人の目を気にしている人にとって注目されるのは苦痛でしかありません。

ものすごく恥ずかしい気持ちになりますからね。

小学生の頃から先生に当てられて発表するのが苦手で、当てられたらどうしようとドキドキしていた人も多いです。

「変に思われたくない」「嫌われたくない」「良く見られたい」といったことを思っている人ほどプレッシャーがかかる。

理想とかけ離れた自分の姿が受け入れられないから恥ずかしい。

さらに恥ずかしい気持ちまで隠そうとするから話すどころじゃなくなってしまうわけです。

初めての三者関係が出来上がる父親との関係が影響している可能性もある

トラウマになるような失敗経験を持っているというケースはほとんどありません。

たいてい複数人の会話で大きな失敗経験がないのに苦手だと感じているのです。

一般的な感覚で考えれば、3人以上で話したときに自分だけ話に入れてもらえなかったとか、無視され続けたとか、「お前の話は面白くないから会話に入るな」と言われたとか、何か大きなショックを受けたから苦手になりましたならわかりやすいと思います。

しかし、そういった経験があるわけでもないのに、昔から苦手だったと言われるケースばかりであることから、原因が幼少期の出来事にあると考えられるのです。

幼少期の出来事とは何でしょうか?

ほとんどの場合が親とのかかわりの中での出来事になります。

とくに3人以上での会話が苦手というケースでは、初めて三者関係が形成される父親を交えたコミュニケーションに問題があったと考えられます。

なぜなら、人間は生まれてすぐ母親と1対1の関係を築くことになり、次にかかわる2人目がたいていの場合は父親になるからです。

集団との不適合感と父親との関係性は研究結果からも導き出されています。

注目すべきことは,日本人にあってはこうした集団への不適合感と「父親」との対話の有無が著しく関係していることである。(中略)日本人の場合,集団への適合という social skill は「父親」を媒介にして促進されるのではないかと考えられた。

引用元:対人恐怖症者に認められる対人不安意識に関する研究(3) : 幼少期の家庭環境と自己像に関する比較文化的検討、1980、横浜国立大学教育紀要

3人以上は多人数とのかかわりであることから、家族というコミュニティが社会の入り口とも言われます。

  • 意見を聞いてもらえず父親が一方的に考えを押し付けてくるだけだった
  • 家族で食事をしてもテレビのことを少し話すだけで会話らしい会話がなかった
  • 母親の独壇場で家族全員が聞き役に徹する状態だった

家族という最小単位のコミュニティで会話をする感覚がつかめなかったのは3人以上の会話に大きく影響します。

つまり、3人以上での会話が苦手な原因として父親を交えた家族とのコミュニケーションでつまづいた可能性が考えられるのです。

3人以上でも1対1と同じように話せる状態になるために

会話における自分のスタンスを知る

三人以上になると話せない人は自分のスタンスを見失っています。

会話のスタンスは人それぞれ、テンポがゆっくりの人もいれば速い人もいる。

話すのが好きか相手の話を聞くのが好きかも人によって違いますよね。

あとはリアクションが大きいか小さいかとか、身振り手振り使って話すかどうかとか…

話し出してすぐからエンジンがかかって話したいこと、聞いてほしいことがバンバン出てくる人もいれば一定時間経ってからポツポツ出てくる人もいたり。

複数人の会話で困っていない人は自分のスタンスで話せています。

自分は気の利いた返しができるタイプじゃないと認識していれば上手く返せなくても当然だから気にしないでしょう。

輪に入って話を聞ければ満足という人は聞き役で全然話さないけど、自分が話せていないことを気にしません。

「自然体で話しているときの自分ってどんな感じだろう?」

一度考えてみてください。

自分が話すことばかりに意識を向けない

三人以上になると話せないと思っていると、何とかして話せるようにならないとと思います。

だから、インターネットで調べたりしてこのコラムのような記事を読み続ける。

頭の中は「どうすれば話せるようになるか」でいっぱい。

でも、飲み会とか人が集まる場でもほとんど自分から話さずあいづちを打っているだけの人も結構います。

あいづちだけの人たちが全員気まずい思いをしているかといえばそんなこともなく、楽しく輪に入って周りからも仲間と認識されていたりするんですよね。

振り返ってもらうと思い当たるような人がいると思います。

そもそも三人以上の会話において、自分から話すことってそこまで重要ではありません。

会話参加者間の情報量が均等でなくてもラポールが生まれる。聞き手の役割を担い、あいづちを打つ人が存在することが重要なのである。まさに共話的な会話展開である。

引用元:初対面の3人会話におけるあいづち -ラポール構築の観点から-、2011、岐阜聖徳学園大学紀要

※「ラポール」は信頼関係を意味する言葉です。

どちらかといえばあいづちを打つことの方が大事だったりします。

私も三人以上の集まりではたいてい聞き役であいづちを打っていることが多いですが、気まずい感じになったりすることはありませんからね。

話そう話そうとするとプレッシャーで余計に喋れなくなってしまうので、あいづちを打つだけでも意味があるんだと考えてもらえれば少し楽になるかと思います。

自分のキャラクターを見極めて立ち位置を確立させる

複数人の会話では自然と役割分担が起こります。

全員が全員、自分が自分がと一方的に話していては会話が成り立ちませんからね。

Aさん…話のネタを出す人

Bさん…質問をして広げる人

Cさん…話を聞く人

Dさん…全体を見渡して話を振る人

Eさん…毒舌を期待されている人

Fさん…いじられて自虐ネタを言う人

Gさん…わからないことがあればすぐ調べる人

Hさん…やたらリアクションが大きい人

Iさん…ときどき面白いことを言って笑わせる人

他にもいろんな役割がありますが、複数人の会話に上手く入れている人はちゃんと立ち位置を確立させています。

キャラが立っているというのか、個性がちゃんと出せているから周りにも立ち位置を認識してもらいやすいんですよね。

まず自分のキャラクターはどんな感じなのか?

そして、そのキャラクターを活かせる立ち位置はどこなのか?

把握できていると自分の立ち位置を確立させやすくなりますよ。

1対1でも主体的に話せるようにしていく

普段から1対1の会話でも受け身にならず主体的に話す機会を増やせば複数人の場でも話しやすくなっていきます。

相手の話題に乗っかって話す、質問してもらって答えるという完全受身の会話スタイルを変えていくということです。

とはいえ、いきなり自分から話題を振って話すのは難しいですよね。ハードルが高すぎます。

まずは主体的に話すための準備をしていきましょう。

自分が話したい、聞きたいと思う気持ちが強まれば主体的な会話がしやすくなるので、「自分が何を思って何を感じているのか」に意識を向けることからやってみてください。

普段の生活であった出来事や誰かとの会話など、振り返って意識を向けてみるといろいろ出てくると思います。

  • 最近観た動画がすごく面白かった
  • 初めて入ったお店の接客が悪くて嫌な思いをした
  • 話題に上がった海外旅行に興味が湧いていた
  • 自分の考えではありえないことを言ってきたからめちゃくちゃ驚いた
  • 愚痴を聞いて友達に嫌な思いをさせる相手にイライラした

思ったこと感じたことに意識が向きやすくなればなるほど、自然とリアクションや発言が生まれます。

三人以上の会話でも「えっ」「あっ」と反応する言葉が出てきて発話権が取れる。

「えっ」という語は会話参加者間のやり取りを円滑にしつつも、自分が発話権を取って相手に質問を行うことを予告する機能を果たす談話標識であると言えよう。

引用元:初対面二者の会話における質問―応答形式についての一考察、2004、信大国語教育

話すタイミングを意識せず自然なコミュニケーションが取れるようにもなっていくのです。

話し方を練習しても何の解決にもならない

すでに経験済みの方もおられると思いますが、本で話し方を勉強したり、話し方教室に通ったりしても何の解決にもなりません。

なぜなら、話し方やコミュニケーション能力が問題ではないからです。

私自身、職場で雑談がまったくできず悩んだ時期がありましたので、コミュニケーション能力を高めようと本で勉強したり、セミナーに参加したりもしましたが結局しゃべれないままで終わりました。

たとえ聞き取りづらくたどたどしい話し方でも会話は成立しますし、話下手でも複数人で楽しく話せる人なんていくらでも存在します。

複数人での会話が上手くいかないのは、単なる経験不足や話し方が悪いといった表面的なことではなく、それ以前の部分が問題になっているのです。

まず土台となる部分があって初めて経験やスキルが活きてくるわけで、逆にその土台がない状態では何をやっても改善することはありません。

もっと本質的な部分に目を向けてください。

カウンセリングでは3人以上で話せない状態を改善するため、具体的に何をすればいいかまでお伝えしています。

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