
思考が止まらなくなってしまう反芻思考の原因をもとに改善方法をお伝えしています。
反芻思考で眠れない悩みを抱えている人が多いため、眠れないときの対処法も具体的に記載しました。
反芻思考とは?
反芻思考とは、過去のネガティブな出来事を思い出すことを繰り返し、後悔したり落ち込んだりする思考です。
ぐるぐると同じようなことを考え続けるので「ぐるぐる思考」とも呼ばれ、強迫性障害やうつ病との関連性があると言われています。
考えるのをやめたいと思っているのにやめることができない。
やりたいこと、やるべきことに集中できず、何もできないまま考え続けて疲れ果てる。
一人でどんどん悪い方向に考えて、鬱々とした気分を強化させていく。
反芻思考のせいで上手くいかない、やりたいことができないと思うことが増えるため、なくそうとして余計に思考が強化されているケースがほとんどです。
反芻思考を引き起こす原因
嫌なことから目を背けたい心理
例えば、勉強しなきゃいけないのに余計な思考が浮かんできて集中できない場合。
本音では勉強をしたくないと思っているから考え事をしてしまうのはあります。
本当はやりたくないことを義務感でやろうとすると嫌な気持ちになる。
嫌だ嫌だと思いながらやるのはしんどいので、別のことを考えてできない状態にしてしまうわけです。
反芻思考が止まらないのは、現実や未来から目を背けたい心理が働いていると考えられます。
感情のバランスが悪い
思考が止まらない状態になっている人は、ポジティブな感情が持続しない傾向が見られます。
好きなものを食べておいしいと感じても一瞬、嬉しいことがあっても次の瞬間には何か考え事をしていたり。
「あー、おいしいな~」「嬉しいな~」「よかったな~」と、じっくり感じて余韻に浸る時間がほとんどないんですよね。
逆にネガティブな感情はやたらと引きずって考え続けます。
嫌だったことを何度も思い出したり、不安な想像を膨らませたり…
ものすごくバランスが悪い状態になっているから反芻思考が止められないのです。
思い込みが激しくなってしまう原理、影響力の強さ、改善方法についてお伝えしています。
情報過多の社会
1990年代にインターネットが普及するまでは、テレビやラジオ、新聞、本などが主な情報源でした。
知りたい情報があっても調べられないことが多かったのが、今はスマートフォン一つでいくらでも情報を得ることができます。
さらにSNSの普及によってリアルタイムで情報が入ってくるようになりました。
私たちは気付かないうちに膨大な情報をインプットしているのです。
知らなければそもそも考えなかったことを知ったがゆえに考えてしまう。
流れ込んでくる情報が多すぎて処理が追い付かない状態になっています。
未解決のまま放置した記憶
何度も同じことを考えてしまうのは、心の中で未解決のまま放置されているからです。
- 思い通りにさせてもらえなかったこと
- やりたいと思っていたのにやらなかったこと
- 言い返したかったのに言い返せず飲み込んだこと
何度も思い出すことで消化しようとしているんですよね。
牛が一度飲み込んだ食べ物を口の中に戻してかみ砕く「反芻(はんすう)」と同じ。
人間の思考が反芻すること自体は問題ないのですが、考えないように放置しているといつまで経っても消えてくれません。
完璧主義の人が考えすぎになりやすいのは、納得できないことが多いからです。
考えばかりが先行して当時の気持ちが置き去りになっていると、よくわからないけど涙が出てきたりすることもあります。
寝る前に反芻思考が起こりやすいのはなぜ?
無意識にあった思考が表面化する
眠りにつく寸前は変性意識の状態になります。
変性意識は簡単に言うと催眠術にかかった状態なので、無意識にある思考がスッと出てきてしまうんですよね。
普段からあまり考えない人は、無意識下で思考が働いていないから出てこない。
しかし、よく考え事をする人は、考えていないときも無意識下に思考が渦巻いている。
それが寝る前に出てきたら眠れなくなるのも当然ですよね。
物事を深く考えるのが幼少期からであれば、HSPや発達障害等の生まれ持った性質が影響している可能性も考えられます。
睡眠への意識が強くなりすぎている
寝ないといけないと思えば思うほど眠れなくなるもの。
睡眠というのは人間の三大欲求の一つであり、本能的に求めていることです。
普通に眠れている人たちは「寝なきゃいけない」と義務感で眠っているわけではありません。
「明日7時に起きなきゃいけないから早めに寝よう」とか「夜更かしは身体に良くないから寝よう」とかのレベル。
しかし、考え事で眠れない状態が続くと「また眠れなかったらどうしよう」という予期不安、しんどさも相まって睡眠への意識が過剰になる。
「眠る」ではなく自分を「眠らせる」になって、リラックスできないからあれこれ考えてしまう状態になるのです。
反芻思考で眠れないときの対処法
その時の状態によって眠りやすくなる方法は変わります。一つの方法にこだわらず、自分の状態を見ながら試してみてください。
人は意識することが増えれば増えるほど緊張してしまうため、ちゃんとやろうとせず「ある程度できたらOK」くらいの感覚で取り組むようにしていただくと効果が出やすいです。
リラックス状態を作り出す
思考が止まらず眠れないときは、ストレスがかかり緊張状態になっています。だから、眠れるようになるためにはリラックスすることが必要なのです。
リラックスする方法には呼吸法や瞑想もありますが、なかなか難しいのでやりやすい方法をお伝えしますね。
- まずおでこに利き手(手のひら)を当てて目を閉じます
- 目を閉じた状態のまま、おでこを見ようとしてください
- 時間の経過と共に身体の力が抜けてリラックス状態になります
- そして、おでこに当てていた手をおろしてください
おでこがスーッとして、風が吹いているかのような涼しさを感じるでしょう。
音が聞こえやすくなり、身体が布団に沈む感覚になれば成功です。(ただ、成功を求めると意識してしまうので結果的にそうなればいいなくらいで思っておいてください)
また、音楽を聴くこともリラックス状態になりやすいため効果があります。
川のせせらぎ、鳥のさえずり、雨、滝といった自然の音、ピアノやオルゴールの音楽、デルタ波やソルフェジオ周波数のヒーリングミュージック等、YouTubeを利用すればその時の気分に応じて選択できますので一度お試しください。
自律神経が整う状態にしていく
血流が悪くなって体温低下、身体に余計な力が入ることも眠れない原因です。
自律神経の問題なので自分の意思ではコントロールできませんが、以下のように自然な身体の感覚に委ねていくと調整されていきます。
まず布団の上で仰向けになり「気持ちが落ち着いている」と心の中で唱える。
そして、右腕に意識を向けて「右腕が重たい」と心の中で繰り返しながら右腕の重みを感じていく。
同じように「左腕が重たい」「右脚が重たい」「左脚が重たい」と順番に進めてください。
実際の重さを感じるだけなので「重たくなる」ではなく「重たい」と唱えるのがポイントです。
次は「重たい」を「温かい」に変えて、右腕から同じようにやっていきます。
ご紹介したのは自律訓練法の第一、第二公式です。感じることができればできるほど緊張がほぐれ、手足の温度が自然と上がって眠りにつくことができます。
考えていることを書き出す
眠るためには眠ってもいい状態になることが必要です。
安心感や適度な疲労感、体内時計など、一日の過ごし方が影響するところでもあります。
しかし、寝る間際になって一日をやり直すことはできません。今できるのは帳尻合わせです。
頭に浮かんでいることをとにかく書き出していきましょう。
書いていくうちに「考えなくても大丈夫か」「何とかなるかも」と安心できることが出てきたり、言語化しながら手を動かすことで疲労感も蓄積されてきたり。
試験が迫っている等、何か不安なことがある場合は、勉強をしてみたり不安の緩和につながることが有効です。
少しでも眠ってもいい状態に近づけることができれば眠りやすくなります。
眠れないことについて考える
どうせ考えすぎてしまうのだから、逆に考えてみるという方法です。
眠れないことを深刻に捉え、何とかしようとすることで眠れない状態になっているため、眠れないことを楽観視できれば眠りやすくなります。
下記のような感じで「今日眠れないことが大したことではない理由」を考えてみてください。
『今日一日、今眠れないことってどれだけ重要なこと?1ヶ月31日、1年365日、3年とかでみれば大したことなくない?たとえ眠れない日が数年続いたとしても、その後数年以上眠れる日が続けば大丈夫ではないか。
今まで眠れない日が続いてるけど何とかなっている。たしかにしんどいのはしんどいけど、眠れないこと以外では順調なこともある。
明日どうしてもしんどかったら休むことだってできる。無理でも仕事中にうたた寝でもすればいいじゃないか。
今眠れないからといって、これが一生続くとは限らない。絶対眠れるようになると言えないとしても、絶対眠れないままとも言い切れない。』
自分なりに腑に落ちる内容が出てきたら力が抜け、自然と眠りにつく状態になっていきます。
反芻思考をやめる方法
思考を止めようとしない
反芻思考をやめるためにまずやっていただきたいのは思考を止めようとしないことです。
ぐるぐると考え続けるのはしんどいので、何とか止めようとする気持ちはわかります。
しかし、思考は「止める」のではなく「止まる」ものです。
明日自分の人生を左右する出来事がある状況で、明日のことを考えないようにするのは無理ですよね。
今考えが止まらないのは、考えることが必要な状態になっているからだと言えます。
思考は本来止まるものだという前提のもと「しんどいけど今はどうしても考えてしまうよな」と受け止めることを心がけてください。
自分の感覚を大切にする
思考に支配されている人は自分の感覚にほとんど意識が向いていません。
日々やるべきことに追われ、自分の感覚を蔑ろにしているのです。
- お腹が空いているのに仕事を優先して食べない
- 身体が疲れているのに休まず家事を頑張る
- 眠いのに無理やり起きて勉強を頑張る
自分の身体や心が発している声に耳を傾けてみましょう。
そして、ほんの少しでもいいので、身体や心の声に従うようにしてみてください。
心地よさを感じるとともに思考が止まりやすくなっていきます。
ポジティブな感情を増やす
一日過ごしてポジティブな感情を一切感じないケースはほとんどありません。
すごく嬉しかったとか楽しかったはないとして、美味しかった、よかった、ちょっと嬉しかったなら一つくらいはあるはず。
振り返って探す習慣をつけていきましょう。
どうしても見つからなければ過去の体験でもかまいません。
誰かに話す、話せる人がいないなら書き出してみてください。
ポジティブな感情を感じやすくなれば、ネガティブな感情とのバランスが取れて思考が止まりやすくなります。
行動を増やす
やることを増やして考える時間を減らしましょう。
ただ、自分がやりたくないことでは思考が働きやすいので、集中しやすい好きなことや興味関心のあることがいいですね。
絵を描くとか、歌を歌うとか、散歩をするとか、掃除をするとか、料理を作るとか…
同じことの繰り返しになると考えながらできてしまうため、なるべく変化をつけてやっていくようにしてください。
難易度が上がって達成感が得られ、自分がより良くなれることが理想的です。
義務感ではなく「やりたいからやる」という感覚を大切にしていただければと思います。
情報処理の時間を作る
一日のどこかで頭の中を整理する時間を作ります。
学校や職場から帰宅してから30分とか、お昼の一息つける時間に15分とか。頭の中にあることを全部書き出して言語化します。
「書くの面倒くさい」とか、書いている途中で思ったことも書いてください。
書くことで頭の中が整理されるだけでなく、自分の考えと距離を置くことができるので思考の渦から抜け出しやすくなります。
紙に書いていただくのが一番効果的ですが、難しい場合はスマホのメモや日記アプリ、パソコン入力でもかまいません。
時間帯も含めて継続しやすい方法を考えましょう。
目を背けてきた問題と向き合う
カウンセリングを受けながら、何が思考に置き換えられているのかを知っていきます。
親子関係なのか、学生時代の人間関係なのか、恋愛関係なのか、夫婦関係なのか、自分の未来なのか…
どこかに無意識レベルで考えないようにしてきたことがあるのです。
まず現時点で気になっていることから、話せる範囲で少しずつ話していただく。
過去、現在、未来という時間軸、人とのかかわり、感情の動き、欲求等、複数の視点で対話を重ねると見えてくるものがあります。
反芻思考の正体を知り、上手く付き合っていくことができるようになれば思考が止まるのです。
思考が止まらず日々の生活でしんどい思いをしておられるのであればご相談ください。