白か黒か

白黒思考は白か黒か、0か100かでしか判断できない思考です。

何もしない「0」か完璧にやりきる「100」であるため、過程の1〜99がありません。

良いか悪いか、正しいか間違っているか、成功か失敗か、勝ったか負けたか、損か得か等、二者択一で物事を見る。

しかし、世の中はほとんどがグレーゾーンなので、白黒つけようとすると問題が出てくるのです。

白黒思考が引き起こす問題

コミュニケーションにおける問題

コミュニケーションには正解不正解がなく、また曖昧なものも多いため問題が起こりやすいところがあります。

例えば、相手が「仕事がしんどいから辞めたい」と言ったとして、いきなり辞めるかというとそうはなりませんよね。

辞めたい気持ちはあるけど、まだ辞めるという決断はできない状態であったり、ただ辞めたいほどつらい気持ちに共感して欲しいだけだったりします。

これを白黒思考で対応した場合、仕事を辞めるか辞めないかの二択になってしまい、「辞めたいなら辞めればいいじゃん」となるわけです。

しかし、相手は仕事を辞めないので「辞めたいのになぜ辞めないんだ」とイライラする。

相手にしてみれば辞める気はないのに辞めろと言われ、勝手にイライラされるわけで「全然自分の気持ちをわかってくれない」「理解しようとしてくれない」と不満を抱く。

白黒思考はコミュニケーションにおいて問題が生じやすいのです。

ストレスを抱えやすくなる問題

白黒思考はコミュニケーションの問題だけでなく、自分に対することでもストレスを抱えやすくなる問題があります。

例えば、白黒思考で正しいと判断したとき、以下のようなパターンに陥るからです。

  1. 正しいからやるべき→無理やりでもやろうとする→否応なく我慢する
  2. 正しいからやるべき→でも自分にはできない→できない自分はダメだと思う
  3. 正しいからやるべき→どうすればいいかわからない→反発か現実逃避をしてしまう

どのパターンになったとしてもストレスを抱えるのは変わりません。

人間である以上すべて考えた通りに動けるわけではないため、白黒思考がストレスになるのです。

このような問題を引き起こす白黒思考になぜなってしまうのか、どうすれば改善できるかについてお伝えしていきます。

白黒思考になる原因

生まれ持った性質

発達障害HSPの人はエネルギーの消耗が激しいところがあるので、省エネのため白黒思考になりやすい傾向が見られます。

  • 極端な思考にすることで一ヶ所に焦点を絞る
  • 白黒ハッキリさせて曖昧な物事への判断をなくす
  • 不快感を排除してストレスを回避する

一つの情報から感じること、考えることが多ければ多いほど疲れやすいですからね。

考えだすと止まらない、気になりだすと止まらないといった傾向があるため、最初からコントロールしなくていい状態にしているとも言えます。

日常生活での負荷を少しでも減らすための手段として白黒思考があるのです。

親子関係の影響

小さい頃は視野が狭いので誰もが白黒思考なのですが、成長と共に社会との接点が増えて変わっていきます。

しかし、規範意識が強い親のもとで育つと「正しいか間違っているか」、親の顔色をうかがわないといけない家庭であれば「親が怒るか怒らないか」に意識を向け続けることになる。

結果として白黒思考が常態化、成長しても白黒思考が残り続けることになってしまうのです。

また、親子関係で安心感が培われていないと、曖昧なことに対して葛藤を抱えることができなくなるため、白か黒かハッキリさせないといけない状態になるのもあります。

自分を守ろうとする意識が白黒思考につながっているところがあるのです。

閉ざされた自我

親からの虐待や学校でのいじめに耐えてきた人は、天動説のように自分が中心で物事が降りかかってくる感覚になりやすい。

とくに他者からの攻撃を受けなかったとしても、人と上手くかかわれず孤立していたり、誰かと一緒にいても受け入れられている感覚がなかったりすると同じようになります。

自分にとって都合の良いものは手に入れ、都合の悪いものは排除しようとする。その結果、「自分」と「自分以外」という二元化が生まれるのです。

自分は得られていない、足りないという前提になるため、愛や評価、成功を求め、結果として失敗、成功が出てきます。

しかし、自分と他人が切り離された世界である以上、どれだけ頑張っても得られず、悩み、苦しみが生まれてしまう。

自我が閉じて人とのつながりが感じられない状態になっていることが白黒思考を生み出しているのです。

白黒思考を改善するために

白黒思考に気付く

まずは自分が持っている白黒思考に気付くことから始めましょう。

「正しい、間違っている」「良い、悪い」とジャッジしているところに白黒思考があります。

  • 目上の人には敬語を使うのが正しい
  • アイドルが恋愛をするのは間違っている
  • 学生時代は友達と青春を謳歌するのが正しい
  • 困っている人に声を掛けるのは良いことだ
  • 災害が起こったときに楽しむのは悪いことだ

日々のニュースや他人の話を聞いたときに自分がどういう基準でジャッジしているかに目を向けてみてください。

ただ、白黒思考を自覚するのは難しいところがあるため、カウンセリングでは別の視点での可能性をお伝えして気付きやすい状態にしていきます。

100%はないと知る

例えば、勝ち負けであったとしても、勝ちに等しい負けもあれば、負けに等しい勝ちもあります。

勝ち負けの中にもグラデーションがあるのです。

正しいか間違っているかも同じで100%正しい、100%間違っているということはありません。

昔は正しいとされていたことが今は「間違いだった」と言われていることなんていくらでもありますよね。

教科書に載っていた歴史上の出来事ですら訂正されるくらいです。

また、どの角度から見るかによっても正しいか間違っているかは変わります。

曖昧なものばかりである以上、100%と言い切れることはないのです。

逆の意見を掘り下げてみる

自分が絶対に違うと思っている意見が正しい可能性はないかを考えてみる。逆に、自分が絶対に正しいと思っている意見が間違っている可能性はないかを考えてみる。

そして、自分と逆の意見に対して「なぜそう言えるのか」と理由を考えていくことが白黒思考の改善につながります。

Yahoo!ニュースのコメント欄で自分と正反対の意見を探してみましょう。

今までは見ていない、もしくは流し読みをする感じだったと思いますが、意識してコメントを読んでみてください。

長文のコメントであれば理由が書かれていると思います。

また、実際に人と話していて自分とは逆の意見だなと思うことがあれば、「なぜそう思うのか」と自分なりに考えてみたり、本人もしくは別の人に聞いてみたりするのも効果的です。

自分の思いや考えをオープンにする

自分が正しいと思っていることを否定されそうだったら言わない。相手が間違っていると思っても関係がギクシャクすることを恐れて言わない。

白黒思考は自分の考えに固執している状態でもあります。

自分が何に対してどう思うか、どう考えるかをなるべく普段から人に話すようにしていきましょう。

誰にも話さないままでは変わりませんが、人に話して別の考えに触れる機会があれば変わりやすくなります。

私はこう思う、相手はこう思う。それが違っていたとしても、正しい、間違っているはない。

猫を見て可愛いと思う人、気まぐれなところが嫌いだと思う人、どっちが正しいというものではありませんよね。

お互いの思いや考えを共存させる感覚があれば、衝突することも、どちらか一つに絞ろうとすることもなくなるのです。

過程に目を向ける

白黒思考の人は過程をほとんど見ることなく結果だけを見ています。

結果から良い悪い、正しい間違っていると判断していますが、過程に目を向けると簡単に白黒つけることはできません。

例えば、殺人事件を起こした犯人に対して「人を殺した」という結果だけを見れば悪い、間違っていると言えるでしょう。

しかし、日常的にひどいイジメを受けていて、正当防衛のような形で殺したとすれば、ただ悪い、間違っているとは言い切れなくなると思います。

人を殺すのは良くないというのは当然として、ただ、事情があれば仕方なかったと思う部分も出てくるわけです。

結果だけでなく過程にも目を向けるようにしてみてください。

つながりを感じ共存する

自分がつながりの中で生きているという感覚が出てくると、自分と他人という二極化がなくなり、白黒思考は改善に向かいます。

今着ている服や使っているカバンは誰かがデザインを考え、誰かが作ってくれて、誰かがお店や家まで届けてくれたもの。

お米やパン、野菜等も誰かが作ってくれたから食べることができているのです。

また、今の自分があるのは多くの人の支えがあってのことだと言えます。

親や身近な人が自分を養ってくれて、学校生活、社会に出てからも周りに助けられながら生きてきたところがあるのではないでしょうか。

過去から現在において人とのつながりを感じることに目を向けてみてください。

ほんの少しでも誰かに優しくしてもらえた経験、受け入れてもらえたと思う経験、今も離れずにいてくれる人の存在等、つながりを感じられる具体的なことを探してみましょう。

そして、人とのかかわりで相手に委ねること、頼ることを増やしていけば、自分一人だけで生きている感覚は薄まり、自我が開けた状態になるのです。

白黒思考は生まれ持った性質や家庭環境、過去の経験等が重なっているケースが多く、簡単に変わるものではありませんが、カウンセリングを受けながら取り組みを継続することで変わっていきます。